クラフトビール業界の現在の動向と将来へのアプローチを解説

近年のクラフトビールの人気には、目を見張るものがあります。

これから、クラフトビール業界に参入したいとお考えの事業者様からしてみれば、「人気はこのまま継続していくのか?」という点は気になりますよね。

 

そこで本記事では、クラフトビール市場の現在の動向とともに、将来に向けたアプローチの方法も解説します。

最後までご覧になれば、クラフトビール業界の将来性が明確になるでしょう。

【目次】

クラフトビール業界の成長率

日本では近年、発泡酒や第3のビールを含むビール類の売上が減少していますが、そのなかでもクラフトビールのシェア率は年々増加し、売り上げも伸びています

これには、1994年に改正した酒税法が背景にあります。

 

この法改正では、ビールの製造免許を取得するために定められている年間最低醸造量が、2,000kLから60kLに大幅に引き下げられました。

大手メーカーの寡占状態が続いていたビール業界に、小規模事業者が参入しやすくなり、全国に小さな醸造所が増えたのです。

 

一時はこのブームが過ぎ去り、クラフトビールの“冬の時代”が到来しましたが、生き残った醸造所が、独自性のある高品質なビールを製造しつづけました。

その結果、クラフトビールは大手メーカーのビールとは異なる個性的な風味と、種類の多さから、ビール愛好家やトレンドに敏感な若者に支持され、売り上げを伸ばしています。

 

2024年現在は、全国で800か所以上の醸造所が稼働しており、クラフトビールの人気は飛ぶ鳥を落とす勢いといってもよいでしょう。

 

参照元:ビール類市場規模とクラフトビール市場構成比 推移 – 日経ビジネス

クラフトビール業界の近年のトレンド

勢いが止まらないクラフトビール業界ですが、他社と差別化を図るためには、トレンドを盛り込む必要があります。

以下で、具体的な例を挙げて解説します。

新しいフレーバーとスタイル

クラフトビール業界では、新しいフレーバーの開発とスタイルの確立が日々進んでいます。 

 

岩下の新生姜を製造する「岩下食品株式会社」とクラフトビールメーカー「サンクトガーレン」が共同開発し、販売している「NEW GINGER BEER」を一例に挙げましょう。

日本の生姜を使用したこのビールは、辛みと酸味が爽やかな風味を生み出しています。

 

「従来のフルーティーなクラフトビールとは異なる意外性を提供している」と国内外問わず、ビール愛好家から高い評価を受けているのです。

地域性を活かした醸造

地域性を活かしてビールを醸造することは、近年のクラフトビールのトレンドを語るうえで欠かせません。

 

これまでに製造されてきた数多くのビールは、地元の特色や伝統を反映しており、ひと口飲めばその地域の文化や風味を舌で感じることができるでしょう。

例を挙げると、青森県にあるBe Eazy Brewingでは、看板商品である「青森エール」を製造し、原料に地元で産まれたりんごやカシスを使用しています。

 

この地元の食材を生かした風味には定評があり、ビールの国際品評会で数々の賞を受賞しています。

さらに、フルーティーな味だけでなく、商品のネーミングも注目すべきポイントです。

商品の多くに、「くちゃべる(おしゃべり)」「のっつど(たくさん)」といった津軽弁のユニークな名前をつけて、インパクトを出しています。

 

このように、味覚だけでなく、視覚からもその土地の特徴を感じられる商品を生み出すことで、消費者に「飲んでみたい!」という気持ちを抱かせられるはずです。

サスティナビリティへの取り組み

クラフトビール業界もサスティナビリティへの追い風を受けて、進歩しつつあります。

具体的には、環境に優しい製法や、リサイクル可能なパッケージを取り入れるといったことです。

 

地元の農家と協力してオーガニックな原料を使用した商品を販売する醸造所も数多くあります。

長野県白馬村で製造されている「CRUST LAGER」は、国内の工場から提供される、廃棄予定のパンを使用したサスティナブルなクラフトビールです。

 

食品ロスとなる余剰食品をビールにアップサイクルし、日本の食料問題の改善に取り組んでいます。

 

このような活動は、サスティナビリティを重視する現在のトレンドに合致していることから、取り入れていく醸造所が増えていくでしょう。

クラフトビール業界の課題

市場の盛り上がりが衰えないクラフトビール業界ですが、改善の余地があるのも事実です。

ここからは、クラフトビール業界が抱えている課題について解説します。

認知度が低い

大手ビールメーカーが販売するビールと比較して、スーパーやコンビニで見かける機会が少ないクラフトビールは、あまり認知されていない傾向にあります。

 

