クラフトビールの製造にかかる税金とは?酒税法を徹底解説

自由な味わいを楽しめるクラフトビールを愛し、自身でも醸造所を立ち上げたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
クラフトビールの製造に関する取り決めは、酒税法によって定められており、開業するにあたって理解を深めておく必要があります。

 

本記事では、クラフトビールの醸造に関わる酒税法の概要と最近の改正内容を解説します。
酒税法の基礎知識を確認し、醸造所の経営を成功させたい方は最後までご覧ください。

【目次】

クラフトビールとは

クラフトビールとは、小規模な醸造所が造るビールのことです。

 

日本では、1994年の酒税法の改正で、年間最低製造量が200万L以上から、6万L以上に軽減されたことをきっかけに造られるようになりました。
現在では、国内に800か所以上のクラフトビールの醸造所が存在しており、全国各地でその味を楽しむことができます。

 

クラフトビールの特徴は、多様で個性豊かな味わいを感じられる点にあります。
その理由は、醸造所が小規模ゆえに、原材料選びから製造、瓶や缶への充填までブルワー(醸造家)が関わって丁寧に製造できるからです。
工程の一つひとつに、ブルワーのこだわりが詰め込まれることで、個性豊かなクラフトビールが誕生します。

 

フルーティーな風味のものから、苦みが強いものまで、クラフトビールの味わいは醸造所の数だけ存在します。

関連記事:クラフトビールの種類「IPA」とは?特徴やおいしい飲み方を確認

クラフトビールの製造・販売にも関わる「酒税法」とは

酒税法とは、酒税の賦課徴収、酒類の製造や販売の免許などを定めた法律のことです。

 

酒税法上で酒類は、ビールや清酒、果実酒など全17品目に分類されており、その品目ごとに「1kLあたり○○円」のように税率が定められています。

 

具体例として、ビールの税率は1kLあたり181,000円です。
ビールは17品目のなかでも”発泡性酒類”という枠組みに分類され、ほかには発泡酒や第三のビールも、これに属します。

 

なお、酒税は、消費税やたばこ税と同じ間接税の一つです。
納税義務者は製造者ですが、課された税額を商品に含めて販売することによって、最終的に消費者が税金を負担します。

クラフトビールを製造するには酒類製造免許が必要

酒税法により、アルコール分が1%以上の飲料を、無免許で製造することは禁じられています。
もしも無免許で酒類の製造を行った場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。

 

したがって、醸造所を立ち上げてクラフトビールを製造するためには、酒類製造免許が必要です。

なお、酒類製造免許を取得するまでの具体的な流れは、以下の通りです。

 

【酒類製造免許を取得するまでの手順】

  1. 醸造スキルを身につける
  2. 事業計画を立てる
  3. 開業資金を集める
  4. 物件を決める
  5. 醸造設備を準備する
  6. 税務署に酒類製造免許の申請書を提出する

 

上記のように、酒類製造免許を取得するためには、多くの手順を踏まなければなりません。
また、税務署に申請書を提出したあとも書類審査に4か月ほどの期間を要するため、開業したい時期を想定し、計画的に準備を進めていくことが求められます。

 

まずは税務署に赴き、酒類製造免許の取得までの流れを相談するとよいでしょう。

関連記事:ビール製造に必要な免許と取得にかかる費用について

クラフトビールの製造に関わる酒税法上の注意点

酒類製造免許を取得し、クラフトビールの製造を開始したら注意しなければならないのが「酒類の販売数量等報告書」の提出です。
酒類販売業者は、お酒の販売数量や在庫数量を記入した報告書を、一年ごとに所轄の税務署へ提出することが酒税法によって義務付けられています。

 

諸般の事情で一時的に販売を停止している場合や在庫がない場合でも、免許を所持している限り、報告書の提出は必須です。
もし、報告書を提出しなければ、申告義務違反となり1年以下の懲役や50万円以下の罰金に処されることになります。

