果物を使用した瓶内二次発酵のビール造りに必要なのは、作業効率と温度管理に重点を置いた設備

  • 2025.07.02
  • 2025.07.03

導入事例~98BEERs(キュウハチビアーズ)様~

「食事とのペアリングを楽しんでいただけるような、穏やかな味わいのビールを造りたい」
 その理想をかたちにするべく、日常にそっと寄り添うビールの醸造に取り組んでいらっしゃるクラフトビール醸造所が、98BEERs(キュウハチビアーズ)様です。

同醸造所では、クラシカルなベルジャンスタイルや地元産の果物を使用したビールを、“瓶内二次発酵”というこだわりの製法で仕上げておられます。
 主張しすぎず、それでいて確かな個性を持つビールは、多くのクラフトビールファンの心を捉え、熱い支持を集めています。

今回は、そんな98BEERs様で醸造長を務める宮嵜 尚文様にお話を伺いました。

インタビュアー:醸造所の開業にあたって、どのような設備を求めていたのでしょうか?

宮嵜様:私たちの醸造所は、“フルーツ王国”とも称される山梨県甲州市にあり、この地で収穫される果物を使ったビールを効率的に醸造できる設備を探していました。

山梨県ではブドウや桃、柿など、多様な果物が豊富に生産されており、それらを原料に取り入れたビールを造りたいという思いが以前からありました。
「果物の風味と麦の味わいが調和し、食事に寄り添うような穏やかなビールを造りたい」という想いを強く抱いていたのです。

果物を使ったビールの場合、使用する果物の種類や状態、そしてスタイルによって投入方法や加工形態も変わってきます。そのため、こうした多様な仕込み方法に柔軟に対応できる設備を必要としていました。

また、「食事に合うビール」という観点から、瓶内二次発酵を取り入れたビール造りは欠かせない要素でした。

瓶内二次発酵とは、ビールを瓶に詰める際に酵母と少量の糖分を加え、瓶内で自然に発生する炭酸ガスを溶け込ませる製法です。
この方法で仕上げたビールは泡立ちが非常にきめ細かく、口当たりも柔らかくなるため、食中酒としても非常に相性が良いと感じています。

ただし、この製法を安定して実現するのは容易ではありません。

瓶詰め時の糖分添加だけでなく、仕込み工程における麦汁の温度管理も非常に重要な要素となります。
ですので、「各工程で細やかな温度管理が可能な設備があれば、まさに理想的だ」と考えていました。

インタビュアー:設備業者を選定される際、重視されたポイントは何ですか

宮嵜様:まず第一に、しっかりとコミュニケーションを取れる業者であるかどうかを重視しました。
醸造所開業に関しては初めてということもあり、わからない点や不安なことに対して、丁寧かつ具体的なアドバイスをいただけるパートナーを求めていました。
できれば、こちらの相談に対してプラスアルファのご提案までいただけるような業者に出会えたら理想的だなと感じていました。

もう一点重要視していたのが、現地に足を運ばなくても図面をもとに設備の選定を進められるかという点でした。

というのも、私たちは古い建物をリノベーションして醸造所を開業する計画だったため、改装期間中から設備の選定を進める必要があったんです。
しかし、開業予定地は標高750mの山の上という立地でしたので、業者の方に何度も現地に来ていただくのは現実的ではないと感じていました。

そのため、図面を共有することで設備構成のアドバイスや提案をしていただける、柔軟な対応力をお持ちの業者であることも、選定の大きなポイントとなりました。

インタビュアー:スペントグレインを選ばれた理由を教えてください。

宮嵜様:最も大きな理由は、単にコミュニケーションが取りやすいという点にとどまらず、多角的な視点から的確なアドバイスをいただけた点にあります。

スペントグレイン様は、現役のブルワーの方が運営されていることもあり、いただくご意見一つひとつが非常に実践的で信頼感がありました。

たとえば、こちらからの一つの質問に対して、常に3案以上の選択肢を提示してくださるんです。
ときには10項目近いご提案をいただくこともあり、その対応力の高さに驚かされました。
しかも、そうした対応は契約前から変わらず、ブルワーを本気で応援したいという想いが、ひしひしと伝わってきました。