“目新しいものが好き”といった感度が高い方や、ビール愛好家のなかでは熱烈な支持があるクラフトビールも、世間一般からしてみれば、馴染みが薄いのです。

そのため、自慢の味のビールを製造しても認知されなければ、なかなか売れないかもしれません。

 

したがって、積極的にPRし、徐々に認知度を上げていくのが有効です。

競争率が高い

現在日本国内には、800か所以上のクラフトビール醸造所が存在し、ブームによって今後も増えつづけると予想されることから、激しい競争は免れません。

他社と差別化を図れるような強みがないと、その他大勢に埋もれてしまい、生き残っていくのは困難を極めます。

 

そのため、地元の特産品を原材料に入れてプレミアムな味を演出したり、ユニークなコンセプトを打ち出したりして、ほかとは違う商品を開発することが重要になります。

資金調達が難しい

クラフトビールを製造するメーカーは、大手ビールメーカーに比べて規模が小さいので、設備投資や広告宣伝費などといった多くの費用が必要です。

 

しかし、金融機関からの融資が難しい場合も多々あり、「クラフトビールに挑戦したい」と意気込んだ方の頭を悩ませています。

 

クラウドファンディングや、国や自治体からの補助金制度の活用で、賢く資金を集める必要があります。

関連記事:クラフトビールビジネスで廃業しないための方法を解説

今後のクラフトビール業界で意識したいこと

クラフトビール業界の課題を把握し、今後に活かしていくためには、どのような取り組みが大切になってくるのでしょうか?

若年層へのアプローチ

株式会社マクロミルが行ったビール消費に関する調査では、クラフトビールを支持し、実際に嗜んでいるのは、若年層だという結果が出ました。

 

この調査結果から、若年層へのアプローチには、若い世代に向けた商品の開発や、PRが有効であると推測できます。

さらに同調査では、若年層が“苦みの少ない、甘いビール”を求めていることも明らかになりました。

 

そのため、一般的なビールにはない“甘さ”や、“フルーティーさ”を追求できると、若者のニーズに応えられる商品を生み出せるかもしれません。

 

また、クラフトビールは、大勢の方が来場する音楽フェスやスポーツ観戦と相性が良く、このような会場に出店できれば、多くの消費者に認知してもらえる可能性が高まります。

特に、「映える!」と商品が話題になれば、SNSに投稿してもらえるので、不特定多数の方に拡散され、認知度の向上が期待できます。

 

SNSでのPRも、若者のトレンドをくみ取った投稿ができるとよいでしょう。

クラフトビールを支持する若年層のニーズに応える商品の開発と、彼らに向けたSNSでの宣伝活動が、クラフトビールを手に取ってもらうきっかけになるのです。

 

参照元:今、Z世代が求めるビールとは?【ビール消費に関する実態調査】- マクロミル公式note

海外への展開

近年、「Made in Japan」の品質と個性が、世界で高く評価されています。

世界中のビールが集結するワールドビアカップや国際品評会では、ここ数年で日本のクラフトビールが多数受賞しています。

 

日本ならではの個性や地域性を前面に出したビールは、クラフトビールの文化が根付くアメリカやヨーロッパだけでなく、新市場のアジアまで進出、拡大しているのです。

 

ここで、海外に進出した日本のクラフトビールメーカーの一例を紹介します。

茨城県那珂市にある木内酒造の「常陸野ネストビール」は、海外のコンテストで数多くの受賞歴がある看板商品です。

さらに、古代米を用いた「レッドライスエール」や、日本ならではの柚子を使用した「セゾンドゥジャポン」といった海外を意識したビールの展開にも力を入れています。

 

木内酒造のように、日本に限らず、海外にもビールの品質やこだわり、地域性をアピールできれば、日本のクラフトビール業界を明るくする存在になれるでしょう。

クラフトビール業界のトレンドを反映し、若年層のニーズに応えた商品を開発するのが成功の鍵

今回の記事では、クラフトビール業界を取り巻く現在の動向や、トレンド、今後の課題を一挙に解説しました。

 

まだまだ市場が拡大すると予想されるクラフトビール業界では、近年のトレンドや、若者のニーズを取り入れた商品の開発が、今後も成功していくポイントといえるでしょう。

また、海外の市場にも視野を広げて、Made in Japanをアピールし、新しく市場を開拓するのも一つの戦略です。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、ブルワリーコンサルティングを行っていますので、近年のトレンドを掴んだクラフトビール造りを一緒に叶えることができます。

醸造設備から施工工事まで、トータルでサポート可能ですので、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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