 

毎年3月ごろに税務署から報告に必要な書類が届くので、忘れずに提出しましょう。
なお、報告書は、e-Taxを利用すればオンラインで提出することもできます。

酒税法の詳細と改正内容

2018年に行われた酒税法の改正によって、ビール業界は大きな影響を受けました。

 

その内容は、「類似する酒類間の税率格差が、商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改めるために、税率を段階的に一本化していく」というものです。
現在、ビール・発泡酒・第三のビールの順で税率は高く設定されていますが、2026年に統一されます。 

2023年10月の酒税法の改正によって、ビールの税率が引き下げられたのも、上記の改正を進めていくために敢行されました。

 

ここからは、酒税法の詳細と改正の内容について、「発泡性酒類の定義」「税率」「製造量」の3つの観点から詳しく解説していきます。
クラフトビールを造る醸造所にも影響をもたらす改正なので、ここできちんと要点を押さえておきましょう。

発泡性酒類の定義

まずは、現在の酒税法における、発泡性酒類の定義を確認しましょう。

 

ビールとは、麦芽の使用量が全体の50%以上の発泡性酒類のことで、麦芽の使用率が50%未満の場合は、発泡酒に該当します。
このほかの発泡性酒類には、第三のビールがあり、麦芽の代わりに大豆やえんどうを使用したお酒や、発泡酒にスピリッツを混ぜ合わせたお酒のことを指します。

 

2018年に施工された酒税法の改正で、ビールの定義について麦芽の使用量と副原料の観点から変更がくわえられ、ビールと発泡酒の分類が大きく変化しました。

 

改正以前のビールの定義は、発泡性酒類のうち、麦芽の使用量が67%以上のお酒と定められていましたが、改正によって50%以上に引き下げられました。
つまり、麦芽の使用量が全体の50%以上67%未満で、今まで発泡酒に定義されていた発泡性酒類が、ビールとみなされるようになったということです。

 

また、ビールに加えられる副原料は米や麦、トウモロコシに限られていましたが、香辛料や果実などが新たに認められました。

 

【酒税法の改正によって追加された副原料】

  • 果実
  • コリアンダー
  • 香辛料
  • ハーブ
  • 野菜
  • そば・ごま
  • 含糖質物
  • 食塩・みそ
  • 茶・コーヒー・ココア
  • かき・こんぶ・かつお節

上記のように、副原料として認められる素材の範囲が大幅に広がりました。
副原料は味わいや香りに個性を出す要素なので、クラフトビールの製造に追い風となった改正といえます。

関連記事:クラフトビールに欠かせないホップ!役割と代表的な種類をチェック

税率

2018年の酒税法の改正によって、2020年より段階的に発泡性酒類の税率の一本化が始まりました。
発泡性酒類の税率の変化は、以下の通りです。

 

【350mLあたりの税率の変遷】

品目改正前2020年改正2023年改正2026年改正
ビール77円70円63.35円54.25円
発泡酒46.99円
第三のビール28円37.8円46.99円

改正前は、ビールと発泡酒で30円、ビールと第三のビールのあいだには49円も酒税に差がありました。
酒税の金額は、麦芽の含有量の多さで決められていたため、上記のような価格差が生まれました。

 

このままでは、ビールの製造活動が衰退化し、税の中立性が保てないため、税率の統一が行われたというわけです。
ビールの税率を引き下げ、発泡酒と第三のビールの税率を引き上げることで、2026年に54.25円に統一されます

製造量

酒税法の改正で、既存のクラフトビールのブルワーが注目していたのが、製造量に関する規定です。
クラフトビールを製造する際は“ビール”と“発泡酒”の2つから、取得する酒類製造免許を選択できます。
2つの免許は年間最低製造量が異なり、ビールは60kL以上製造しなければならないのに対し、発泡酒は6kL以上の製造で営業が認められます。

 

