クラフトビールの利益率はどれくらい?上げる方法も解説

根強い人気を誇るクラフトビールですが、一般的なビールよりも、手間やコストがかかるというイメージがありますよね。
「クラフトビールって本当に利益が出るの?」と疑問をお持ちの事業者様もいらっしゃるでしょう。

 

本記事では、クラフトビールの利益率から、製造販売にかかるコスト、利益率を上げる方法まで詳しく解説します。
クラフトビールで利益を出し、事業を成功させたい方は、ご一読ください。

【目次】

クラフトビールとは

クラフトビールは、大手ビールメーカーが製造する一般的なビールとは異なり、少量生産だからこその個性的な風味が大きな特徴です。

 

「ここでしか飲めない」といった希少性があり、そこがクラフトビールの魅力であるといえます。
しかし少量生産であるがゆえに、クラフトビールの値段は、大量生産されたビールと比べると少し高めになってしまいます。

 

そんな値段の高いクラフトビールで、どのように利益を確保していけばよいのでしょうか?
以降で、詳しく説明いたします。

クラフトビールの製造販売における利益率

まず、クラフトビール事業における利益率について説明します。

 

利益率とは、売上全体のなかで、利益がどれくらいの割合を占めているかを表します。
たとえば、売上が100万円で、このうち利益が20万円の場合、利益率は20%です。
利益率は、以下の方法で算出します。

 

利益率(%)=(利益÷売上高)×100

 

クラフトビール事業では、20%もの利益率を達成することが可能といわれています。
これほどの利益率を達成できるのは、クラフトビールには希少性やブランド価値といった、高い価格設定でも売れる価値があるからです。

 

ただし、実際の売上高は、醸造所の規模や製造するビールの種類、販売ルートなど、さまざまな要因によって左右されます。
ですので、必ずしも利益率20%を達成できるわけではないことは、留意しておきましょう。

ほかの業態との利益率の比較

クラフトビールの利益率を把握したところで、飲食業界の一般的な利益率の相場も把握しておきましょう。
以下に、飲食店の業態別に利益率をまとめたのでご覧ください。

 

【業態別の利益率】

業態利益率
喫茶5~10%
バー
ファーストフード1~8%
ファミリーレストラン0.5~6%
居酒屋1~5%

上記の表を見ればわかる通り、クラフトビール事業の利益率は、ほかの業態よりも群を抜いて高いといえます。

 

ただし、この数値は先ほど説明したように理論値に過ぎません。
初期コストやランニングコストといった費用がかかることも、十分考慮しておきましょう。

クラフトビールの製造販売にかかるコスト

ここでは、クラフトビールの製造にかかるコストを詳しく解説します。
以下にポイントを7つまとめたので、参考にしてみてください。

➀原材料費

クラフトビールの製造には、麦芽、ホップ、酵母などの原材料が必要です。
麦芽は、ビールの香りや味のもととなる成分を形成し、ホップは、ビールに苦味と香りをつけ、酵母は糖をアルコールに変換する役割を果たします。
これらの原材料は、クラフトビールを製造するコストの大部分を占めます。

 

使用する原材料の品質や市場の動向により、価格が変動するので注意が必要です。

②設備費

原材料費と同じくらい重要といえるのが、醸造設備費です。
クラフトビール製造には、麦汁を作る“ブリューハウス”や、アルコール発酵を促す“発酵タンク”といった、ステンレス製のタンクが必要です。

 
一般的に、これらのタンクの購入費用は、1,000万~2,000万円ほどといわれています。
また、タンクほどではないものの、冷蔵庫、樽洗浄機、モルト粉砕機などの機器にも、購入時に費用がかかります。

③包装費

包装費にも大きなコストがかかることはご存じでしょうか?
設備費にばかり目が行きがちですが、包装費は売上高の約10%を占めるほど、コストがかかります。

 

たとえば、ビールの瓶ラベルに貼るシールの費用も包装費に入ります。
個性的なオリジナルビールを作る場合は、オリジナルラベルのデザインから、ラベル貼り、瓶詰めまでの費用が包装費としてかかることを念頭に置いておきましょう。

④賃料

クラフトビールを製造する際は、ブルワリーを開業するために必要な施設の賃料も発生
します。

 

