クラフトビール作りに欠かせない!ビールの5つの原材料

多くのシーンで愉しまれているお馴染みのビールですが、クラフトビールブームの影響とも相まって、その人気は留まるところを知りません。

人々を虜にする高品質なビールは、原材料も徹底的に吟味されています。

 

本記事では、これからマイクロブルワリーを立ち上げようとお考えの方に向けて、ビールの原材料や醸造工程を紹介します。

洗練された個性的なビールの醸造に、ぜひお役立てください。

【目次】

酒税法上のビール・発泡酒

「一杯目はビール!」という方も多いかと思いますが、そもそもビールの定義をご存じでしょうか。

世界的に見た場合、ビールは麦芽、ホップ、水、酵母を主原料とする、発泡性の醸造酒のことを指します。

 

一方、日本国内においては、酒税法により、さらに細かい定義づけがなされています。

ビールの醸造・販売を行ううえでは、必ず押さえておかなければならないポイントであるため、一度お目通しください。

 

【酒税法によるビールの定義】

  • 麦芽使用比率50%以上であること
  • 副原料の重量の合計が使用麦芽の重量の5%の範囲内であること

麦芽使用比率が50%未満のものは、発泡酒に分類されます。

あくまで酒税法上での分類なので、発泡酒といえど、味わいはビールと変わらないものも少なくありません。

 

なお、副原料とは麦芽やホップ以外に加えられる原材料のことで、果実やハーブなどが挙げられます。

最近は、ビールに独特のフレーバーを添加する目的で、投入されることも増えてきています。

 

このように、原材料の比率によって酒税法上の分類が変わるため、クラフトビール作りに際してはこの点に留意しておきましょう。

ビールの種類

世界に目を向ければ、実に多種多様なビールがあふれています。

これらのビールは、その発酵法により、大きく2つに分けられます。

 

1つ目は、日本でも広く親しまれているラガービールです。

ラガービールは、発酵タンクの下部で発酵が起こる、いわゆる「下面発酵」により醸されます。

そんなラガービールの特長の一つが”のどごし”であり、冷やすとキレが際立ちます。

国内のビール四大メーカーの製品の多くもラガータイプであり、日本においてはすっかり市民権を獲得した、国民的ビールといっても差し支えないでしょう。

 

下面発酵に対して、タンクの上面で発酵が起こる「上面発酵」により、醸されるビールをエールビールとよびます。

さわやかで、“フルーツや花のよう”とも形容される豊かな香気が特長で、常温に近づけることで豊かな香りが花開きます。

近年人気を博しているクラフトビールの多くも、このエールビールです。

 

なお、上述のようにラガービールとエールビールは発酵法が異なりますが、これは酵母の種類の違いによるものだということを、覚えておきましょう。

クラフトビールの原材料

おいしいビールは、厳選された原材料から生まれます。

 

なお、一般的な“ビール”と“クラフトビール”の原材料は基本的に同じですが、酵母や副原料の種類、配合比率の違いによって独自性を出すことが可能です。

そのため、原材料の詳細を把握したうえで、ブルワリー開設に先立って“オリジナルレシピ”を製作しておきたいところです。

 

はじめに、クラフトビール作りに欠かせない、5つの原材料を紹介します。

➀水

ビールの9割は、水です。

無色透明でありながら、水こそがビールの個性を決定づける立役者といえるでしょう。

 

口当たりや色、そして香りにいたるまで、使用する水によってビールの特徴は大きく変わってきます。

その理由は、水によってミネラルの含有量が異なるためです。

ミネラル含有量の差は、酵母の活動や、麦芽・ホップに含まれる各主成分の溶出量に大きな違いを生み、ビールの味を左右します。

 

原材料としてはもちろん、ビールの醸造工程にも多くの水が必要になるため、新たにブルワリーを作るのであれば、おいしい水が潤沢にある地を選ぶのも一案です。

関連記事:ビールの醸造における水の重要性を解説!

②麦芽

ビールは、「麦酒」と書き表すように、麦芽もビールを醸すうえでなくてはならない原材料です。

麦芽とは、大麦もしくは小麦を浸水、発芽させたものを指します。

 

「モルト香」ともよばれる香ばしいアロマを醸成し、味わいにコクやうまみを与えると同時に、麦芽由来の糖は酵母の栄養源ともなるため、発酵には必要不可欠です。

③ホップ

ホップは、アサ科の植物の球花のことであり、ビールの香りづけおよび苦みを添加する目的で加えられます。

 

特にアロマホップとよばれる、香気に優れた種類のものを使って醸したビールは、ライチとも、グレープフルーツとも形容される果実香が特長です。

 

ホップには防腐作用もあり、ホップを多めに使用したエールビール“IPA”は、冷蔵技術が未発達であった時代に、ビールの品質を保持するために生まれたといわれています。

④酵母

ビールの醸造プロセスにおける“縁の下の力持ち”ともいえる酵母の活動によって、麦芽由来の糖から、アルコールと二酸化炭素が生まれます

 

アルコールはいわずもがな、ビールの発泡感も、この発酵工程で酵母が生み出す二酸化炭素のはたらきによるものなのです。

また、酵母の種類によって、生み出される香気成分やアミノ酸の量にも違いが生まれるため、ビールの個性を決める大きな変数といえます。

 

なお、一部の自然発酵により醸されるビールは、穀物由来の酵母を使うため、原材料として投入しません。

⑤副原料

副原料とは、コーンスターチやスパイス、フルーツなどの食品を指し、先述の原材料に加えて使用される食品です。

 