小規模な醸造所のブルワーは、発泡酒の酒類製造免許を所持している場合が多く、定義の変更に伴い「免許を取り直さなければならないのでは」と懸念する声も上がっていました。
しかし、今回の改正ではその現状が考慮され、新法ではビールに該当するお酒でも、免許の取得時に発泡酒とみなされていた場合は、引き続き製造が認められることとなったのです。

 

なお、現在酒類製造免許の取得を目指している方は、改正後の定義をもとにビールと発泡酒が分類されるので、注意が必要です。

関連記事:下面発酵と上面発酵の違いと各発酵方法でつくれるビールの特徴

酒類製造免許を取得するまでの流れ

クラフトビールの醸造所を開業するためには、まず国税庁の管轄である税務署から「酒類製造免許」を取得する必要があります。

しかしながら、この免許は申請すれば必ず取得できるものではなく、酒税法に基づく複数の要件を満たすことが求められます。

そのため、いきなり申請書を提出するのではなく、事前相談や事業計画の作成、必要書類の整理などを段階的に進めていくことが重要です。

さらに、申請後には書類審査だけでなく醸造設備や事業計画の実現性を確認する現地調査が行われる場合もあります。

ここからは、酒類製造免許を取得するまでの基本的な手続きの流れについて、順を追って解説していきます。

事前相談

酒類製造免許を申請する際には、まず管轄の税務署に事前相談を行うことが一般的です。

酒税法では製造設備や年間製造見込み数量、経営体制などについて細かな要件が定められているため、事前に条件を確認しておくことで申請手続きをスムーズに進められます。

また、相談の段階では醸造所の所在地や設備計画、販売方法などを説明することが求められる場合があります。 そのため、ある程度の事業計画を整理したうえで相談に臨むことが重要です。

事前相談を通じて申請の可否や必要書類の内容を把握することで、申請後の不備や手続きの遅延を防ぎやすくなるでしょう。

事業計画書の作成

事前相談を踏まえたうえで、酒類製造免許の申請に必要となる事業計画書を作成します。

事業計画書では、醸造する酒類の種類や年間製造予定数量、販売計画、資金計画、設備内容などを具体的に示す必要があります。

特にクラフトビールの場合は、年間製造数量の見込みや販路の確保が重要な審査ポイントとなるため、実現性のある計画を立てることが大切です。

さらに、事業の継続性や安定性を示すために、資金調達方法や運営体制についても整理しておくことも必要です。

このように、事業計画書は単なる形式書類ではなく、免許審査において重要な判断材料となります。

必要書類の準備

事業計画書を作成した後は、酒類製造免許の申請に必要となる各種書類を準備します。

具体的には、申請書のほか、法人登記簿謄本や定款、事業計画書、設備の図面、資金計画書などの書類の提出が必要です。

また、申請者の経営状況や資金能力を確認するために、決算書や納税証明書などの提出が求められる場合もあります。

これらの書類は記載内容の整合性が重要であり、事業計画との矛盾があると審査に影響する可能性があるといわれています。そのため、提出前には内容を十分に確認し、不備や漏れがないよう慎重に準備することが重要です。

申請書の提出

必要書類が揃ったら、管轄の税務署へ酒類製造免許の申請書を提出しましょう。

申請は通常、醸造所を設置する所在地を管轄する税務署に対して行います。

提出後は書類内容の確認が行われ、申請内容に不備や不足がある場合には追加資料の提出を求められることがあります。

そのため、提出前の段階で書類の内容を丁寧に確認しておくことが重要です。

また、申請から免許交付までには一定の審査期間が必要となるため、醸造所開業のスケジュールには余裕を持って手続きを進めることが望ましいでしょう。

審査(書類審査・現地確認)

