クラフトビールに欠かせないホップ!役割と代表的な種類をチェック
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- 2024.09.06
- 2024.11.01
クラフトビールに限ったことではありませんが、ビール造りの成功を左右するとも言えるのがホップです。
ですが、ビール造りに使われるものということは知っているものの、具体的にはよくわからない方が多いのではないでしょうか。
そこで、クラフトビール造りに使われるホップについて詳しく知りたいと考えている方のため、概要や役割、種類などを解説します。
本記事を読むことでビール造りをする上でよく理解しておきたいホップの基本がわかるので、より知識を深めたいと考えている方は、ぜひご一読ください
【目次】
クラフトビールに使用されるホップとは?
クラフトビールを作る上で必ず使用される原材料として挙げられるのが、ホップです。
アサ科のつる性の植物であり、緑色の松かさのような形をしています。
缶ビールのパッケージなどでイラストや写真を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
産地としては、クラフトビール大国として知られるアメリカのほか、ドイツ、エチオピアなどが挙げられます。
日本でも栽培されており、代表的な産地は岩手や秋田、山形などです。
詳しくは後ほど紹介しますが、香りや苦みをつけるほか、泡持ちを良くする、殺菌効果を高めるといった働きがあります。
そのクラフトビールならではの味わいを作るためにもホップが欠かせません。
関連記事:クラフトビール作りに欠かせない!ビールの5つの原材料
ホップが使われるようになった背景
ホップは、初めからビール造りをする際の原材料として使用されていたわけではありません。
もともとビール造りで使用されていたのは「グルート」と呼ばれる薬草などを配合したものです。
このグルートにはさまざまな配合があり、各地の領主や教会はそれらに対してグルート権と呼ばれる特許権を発行することで醸造業者からの徴税を財源としていました。
ですが、ホップが持つ腐敗防止効果などの働きに注目が集まり、味わいもグルートより上だったため徐々に主流になっていきます。
ただ、グルート権による醸造業者からの徴税を財源としていた領主らの抵抗もあり、すぐに受け入れられたわけではありません。
ですが、1516年になると、ビール純粋令として「ビールの原料は大麦、ホップ、水に限る」と定められ、ビール造りにおいて欠かせないものとなりました。
日本でも「麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの」がビールとされているので、クラフトビールを作る場合も必要になります。
ホップの役割
ホップには、重要な役割があります。
それは香りをつける、苦みをつける、泡持ちを良くする、殺菌効果を高めるの4つです。
それぞれ解説します。
香りをつける
クラフトビールといえば、製品によって大きく異なる香りが特徴的です。
いろいろビールを飲んでみたものの、特徴的な香りに魅かれてクラフトビールに興味を持ったという方も少なくありません。
この香りを生み出すために、ホップが欠かせません。
どの種類をどの程度入れるのかによっても香りが大きく変わります。
ホップの球花の花芯部分には小さくて黄色い粒である「ルプリン」と呼ばれるものがたくさんついています。
このルプリンが持つ精油成分がクラフトビールに香りをつけるために重要です。
ホップの中でも「アロマホップ」と呼ばれる種類は香り付けに特化しており、種類によって異なる香りをつけることができます。
ホップは苦味をつける目的で煮沸際にビールに投入されることになるのですが、香油は熱を加えることにより揮発し、香りが飛んでしまうのが特徴です。
そのため、苦みをつけるためのホップを煮沸したら、改めて香りをつける目的のホップを投入する形が一般的となっています。
また、さらに強い香りをつけたい場合はドライホップと呼ばれる製法により発酵段階でホップを加えることもあります。
苦みをつける
苦味もビールならではの魅力の一つといえるでしょう。
ホップの種類の中でも特に苦味をつけるのに特化しているのが「ビターホップ」や「ビタリングホップ」と呼ばれる種類に分類されるものです。
ビールを製造する際は、まず麦を麦芽(モルト)にし、粉砕します。
次に麦芽から麦汁と呼ばれるビールの元となるものを作り出すのですが、麦汁を煮沸する際にホップを投入することで香りと苦味が付きます。
どの程度の量と時間煮沸させせるのかによって苦味の付き方が変わってくるので、見極めが重要といえるでしょう。
苦味の元となるのも球花の中にあるルプリンです。
ルプリンには煮沸によってイソアルファ酸に変化して水に溶けやすくなるアルファ酸が含まれています。
イソアルファ酸が熱で変化することによりビールに苦味をつけることが可能です。
一般的には先にビターホップを投入し、その後に香り付けのアロマホップを使用します。
泡持ちを良くする
クラフトビールの泡には、炭酸が抜けるのを防いだり、苦味成分を和らげる、味わいを落とさないなどさまざまな役割があります。
ビールの泡は麦芽由来のタンパク質に覆われているのですが、このタンパク質とホップに含まれているイソアルファ酸が合わさることにより泡の強度を高めることが可能です。
また、気泡の表面をコーティングすることでなめらかな泡を作る役割もあります。
殺菌効果を高める
古くからビールの原材料としてホップが使われている理由の一つとして挙げられるのが、ホップが持つ殺菌効果です。
現在は冷凍機や殺菌法によって殺菌が可能ではありますが、こういった技術が開発される前はホップが持つ殺菌効果が重要視されていました。
殺菌効果によってビールが腐敗してしまうのを防ぐことが可能です。
例えば、ホップを大量に使ったビールとして「IPA(インディア・ペールエール)」があります。
このIPAは、イギリスからインドまでビールを運ぶ際にその保存性を高める目的で大量のホップを使用したのが始まりです。