クラフトビールを製造するための小規模なビール醸造所を、マイクロブルワリーといいます。
事業を運営するためには、このマイクロブルワリーを開業し、製造場所となる物件を借りなければなりません。

 

物件を借りる際の初期費用としては、契約金や保証金として、数か月分の賃料、礼金、仲介手数料などがかかります。
広さや立地、賃貸契約の種類によって、初期費用の価格は大きく変わってくるので、どのような店舗で運営するかを想定しておきましょう。

 

なお、マイクロブルワリーの規模によっては、小さいスペースでも問題なく設置できるため、安価なレンタルスペースで済む場合もあります。

⑤人件費

人件費とは、スタッフの労働に関わる費用全般を指します。

 

クラフトビールの製造には高い技術が必要となるため、経験豊富な醸造家や、ビールソムリエといった専門家を雇うかもしれません。
そういったケースでは、人件費がより高騰することも考えられます。

 

スタッフを雇用する前に、市場の平均賃金などを考慮して、適切な人件費の予算を立てておくことをおすすめします。

⑥広告宣伝費

自社のクラフトビールを効果的に売るためには、広告宣伝を活用する必要があるため、必然的に広告宣伝費も発生します。

 

たとえば、新しいビールの紹介や、ビールの製造工程の公開といったイベントは、クラフトビール業界でよく見られるブランディング企画ですが、少なからず費用がかかります。
また、インターネット上での情報発信や、SNSを利用したPRなどでも同様です。

 

消費者への認知度を高め、信頼を得るためにも、宣伝には惜しまずにお金をかけましょう。

⑦免許・許可取得の加入費用

クラフトビールを製造する際は、酒税法に基づき、“酒類製造免許”が必要です。
酒類製造免許を取得するためには、登録免許税が15万円かかります。
また、食品衛生法に基づく、“酒類製造業許可”も必要になり、取得時には1万9,000円の費用が発生します。

 

お酒の製造免許は、取得までに複雑な手続きが必要なので、事前の準備を欠かさないように気をつけましょう。

関連記事:クラフトビール醸造所の開業に活用できる補助金制度を紹介

クラフトビールの製造販売における利益率を上げる方法

ここからは、クラフトビールの利益率を上げる方法を解説します。

 

利益率を上げる方法の一つは、コスト削減です。
たとえば、クラフトビール製造における酵母管理は、見直す余地の多い要素です。
毎回、新品の酵母を購入するのではなく、製造過程の発酵及び熟成の段階で増殖した酵母の使用回数を増やせば、コストダウンにつながります。

 

そして、設備関連の見直しも有効です。
クラフトビール作りは設備産業といわれ、設備でクラフトビールの品質が大きく変わるといっても過言ではないため、基本的に設備への投資は惜しむべきではありません。

 

しかし、主要な設備以外のホースや配管継ぎ手などは、そこまで重要性が高くないので、汎用品にすることでコストを下げられます。
修理費やメンテナンス費などのランニングコストも考慮に入れ、「削減できるコストはとことん削る」くらいの意識をもちましょう。

 

利益率を上げるには、ブランディングも有効な方法の一つです。
クラフトビールは、個性的であることが強みですが、認知度が低ければ意味がありません。
そのため、ブランディングを強化して認知度を高める必要があります。

 

実例としては、ヤッホーブルーイングが販売している『よなよなエール』のブランディング施策が挙げられます。
工夫を凝らしたネーミング戦略や、野外イベント戦略により、よなよなエールの認知度は飛躍的に向上したのです。

 

徹底したコスト削減を行ったうえで、高品質な商品を作り、その商品をブランディングすることが、利益率を上げる最善の手段といえるでしょう。

クラフトビールの利益率を高め健全な経営を行おう

今回は、クラフトビールの利益率から、製造販売にかかるコスト、利益率を上げる方法まで解説しました。

 

少量生産で丹念に作られたクラフトビールは、小規模ならではの強みが売りで、一般的なビールよりも高い利益率を見込める可能性があります。
今回解説した利益率を上げる方法を用いて、クラフトビール事業を成功させましょう。

 

私たちマイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、クラフトビール事業に取り組むあなたを全力でサポートします。
醸造設備の販売から、施工管理まで含めたスタートアップ時の悩みを解決しますので、クラフトビール事業で成功したい方は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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