レイトホッピングとは?製法の特徴や効果・使用されるホップについて
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- 2025.02.21
- 2025.06.25

ブルワリーの立ち上げや事業拡大を考えている方に向けて、レイトホッピングについて解説します。
ビールの製法のひとつである「レイトホッピング」。
香りを豊かにする製法として知られていますが、具体的な製法や特徴を知らない方も多いかもしれません。
そこで今回の記事では、レイトホッピングの特徴や使用する原料の品種について解説します。
参考にしていただければ、レイトホッピングで製造したビールが、どのような香りや味わいになるのかを理解できるでしょう。
【目次】
ビールの製造工程をおさらい
レイトホッピングについて見ていく前に、ビール製造工程をもう一度おさらいしましょう。
【ビール製造工程】
- 製麦:麦芽を細かく砕く
- 仕込み:細かく砕いた麦芽を煮込んで麦汁を作る
- 発酵:タンクの中に酵母を入れてビールを発酵させる
- 貯酒・熟成:14日間ほど0℃で寝かせて熟成させる
- ろ過:ビール発酵段階で入れた酵母をろ過にて除去する
- 充填:完成したビールを瓶や缶の中に入れる
ビールの基本的な製造ステップは、麦芽を砕いて麦汁を作り、酵母を加えて発酵させることから始まります。
14日間ほど熟成させ、発酵に使った酵母を除去した後、瓶や缶に詰めて完成です。
ビールは以上のような工程で製造されます。
レイトホッピングとは
レイトホッピングとは、麦芽の煮沸が終了する直前に原料を投入する製法のことです。
一般的なビールの製法では、原料は麦汁を作った段階で投入されます。
しかしレイトホッピングは「late(遅い)」との名前がつくとおり、一般的なビール製法よりも遅く原料を投入するのが特徴です。
煮沸する前に原料となる植物を入れると、香りが失われてしまいやすくなります。
煮沸が終わった後に原料を入れ、香りを残すのがレイトホッピングの特徴です。
レイトホッピングの効果
レイトホッピングには次の2つの効果が期待されます。
効果1:好ましくない香りをなくせる
ひとつ目の効果は、好ましくない香りを取り除ける点です。
原料となる植物はビールに必要な香りも放っていますが、同時に好ましくない香りも持っています。
よい香りだけを残したい場合には、レイトホッピングが効果的な製法です。
レイトホッピングでは原料が持つ好ましくない香りを揮発させる効果があります。
原料を加えるタイミングや量、時間により、どの香りが残るかが変わります。そのため、好みの香りを演出する際に有効です。
ビールの芳香性を重視するなら、レイトホッピング製法を試してみてください。
効果2:苦みと香りのバランス調整ができる
苦みと香りのバランス調整がしやすいことも、レイトホッピングの効果のひとつです。
ビールを製造するときの原料添加は、香り付けとともに、苦みを加える役割も担っています。
ホップは煮沸するほど香りも苦みも減るものです。
そのため煮沸前に原料を添加する通常の製法では、香りと苦みが失われやすくなります。
レイトホッピングよりも遅く原料を投入するドライホッピングでは、香りが残る一方で苦みが強くなりやすい傾向があります。
その点レイトホッピングでは、全く煮沸をしないわけでもなく、煮沸時間が適切に調整されます。
原料の香りと苦みを出すために、ちょうどよいタイミングだと言えるでしょう。
さらに、原料を投入するタイミングを工夫することで、香りと苦みのバランスを調整しやすくなります。
レイトホッピングによく使われるホップの種類
レイトホッピング製法を行うなら、原料の種類を選ばなければなりません。
おもに使用されるのは「アロマホップ」と「ファインアロマホップ」の2種類です。
それぞれどのような特徴があるのか、2つの原料の種類について見ていきましょう。
種類1:アロマホップ
アロマホップとは、ビールに香りをつける効果の高い原料のことです。
香りは強いものの、味わいは穏やかであるのが大きな特徴。
花や土、大地、草のような香りが特徴で、伝統的なノーブルホップとして知られています。
ボヘミアンラガーやピルスナーに使用される原料です。
アロマホップにはさまざまな種類があります。
しかし品種ごとに香りの特徴が異なるため、どのようなビール製造を目指すかにより選ぶべき品種は変わるでしょう。
種類2:ファインアロマホップ
