クラフトビール醸造所の開業に活用できる補助金制度を紹介
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- 2024.06.14
- 2024.11.01
近年、日本のクラフトビール市場は急速に拡大しており、人気も右肩上がりです。
なかには、クラフトビール事業に挑戦したいものの、初期費用がネックになっている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、積極的に活用したいのが、国からの補助金です。
本記事では、醸造所を開業するにあたって活用できる補助金制度を解説します。
最後までご覧になれば、賢くクラフトビール事業を始められるでしょう。
【目次】
- クラフトビール事業に利用できる補助金の種類
- 補助金申請時の注意点
- 補助金以外で資金を調達する方法
- クラフトビールの製造・販売にかかるコスト
- 国の補助金制度を活用して、クラフトビール事業を賢くスタートさせよう
クラフトビール事業に利用できる補助金の種類
クラフトビールの醸造所を開業する際は、国や地方自治体が制定した補助金制度を活用しましょう。
補助金制度とは、事業者の取り組みをサポートするために、資金の一部を給付するという制度です。
支給される補助金は、返済が原則不要であるため、資金調達の手段として活用しない理由はありません。
ただし、補助金の申請には一定の条件があるため、下調べして必要な申請書類を漏らすことなく準備する必要があります。
ここからは、具体的な補助金の種類と申請の流れについて解説します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、経済産業省が実施している補助金制度で、新規事業の立ち上げのみならず、既存事業を新たに立て直す際の経費の一部も補助してくれます。
本来は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会の変化に対応するために、中小企業への事業再構築を支援することが目的でしたが、2024年度もこの制度は継続されます。
補助対象となる経費には、設備導入費だけでなく、広告宣伝費なども含まれます。
中小企業が新たな事業を行う場合の補助金額は、100万~8,000万円で、補助率は1/2~2/3です。
補助金額や補助率は、応募枠や従業員の数、今後10年間で市場が10%以上拡大する業種であるかなど、さまざまな条件を加味して決定されます。
参照元:事業再構築補助金の概要
参照元:事業再構築補助金リーフレット
事業再構築補助金の申請の流れ
事業再構築補助金の申請の流れは、以下の通りです。
【事業再構築補助金の申請の流れ】
- GビズIDを取得する
- 事業計画書を作成する
- 必要書類を準備する
- 申請書を提出する
- 審査を受ける
- 補助金を受け取る
GビズIDは、電子申請システムを利用するにあたって必要となる、事業者向けの共通認証システムです。
申請はすべて電子申請で行われるうえに、このIDの取得には時間を要する場合があるため、早めにIDを申請するとよいでしょう。
また、忘れてはならないのが、事業計画書の作成です。
事業計画書の質が、補助金の交付を決定づける重要な要素となります。
2024年度からは、事業計画書の審査に新しくAI技術が導入され、より厳格に審査が行われる仕組みが整いました。
そのため、具体的かつ実現可能な事業計画書を作成することを意識してください。
なお、事業再構築補助金の採択率は、その年によって異なりますが、26~50%前後と幅があります。
2023年に行われた第11回公募では、採択率が26%と過去最低となっており、近年の予算の低下も相まって、必ずしも申請が通るわけではありません。
過去の採択率を参考にしつつ、事業内容を明確にして申請に挑みましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が、革新的な製品やサービスを開発する際に、一部の資金を補助してもらえる制度です。
日本のものづくり産業の競争力を高めることや、地域産業の発展を促すことを目的に制定されました。
業種に関係なく、生産性向上につながる設備の導入であれば補助対象となるため、クラフトビール事業も対象です。
一例を挙げると、富山県にある株式会社ブルーミンは、令和元年に地元の特産品を活用したクラフトビールの開発で、ものづくり補助金の対象事業者として採択されました。
金額の上限は、新設された省力化(オーダーメイド)枠であれば、750万~8,000万円で、補助率は1/2~2/3です。
ただし、これらは、従業員数や応募する部門によっても異なります。
なお、ものづくり補助金は毎年公募されていますが、毎年少しずつ内容が変わります。
対象となる事業や補助金額、補助率などは最新の情報に必ず目を通し、必要な書類を用意したら、期限内に忘れずに申し込みましょう。
参照元:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要項(18次締切分)1.1版
ものづくり補助金の申請の流れ
以下に、ものづくり補助金を申請する際の流れをまとめます。
【ものづくり補助金の申請の流れ】
- GビズIDを取得する
- 公募開始後、締め切りまでに申し込む
- 審査を受ける
- 交付決定後、交付申請を行う
- 実績報告を行う
- 確定検査を受ける
- 補助金を請求する
- 補助金の振り込みが行われる
- 事業化状況報告を行う
ものづくり補助金は、締め切りから交付決定後まではおよそ3か月、交付決定後から補助金が振り込まれるまでは、およそ10か月かかります。
そのため、補助金が支給されるまでには、申し込んでから最大で1年ほどかかることに留意してください。
事業化状況報告を万が一怠ってしまった場合は、補助金返還の対象となるため、ルールに従い必ず行いましょう。
補助金申請時の注意点
補助金を申請するにあたって、気をつけたいポイントが2点あります。
それは、「申請期限」と「書類の正確さ」です。
申請期限はホームページで必ず確認し、期限内に必要書類を準備して提出しましょう。