申請書が受理されると、税務署による審査が行われます。

審査対象となるのは、提出された書類の内容が酒税法の要件を満たしているかどうか、事業計画の実現性や経営体制などです。

場合によっては、醸造設備の設置状況や施設の構造などを確認するための現地調査が行われ、設備の衛生管理や製造体制が適切であるかどうかも確認されます。

そのため、申請内容と実際の設備状況が一致していることが重要です。

酒類製造免許の交付

審査の結果、酒税法の要件を満たしていると判断された場合には、酒類製造免許が交付されます。

免許が交付されてから、はじめて合法的に酒類の製造を行えるようになります。

ただし、免許取得後も酒税法に基づく帳簿管理や申告義務などが課されるため、継続的な法令遵守が求められる点は念頭に置いておきましょう。

また、製造数量や設備内容を変更する場合には、追加の届出や許可が必要となることがあります。

したがって、免許取得後も適切な運営体制を維持することが重要です。

酒類製造免許の取得にかかる費用

酒類製造免許を取得する際には、申請手続きにかかる費用だけでなく、醸造設備や施設整備などの初期投資も必要になります。

特にクラフトビールの醸造所を開業する場合は、発酵タンクや仕込み設備、冷却設備など専門的な機材を導入する必要があるため、一定の資金が求められます。

さらに、施設の改装費用や衛生管理設備、貯蔵スペースの確保なども考慮しなければなりません。

そのため、免許取得の段階から十分な資金計画を立てておくことが重要です。

以下では、酒類製造免許に関連する主な費用について整理していきます。

申請手数料

酒類製造免許の申請自体には高額な行政手数料は設定されていませんが、申請に伴う書類取得費用や専門家への依頼費用が発生する場合があります。

一例として挙げられるのは、法人登記簿謄本や納税証明書などの取得費用、図面作成や申請書作成のためのコンサルティング費用などです。

また、行政書士などの専門家に申請支援を依頼する場合には、数十万円程度の費用が発生することもあるので、申請費用だけでなく関連費用も含めて資金計画を立てておきましょう。

設備導入費

酒類製造免許を取得して醸造所を開業する場合、最も大きな費用となるのが設備導入費です。

クラフトビールの醸造では、仕込み設備、発酵タンク、冷却設備、貯蔵タンク、瓶詰め設備など多くの専用機器が必要になります。

これらの設備は規模や仕様によって価格が大きく異なりますが、小規模な醸造所であっても数百万円から数千万円程度の投資が必要になるケースが一般的です。

そのため、設備選定の段階から事業規模や販売計画を踏まえた資金計画を立てることが重要です。

酒税法の改正によって今後のビール市場はどのように変化していく?

2026年の酒税法の改正によって、ビールや発泡酒、第三のビールの税率が一律で54.25円になるのはこれまでに説明した通りです。

 

これにより従来の「ビールは高い」「発泡酒や第三のビールはお手ごろ」という概念は一新され、価格差でなく、好みや味わいで商品を選ぶ時代が来るでしょう。

また、今回の改正でビールの定義を変えたのは、政府による地方創生の取り組みの一環ともいわれています。
副原料として認められる材料の増加によって、日本各地の特産を使った多様で個性的なクラフトビールが誕生することが期待されているのです。

 

酒税法の改正でビール業界の市場は動きつつありますが、決してクラフトビール造りにマイナスの変化を与えるわけではないのでご安心ください。

関連記事:クラフトビール業界の現在の動向と将来へのアプローチを解説

酒税法に対する知識を深め、クラフトビールの醸造所を立ち上げましょう

本記事では、クラフトビールの醸造に密接に関わる酒税法について詳しく解説しました。

 

酒税法は、酒税の賦課徴収、酒類の製造や販売の免許を定めた法律です。
クラフトビールを製造するためには、酒類製造免許を取得する必要があります。
2018年の酒税法の改正によって、発泡性酒類の税率の一本化が始まったことにより、今後はビールの品質や個性が、消費者の商品を選ぶ際の基準となるでしょう。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、クラフトビールの醸造経験が豊富なブルワー3人が、新たに醸造所を立ち上げる方を対象に開業支援事業を行っております。
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この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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