「ファインアロマホップ」は、他の品種に比べて穏やかな香りと苦みがあることが特徴です。
品のよいビールを作る際によく使用されます。
アロマホップの代表的な品種
レイトホッピングに使用されるアロマホップには、代表的な品種が4つあります。
「シトラ」「カスケード」「シムコー」「モザイク」です。
品種1:シトラ
まずは「シトラ」です。
世界中で使用されるアロマホップで、柑橘系の爽やかさとベリー系のフルーティーさを兼ね備えています。
グレープフルーツやメロン、ライム、パッションフルーツ、ベリーのような香りがします。
産地は米国ですが、ドイツやイギリスの原料との交雑によって誕生した品種です。
「ももシトラスゴーゼ」や「ストーン・ゴートゥーIPA」に使用されています。
品種2:カスケード
レイトホッピングのアロマホップでもとくに代表的なのが「カスケード」です。
グレープフルーツに似た柑橘系の香りの中に、花のようなフローラルさが混じります。
アメリカで誕生した原料であり、従来の原料のイメージを覆したのがカスケード。
カスケードが生まれて以降、「アメリカンホップは華やかな香り」とのイメージが定着しました。
クラフトビール製造が始まった頃から作られているビールによく使用されます。
品種3:シムコー
「シムコー」は、アロマホップとしては比較的新しい品種です。
苦みを加えるための原料として使用されていましたが、近年になりアロマホップとして用いられるようになりました。
香りはグレープフルーツのような柑橘系で、土や草を思わせるアース系の香りが特徴です。
またパッションフルーツの香りも楽しめるでしょう。
産地はアメリカで、「ユニオンジャックIPA」や「ルイネーション・ダブルIPA」などで使用されています。
サミット、アマリロ、センテニアルで代替されることも少なくありません。
品種4:モザイク
「モザイク」も2012年リリースの新しいアロマホップです。
レイトホッピングのアロマホップとしてだけでなく、ビタリングホップとしても世界的に使用されています。
香りはマンゴーやパパイヤを想起させるトロピカルなフルーティーさが特徴です。
また、ブルーベリーやバラ、シトラスなどの香りも感じられます。
甘みとフルーティーさのバランスが良いアロマホップで、その香りの芸術性から『モザイク』という名前がつけられました。
「デッド・ポニー・クラブ」「トリプルホップIPA」などのレイトホッピングにて使用されます。
ファインアロマホップの代表的な品種
ここでは、ファインアロマホップの代表的な品種を紹介します。
「ザーツ」と「テトナング」の2種類をご紹介します。
品種1:ザーツ
「ザーツ」はチェコ・ジャテツに古くから伝わる原料で、香りの高さで定評のある高級品種として知られています。
さらにα酸含有量が少ないため、苦みを抑えたビールを製造したいときに活躍します。
苦みが弱く、柔らかな香りとスパイシーさのバランスが取れている点が特徴です。
「ピルスナー」「ラガー」「ベルジャンホワイト」などに使用されます。
サントリーの『プレミアムモルツ』にも使用されており、広く親しまれています。
品種2:テトナング
『テトナング』はドイツのテトナング地方で生産されるファインアロマホップです。
ノーブルホップのひとつであり、スパイスやハーブ系の香りをもたらす原料で、苦みが抑えられるのが特徴です。
α酸含有量が低く、香り高く穏やかな苦みのビールを製造したいときに適しています。
「ピルスナー」「アメリカンペールエール」によく使用されます。
『テトナンガー』という別名でも知られています。
レイトホッピングでは目的ごとにホップを選んで
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、レイトホッピングについてご理解いただけたと思います。
レイトホッピングは香りを調整する目的で行われますが、使用する原料によって香りは異なります。
目的に合ったアロマホップ・ファインアロマホップを選ぶことが、理想的なビールづくりのポイントです。
スペントグレインではブルワリーの開業支援を行っており、レイアウトから醸造設備の選定、メンテナンスまでを実施しています。
レイトホッピングで香り豊かなビールを製造したい方は、ぜひご相談ください。
この記事の監修者

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。