期限を過ぎてしまった申請は、一切受け付けてもらえません。
予定していた事業計画が狂ってしまうことも考えられますので、前もって行動するのが吉です。
また、書類の内容はすべて正確で、なおかつ最新のものである必要があります。
不正確な情報が含まれた書類を提出した場合には、のちに申請が却下される可能性があるので、内容に誤りがないか念入りに確認しましょう。
補助金以外で資金を調達する方法
補助金以外にも、クラフトビール事業の資金を集めるには、「融資」「クラウドファンディング」「投資」の3つの方法があります。
融資は、金融機関からお金を借りる方法です。
ただし、補助金とは異なり、返済義務があるため、利息も照らし合わせながら計画的に利用する必要があります。
クラウドファンディングは、個人や法人が立ち上げたプロジェクトに対し、不特定多数の方が資金を提供する仕組みです。
手軽で、マーケティングにも一役買うことから、活用してみてもよいかもしれません。
投資家から投資を受ける方法も、資金を調達する一つの手です。
融資とは異なり、返済する必要はありませんが、事業が成功した際に投資家に配当金を支払う必要があることを覚えておきましょう。
クラフトビールの製造・販売にかかるコスト
醸造所を開業する際は、補助金を活用できることがおわかりいただけたかと思います。
ここからは、実際にかかるコストにどのようなものがあるのかを解説します。
原料費
クラフトビールの製造には、第一に麦芽とホップ、酵母、水といった原料が必要です。
原料だけの価格でいえば、1Lのビールを造るのにおよそ100円かかるといわれていますが、これはあくまで平均値です。
使用する材料の品質や種類、市場の状況によっても価格は変わります。
なお、試作品の開発に必要な原料や副原料の購入に必要な経費は、ものづくり補助金の対象です。
設備費
ビールの醸造には、麦汁を作るためのマッシュタンや、麦汁を煮沸させるためのボイラー、発酵を行うファンメーター、ステンレス製タンクといった設備が必要です。
これらの設備をすべて揃えると、2,000万円ほどの費用がかかります。
さらに、冷蔵庫やモルト粉砕機、樽洗浄機などの設備も必要なので、初期費用にかかる金額はどうしても大きくなります。
ただし、この設備費は、事業再構築補助金やものづくり補助金の対象なので、制度を有効活用しましょう。
関連記事:クラフトビール醸造所の開業にかかる初期投資の目安は?
賃料
ブルワリーを開業するには、物件やスペースを借りるか、物件自体を購入して醸造場所を手配しなければなりません。
賃貸で借りる場合は、初期費用として礼金や仲介手数料、保証金が発生し、月々の家賃も支払う必要があります。
一方、物件を購入する場合でも、ローンを契約するとさまざまな費用が付随してかかります。
賃貸または、購入のいずれの場合でも、物件の規模によっては初期費用に100万円以上かかることも珍しくありません。
費用を少しでも抑えたいとお考えの方には、10坪以下の物件がおすすめです。
さらに、レアなケースですが、幸運にも内装や設備をそのまま引き継げる居抜き物件を見つけられれば、費用を安く抑えることもできます。
人件費
ビールの製造や販売を行うには、スタッフに支払う賃金、つまり人件費も必要です。
この人件費は、雇い入れる人数だけでなく、一人ひとりのスキルや経験、資格の有無でも大きく変わってきます。
たとえば、経験豊富な醸造師を雇う場合は、専門的な知識やスキルを保持しているので、それなりの賃金を支払う必要があります。
市場の平均賃金なども考慮して、適正な人件費を設定したうえで、予算をあらかじめ確保しておきましょう。
広告宣伝費
自社のクラフトビールをより多くの人に知ってもらうためには、PR活動が必須です。
宣伝には、さまざまな方法がありますが、どのような方法でPRするかによって費用が変わってくるので、ご自身に合った方法を選ぶとよいでしょう。
なお、広告宣伝費は事業再構築補助金の対象となるので、活用するのも一つの手です。
PRの一例には、「イベントへの出店」があります。
対面で、幅広く自社の商品を認知してもらう絶好の機会です。
出店料は、イベントによって異なりますが、なかには無料のものもあります。
また、SNSを活用すれば、費用をかけずにPRすることも可能です。
免許・許可の取得費用
お酒を製造するためには、酒税法に定められている「酒類製造免許」の取得が必要です。
クラフトビールを製造したい場合は、酒類製造免許に含まれる「ビール製造免許」または「発泡酒製造免許」のどちらかが必要です。
以下に、それぞれの免許の概要をまとめました。
【ビール製造免許と発泡酒製造免許の違い】
ビール製造免許 | 発泡酒製造免許 | |
年間製造量 | 60kL | 6kL |
麦芽使用率 | 原料の50%以上 | 原料の50%未満 |
副原料使用率 | 5%以下(承認された副原料のみ) | 5%以上 |
ご自身の作りたいクラフトビールに合わせて、どちらかを取得しましょう。
酒類製造免許は、ご自身で申請手続きを行いますが、取得する際に1件あたり15万円の登録免許税を支払う必要があります。
この手続きを、行政書士に委託する場合は、およそ10万~15万円の手数料が追加でかかることを覚えておきましょう。
さらに、酒類製造免許だけでなく、食品衛生法に基づいた「酒類製造業の営業許可」も取得しなければなりません。
新規の場合は、1万6,000円の申請手数料が必要です。
国の補助金制度を活用して、クラフトビール事業を賢くスタートさせよう
今回の記事では、クラフトビール事業を始めるにあたって活用できる補助金の種類を解説しました。
クラフトビール事業を始めるにあたって、さまざまな初期費用がかかるプロセスは、避けては通れません。
しかし、国からの補助金を活用すれば、一部の費用を抑えることができます。
必要書類を揃えて積極的に活用していきましょう。
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この記事の監修者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。