クラフトビールで使用されるホップの種類
クラフトビール造りにおいて欠かせないホップは、どのような種類があるのでしょうか。
ここでは、代表的な3つの種類について解説していきます。
アロマホップ
アロマホップとは、強い香りを持つ特徴的なホップです。
香り付けに特化して使用され、シトラやモザイク、カスケード、シムコーなどの種類があります。
シトラ
シトラ(Citra)は、強い柑橘系の香りが特徴的なホップです。
人気が高く、グレープフルーツやライム、ベリー、メロン、パッションフルーツ、ライチのようなフルーティな香りをつけたい場合に使用されます。
強いシトラスの香りもあるので、複雑な香りのビールに使用されている種類です。
アメリカのアロマホップであり、さまざまなポップを交配させることにより誕生しました。
モザイク
モザイク(Mosaic)は、2012年にリリースされた新しいホップです。
ただ、非常に使いやすいことで知られており、すでに世界のクラフトビール造りにおいて幅広く使用されています。
産地はアメリカです。
まるでモザイク画のように複雑な香りが絡み合う特徴を持っていることから名付けられました。
多彩な香りをビールに与えたいと考えている場合に向いているでしょう。
パパイヤやラズベリー、グレープフルーツ、マンゴー、バラ、シトラスなどの香りがします。
苦味や風味、香味といったものを調整しやすいことから、万能なホップとしても知られる種類です。
カスケード
カスケード(Cascade)は、華やかな香りが特徴的なホップであり、アロマホップの中でも代表的な種類といえます。
アメリカのアロマホップで、さわやかな柑橘系の香りと、フローラルな華やかさを併せ持つのが特徴です。
グレープフルーツやスパイス系の香りが楽しめます。
苦みのバランスがとれており、飲みやすいビールに多く使用されている種類です。
シムコー
シムコー(Simcoe)もアメリカを産地としたホップであり、柑橘系の香りの中に土や草などの自然を思わせる香りを持つのが大きな特徴です。
もともとは苦味をつけるためにビターホップとして使用されていたのですが、古いティーな香りを活かしたアメリカンスタイルIPAでも使用されている種類です。
パッションフルーツや、ベリー系の香りも楽しめます。
ビターホップ
ビターホップとは、苦味をつける目的で使用される種類のことで「ビタリングホップ」とも呼ばれます。
ビールといえば製品によって異なる苦みがあり、それがうまさにもつながるので、非常に重要なホップです。
ヘラクレスやマグナムといった種類が代表的です。
ヘラクレス
ヘラクレス(Herkules)はドイツのビターホップであり、苦味だけではなくフルーティなアロマも持つのが特徴です。
草や花、大地といった自然を思わせる香りも持ちます。
もともとはエール系ビールに多く使用されていましたが、近年はアメリカンIPAなどにも使われることが増えました。
マグナム
マグナム(Magnum)は、ドイツのビターホップです。
ビタリングホップの中でも特に代表的な種類といえるでしょう。
マグナムに含まれている苦味成分はアロマを邪魔しないのが特徴です。
そのため、使用しやすいホップとして選ばれています。
ファインアロマホップ
ファインアロマホップとは、他の種類のホップと比較すると優しい香りを放つのが特徴です。
上品な品種ともいえるでしょう。
チェコのザーツが有名です。
ザーツ
ザーツはあまり苦味成分を含まない種類のホップであり、クリーンな苦みを持ちます。
何百年も前からビールに使用されており、花や大地、草といったアロマが特徴的な種類です。
日本生まれのホップ
ホップといえば海外原産のものが多いのですが、日本でもいくつかのホップが誕生しています。
中でも代表的なのはIBUKI、信州早生、MURAKAMI SEVEN、ソラチエースの4種類です。
日本は生まれのホップを使いたいと考えている方は、これらをチェックしてみてはいかがでしょうか。
IBUKI
IBUKIは、後述する信州早生を改良した「キリン2号」と、その変種「かいこがね」を総称するブランド名です。
キリンビールが契約栽培していますが、近年はキリンビール以外の醸造所で使用されることも増えています。
フローラルなアロマが特徴的です。
信州早生
信州早生は、1910年に誕生した信州早生です。
信州と名前がついていますが現在は日本中で栽培されており、レモンのようなフレッシュな香りを持ちます。
ビールの香り付けに使用される種類です。
MURAKAMI SEVEN
MURAKAMI SEVENは、キリンビールでホップの研究を行ってきた村上敦司氏が開発したホップです。
名前のSEVENは、7番目の畝にあったことが由来となっています。
イチジクやミカン、マスカットなどの特徴的な香りを持つ種類です。
ソラチエース
サッポロビールが1984年に開発した品種です。
ヒノキやレモングラスといった他の種類にはないような特徴的で個性的な香りが魅力です。
ただ、その個性の強さから日本では当時あまり受け入れられていませんでした。
ですが、アメリカに持ち込まれたあとにその良さが見いだされ、現在は人気のホップとなっています。
関連記事:ビール醸造におけるドライホッピングとは?
ホップによってビールの特徴が大きく変わる
いかがだったでしょうか。
今回はクラフトビールに欠かせないホップの役割や代表的な種類などについて解説しました。
種類によって特徴が異なるため、ビールの苦味や香りなどを決める非常に重要なものです。
オリジナルのクラフトビール製造を行いたいと考えているのであれば、ホップ選びにも力を入れなければなりません。
マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインではホップ選びやレシピ開発まで総合的にサポートが可能です。
基本的なことから専門的なことまででぜひご相談ください。
この記事の監修者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。