ここまで親身になって寄り添ってくださる設備業者の方は他にいらっしゃらなかったので、「この方たちにお願いしよう」と自然と気持ちが固まりました。

また、「古い建物をリノベーションする計画なので、図面をもとに最適な設備レイアウトをご提案いただきたい」とお願いした際にも、すぐにご快諾いただきました。

これもそのはず、スペントグレイン様はこれまで数多くの醸造所の開業を支援されてきた実績があり、私たちのようなケースにも柔軟に対応できるノウハウをお持ちなのだと感じました。

私たちが思い描いていた醸造設備の条件をすべて満たしてくださっていたため、「この方たちとなら、理想のビール造りを実現できる」と確信し、ご依頼することを決めました。

インタビュアー:スペントグレインに依頼して良かったことは何ですか?

宮嵜様:まず何より嬉しかったのは、私たちが理想としていた“地元産の果物を使用したビール”の醸造を、効率的かつ合理的に進められる設備を導入できたことです。

具体的には、タンクの上部に蓋がついた“オープントップ”タイプのビールタンクを採用し、その蓋の裏側に、特注でフックを取り付けていただきました。
このフックにネット入りの果物を吊るすことで、しっかりと漬け込むことができ、工程が終わったあとは簡単に取り外すことができます。
それゆえ、工夫次第で果物由来の繊維やカスが配管やフィルターに詰まる心配もなく、非常に合理的です。

一見すると小さな工夫に思われるかもしれませんが、こうした細やかな配慮が、日々のビール醸造における作業効率や生産性の向上に大きく貢献してくれます。
おかげさまで、山梨県産の干し柿や桃などを使ったさまざまなスタイルのビールを、無理なく効率的に仕込めており、スペントグレインさんにお願いして本当に良かったと感じています。

さらにもう一点、「瓶内二次発酵のビール造り」を実現するため、必要なカスタマイズを設備に施していただけたことも、大変ありがたかったです。

瓶内二次発酵では、一次発酵を終えたビールを瓶に詰めてから再度発酵させるため、仕込み段階から糖化の工程を非常に丁寧に進める必要があります。
そのためには、酵素の働きを的確に制御できるよう、温度管理がとても重要なポイントとなります。

この点を踏まえ、マッシュタンに“昇温機能”を備えていただきました。
この機能により、麦芽を糖化する過程でも温度調整が可能となり、思い描いていた通りの、やわらかで穏やかな味わいのビールに仕上げることができています。

瓶内二次発酵ならではの熟成の変化を、存分に楽しんでいただける -そんな98BEERsらしい一本をかたちにすることができました。
私たちの想いやビールの方向性を丁寧に汲み取り、最適なご提案をしてくださったスペントグレインさんには、とても感謝しています。

インタビュアー:現在使用している中で、特にお気に入りの設備はありますか?

宮嵜様:特に気に入っているのは、タンク下部に設けられた“太い配管”です。
 一般的な醸造設備に比べてひとまわり太めの配管を、特別にご用意いただきました。

果物を使用した瓶内二次発酵のビールを造るうえで、この太い配管は非常に重要な役割を果たします。
オリ引き(沈殿した酵母の除去)をスムーズに行えることに加え、漬け込んだ果物のカスなども問題なく排出できるため、仕上がりの品質向上にもつながっています。

