ビールの醸造における水の重要性を解説!

近年、創意工夫を凝らした、さまざまなビールが誕生しています。

いざビールを作るとなると、どこに重点を置けばおいしいビールを作ることができるのか、疑問に思う事業者様も多いのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、ビールとほかのお酒との違いや、ビール作りに欠かせない水の重要性を解説します。

ビール作りのポイントを押さえたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】

ビールの定義

日頃から多くの方に親しまれているビールですが、ほかのお酒と何が違うのかご存じでしょうか。

酒税法により「ビール」と定義づけられるものは、下記の表にまとめた2種類です。

 

【ビールの定義づけ】

ビール 
麦芽(使用割合100%)、ホップ、水を原料として発酵させたもの 麦芽(使用割合50%)、ホップ、水、麦、米、果実、コリアンダー など特定副原料を使用して発酵させたもの 

見た目や原料の違いが分かりづらいビールと発泡酒の相違点は、麦芽が使用されている割合です。

麦芽が使用されている割合が50%以上であればビール、50%未満であれば発泡酒と区分されます。

 

麦芽が使用されている割合にくわえて、ビールは使用する酵母の種類や色、原料、出荷時の処理方法によって、さらに細かく分類されます。

 

参照元:国税庁 ビール・発泡酒に関するもの

ビールの原料

ビールの原料は、麦芽・ホップ・酵母・水です。

たった4つの原料から、多種多様なビールが作れるのは驚きですよね。

 

それぞれ、どのようにビールの味や香りに関わるのかを解説します。

麦芽

麦芽は、麦を発芽・乾燥させたもので、ビールに独特な色や味、香りを与える原料です。

発芽させた麦を乾燥させる過程で、ビールの色や香りが生み出されるという仕組みです。

 

麦の種類や品質によって、色や味が変わるため、よりおいしく仕上げるために麦芽は慎重に選定しましょう。

 

また、ビール作りに使われる麦の大半を大麦が占めますが、小麦やオーツ麦、ライ麦など、作りたいビールに合わせてブレンドすることが可能です。

ホップ

ホップは、アサ科のつる性の植物です。

ビール作りには、ホップの「毬花(まりはな)」といわれる、松ぼっくりのような形をした雌しべが使われます。

 

ホップがビール作りにおいて果たす役割は、下記に示した4つです。

 

【ビール作りにおけるホップの役割】

役割 詳細 
苦味をつける ビールの元になる麦汁に、ホップを入れて煮込むと、ホップの苦味成分が麦汁に移る 
香りをつける ホップの種類によって、ビールにシトラシー・フローラル・スパイシー・グラッシーなどの香りをつける 
泡を持続させる ホップを使うほど、ビールの泡持ちが良くなる 
殺菌効果を高める ビールの腐敗を防ぐ、菌の繁殖を抑える 

苦味や香りは、麦汁を煮沸する際に、ホップを入れるタイミングや量を変えることによって、調整できます。

 

ホップの量や種類などを巧みにカスタマイズすれば、誕生するビールの種類は無限大です。

酵母

酵母とは、発酵を行う微生物のことを指します。

酵母には、麦汁に含まれる糖分を、発酵過程でアルコールと炭酸ガスに分ける役割があります。

 

酵母の働きにより、この発酵過程で、ビールのアルコール度数や炭酸の量を決定づけるのです。

また、酵母は、使用する種類によって、ビールの香りや味わい、口当たりに違いが出ます。

 

たとえば、恵みある味わいと香りを生む上面発酵酵母は、「エールビール」で使用され、心地よい飲みやすさを生む下面発酵酵母は、「ラガービール」で使用されています。

このように、ビールに作りにおいては、使う酵母が異なるだけでビールの仕上がりが変わることを念頭に置きましょう。

水は、ビールの原料のうち90%以上を占めます。

 

水の中の酸性・中性・アルカリ性を示すpHの指標と、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル含有量を示す硬度が、味だけでなく、色や香りにも影響を及ぼします。

 

水が持つ成分のなかでも、ビールの醸造において重要になるのが硬度です。

硬度の高低差によって、どの種類のビールを作るのに適しているのかが変わります。

関連記事:クラフトビールの個性!色の違いはなぜ生まれるのか

ビールの製造工程

ビールの製造工程は以下で紹介する、5つの工程に分けられます。

 

【ビールの製造工程】

  • 麦を麦芽にする「精麦」
  • 麦芽を粉砕する「ミリング」
  • 麦芽から麦汁を作る「仕込み」
  • 酵母を加えてアルコールを生み出す「発酵」
  • ビールをまとまりのある味に仕上げる「貯蔵」

なかでも、発酵過程はビールの種類を分ける決め手になります。

 

ビールは、150以上の種類がありますが、これらは、流通している99%を占めるラガービールと、フルーティな香りと深い味わいを楽しめるエールビールの2種類に大別されます。

自分の作るビールの種類が決まる分岐点となるのが、発酵過程なのです。

 

また、本来仕込みの過程で麦汁に投入するホップを、発酵過程でも加えることで、ビールに強いホップの香りをつける「ドライホップ」という手法を取る選択肢もあります。

おいしいビールを作るためにも、発酵過程に工夫を凝らしましょう。

おいしいビールを醸造するポイント

ビール作りにおいては、水質がもっとも重要視されており、なかでも硬度がビールのおいしさを大きく左右します。

 

硬度が低くミネラル量が少ない軟水は、すっきり、かつなめらかな味わいのある淡色系のビールに適しているとされています。

反対に、硬度が高くミネラル量が多い硬水は、濃く、はっきりとした飲み口になる傾向がみられることから、黒ビールやエールビールなどの濃色系ビールに適しているようです。

 

水が影響を及ぼすのは、単にビールの味だけではありません。

麦を浸して麦芽を作るための浸麦用水や、麦汁を作る仕込み水など、醸造過程においても大量の水を使います。

 

ビールが飲み物である以上、どのような性質の水をどの工程で使うのか、こだわり抜くことは避けては通れません。

ビール作りの要となる「水」にとことんこだわろう!

今回は、ビールの原料や製造工程、醸造におけるポイントを解説しました。

 

おいしいビールを作るポイントは、ビールの原料のなかでも、水にこだわることです。

水に含まれる硬度の高低差によって、ビールの種類や味、飲みやすさまで変わります。

4つの原料のなかでもどのような種類を使うのか、目的に合わせてどう製造工程を調整するのかで、おいしいビールの明暗が分かれるのです。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、建物に合わせた醸造設備のご提案や受注生産を承っています。

ほかにも、酒税申告プログラムやタップ工事など、ビール醸造の立ち上げに関することもお手伝いしますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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