ビールの醸造に際して必須ではないものの、糖質や香りを添加する目的で積極的に用いられます。

特にクラフトビール作りにおいては、ビールの個性を際立たせ、ライバルとの差別化を図る際に活躍します。

フルーツやスパイスの風味が足されたビールのみならず、最近は植物由来のリラックス成分が添加されたビールも人気です。

 

このように、副原料はクラフトビールの可能性を大きく押し広げているのです。

クラフトビールの醸造工程

原材料と同様に、クラフトビールの醸造工程は一般的なビールのそれと大きくは変わりません。

 

つまり、ブルワリーならではの独自性を出すためには、温度調整、時間管理などを工夫・調整する必要があります。

オリジナルレシピには、原材料の選定や配合だけではなく、醸造工程におけるコツも盛り込みましょう。

 

ここからは、ビールの醸造工程を5ステップで紹介します。

工程➀製麦

ビールの原材料である麦芽を作るために、大麦ないし小麦を浸水、発芽させ、乾燥させるまでの工程を「製麦」とよびます。

発芽させる理由は、麦自体に含まれるでんぷんを糖に変えるはたらきをもつ、アミラーゼとよばれる酵素を生成させるためです。

 

酵母は、でんぷんを栄養源とできないため、アミラーゼの力によって糖に変えてあげる必要があります。

でんぷんが糖へと変化することを「糖化」といいます。

 

白米をよく噛むと、次第に甘みが口の中に広がるのも、アミラーゼによって白米のでんぷんが糖化されるためです。

防腐・保存のために、麦芽を乾燥させて、製麦工程は完了となります。

工程②ミリング

続いては、麦芽を細かく砕いて粉末化し、成分を溶出させやすくすることを目的とした「ミリング」工程です。

麦芽は専用の機械によって細かく砕かれ、表皮に覆われている内側の栄養分に富んだ組織が露出します。

工程③仕込み

次いで、細かく粉砕した麦芽にお湯を加え、成分を浸出させる「仕込み」工程です。

 

麦芽に含まれるでんぷんと酵素がともに溶出、水の中で溶け合い、化学反応により糖が生成されるため、糖化プロセスが進むほどに原液は甘みを増していきます。

最後に、煮沸・ろ過のうえ、ホップを投入して苦みと香りづけを行えば、仕込みは完了です。

 

なお、出来上がった液体は麦汁(ばくじゅう)とよばれます。

工程④発酵

続く「発酵」工程において、活躍するのが酵母です。

酵母が、麦汁中の糖分を栄養源に、麦汁をビールに変えるアルコールと二酸化炭素を産します。

 

発酵に要する期間は、酵母や製法により異なるものの、おおよそ7~10日前後で完了します。

工程⑤貯蔵

発酵が完了したビールは、専用のタンクで数週間~数か月間かけて、低温貯蔵・熟成されます。

この間にビールに含まれる酵母や酵素のはたらきが落ち着き、味わいは円熟味を増していきます。

 

また、低温貯蔵中に二次発酵を行う製法のビールも少なくありません。

貯蔵と熟成が完了すれば、再度ろ過し、パッケージングを経て、晴れて出荷となります。

クラフトビール醸造における原材料の重要性

個性的かつ高品質なビールを醸造するためには、原材料の特性を知ったうえで、それらを吟味することが肝要です。

 

たとえば、酵母やホップは、ビールの香りに大きく関わっています

そのため、華やかさ、フルーティーさを出したい場合は、上面発酵を好む酵母を使う、あるいは香気豊かなアロマホップを採用するなど、適宜調整してみてください。

 

また、麦芽の乾燥(焙煎)温度を高くすれば、深く香ばしいアロマのビールが出来上がります

味に関しては、麦芽やホップの選定、および調整も重要です。

 

麦芽に含まれるアミノ酸・糖質は、ビールのコクやうま味のもとになります。

軽やかな味わいにしたいのか、重厚感を出したいのかによって、選ぶべき麦の品種は異なります。

品種や含有成分、含有量を比較しながら、あれこれ吟味したいところですね。

 

ほかにも、おいしい水は、質の高いビール作りに欠かせません

まずは、飲んでみておいしいと感じる水を使うことが基本といえます。

幸いなことに、日本の水の多くはビール作りに適しているといわれる軟水であり、この点は大きなアドバンテージです。

 

ビール醸造は、その工程においても多くの水を必要とするので、きれいでおいしい水が豊富な地に醸造所を構えることができれば、まさに理想的といえます。

原材料や、醸造工程に一切の妥協を許さないオリジナルレシピを作成のうえ、ファンの心を捉えて離さないクラフトビール作りを始めましょう。

ビールは基本的に4つの原材料から醸される

今回はビールの原材料と醸造プロセスを紹介しました。

 

ビール主な原材料は、水、麦芽、ホップ、酵母の4つです。

酒税法上、ビールと名乗るには原材料における麦芽の重量比が50%以上である必要があります。

各原材料の特性を理解したうえで、製麦やミリング、仕込み、酵母による発酵そして熟成を経れば、必ずやおいしいビールを作ることができるでしょう。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、マイクロブルワリーのビール醸造をサポートしております。

高品質なクラフトビール醸造に欠かせない、各種設備・機器を取り揃えていますので、ビール作りに挑戦しようとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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