こうした細部へのこだわりが、理想としていた“穏やかな味わい”のビールに直結しており、「この仕様にして本当に良かった」と、今でも実感しています。

インタビュアー:では、98BEERs様の今後の展望をお聞かせください。

宮嵜様:今後の展望としては、これまでクラフトビールに触れる機会のなかったお客さまに、その魅力や楽しさをお伝えしていくことが、私の大きな使命だと考えています。

私たちの会社ではもともと「98WINEs」というワイナリーを主軸に事業を展開しており、その延長としてクラフトビール醸造所を新たに立ち上げました。
そのため、すでにワインを親しまれているお客さまや、これまでクラフトビールに馴染みのなかった方にも、比較的スムーズに私たちのビールをご紹介できる環境にあると感じています。

こうした方々にも、クラフトビールの世界には多彩な歴史や文化があり、さまざまなスタイルや味わいがあること、そして食事と合わせて楽しむことができる“奥深いお酒”であるという魅力をお伝えしていきたいですね。

今後は、ワイナリーとの連携もさらに深め、ワイン用のブドウを使ったビールの醸造にも積極的に取り組んでまいります。

実は2024年に、ヨーロッパの“シャンパンビア”のようなイメージで、山梨県産の甲州という品種のブドウを使用したビールを醸造・販売いたしました。
繊細な泡立ちとドライな飲み口のビールに、甲州ブドウの果汁を加えて発酵させたことで、ビールとスパークリングワインの良さが調和した一本に仕上がったと感じています。

このビールは、ワインファンの方々からも非常に好評をいただきました。
今後もこうした“ワイナリーと連動したビール”の醸造を継続し、98BEERsでしか造れない、地域性と独自性に富んだビールをお届けしていきたいと思っています。

もちろん、瓶内二次発酵によるビール造りへのこだわりも、今後さらに追求してまいります。
熟成による味の変化を楽しめることはもちろん、穏やかでありながら奥行きのある味わいを探求し続け、一人でも多くのお客さまにお届けできるよう努めていきたいと考えています。

インタビュアー:最後に、これから醸造所の開業を目指す方へメッセージをお願いします。

宮嵜様:やはり、丹精込めて造り上げたビールをお客さまに召し上がっていただき、その笑顔に出会える瞬間を思い描きながら醸造に向き合うことが、何よりも大切だと感じています。

一つお伝えしたいのは、「おいしいビールができた!」という達成感にとどまらず、そのビールをどのように届け、どのように受け取っていただけるかという“その先”にまで、想いを巡らせていただきたいということです。

私自身、ビールを通じて「おいしいね」と言っていただいたり、お客さまの笑顔に触れるたびに、醸造という営みの意味や喜びをあらためて実感しています。
理想の味わいを追い求めるだけでなく、その一杯が誰かの心に残るような存在となるよう、丁寧に、真摯に取り組むこと。そうした姿勢を持ち続けることが、ブルワーにとって何より大切なのではないかと感じています。

もちろん、私自身もまだまだ学ぶべきことが多く、日々試行錯誤の連続です。
だからこそ、これからクラフトビール業界に飛び込まれる皆さまとも一緒に切磋琢磨しながら、一歩ずつ成長していけたら心強いですし、何より嬉しく思います。

この業界は、同じ志を持つ仲間とのつながりが非常に強く、「おいしいビールを造りたい」という気持ちを共有できる温かいフィールドだと感じています。
お互いに刺激を与え合いながら、共にクラフトビール業界を盛り上げていきましょう。

なお、もし開業にあたって「どこに醸造設備を依頼すべきか」と悩まれている方がいらっしゃいましたら、スペントグレインさんを心からおすすめいたします。

醸造設備に対する妥協は一切なく、これまで数多くの開業支援に携わってこられた経験を活かしながら、ブルワーそれぞれの理想やスタイルに応じて、非常に柔軟に対応してくださいます。

「自分が造ったビールで誰かを笑顔にしたい」という想いに、真摯に、そして全力で寄り添ってくださるスペントグレインさんなら、きっと理想とする醸造所の実現に向けて、力強い後押しをしてくれるはずです。

醸造所の紹介

98BEERs

@98wines が運営するブルワリー 土日祝のみ営業中(10:00-16:00)

醸造所のWEBサイトはこちらから

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