ビール製造に欠かせない発酵工程を確認!代表的なスタイルの種類は?

ビール製造を行ううえで必要になるのが発酵です。

日本人は古くから発酵食品を取り入れているため身近なものともいえますが、発酵についてよくわからない方もいるのではないでしょうか。

 

そこで、本記事ではビール製造に詳しくなりたいと考えている方のため、ビールの製造工程や発酵工程、ビールのスタイルなどを紹介します。

この記事を読むことで発酵の方法やビアスタイルの種類などがわかるようになるので、ぜひご覧ください。

 

【目次】

ビールの製造工程をおさらい

まずはビール製造がどのような工程で行われることになるのか確認しておきましょう。

代表的な工程は以下の通りです。

 

【主な工程】

  1. 製麦:ビール製造に必要な大麦を水に付けて発芽させ、焙燥工程で乾燥させる
  2. ミリング:麦芽に含まれているデンプンがお湯に溶けやすくなるように大麦を細かく砕く
  3. 仕込み:麦汁を作るため大麦を温水と一緒に煮込み、濾過する
  4. 発酵:麦汁を発酵させる。発酵段階でホップを入れることもある
  5. 熟成:麦汁を発酵槽へ移し、熟成させる
  6. 充填:濾過を行ってから商品を販売できる状態にするため瓶や缶に充填する

発酵は、仕込みの段階と発酵・熟成の段階で行われていくことになります。

ビールの味を左右する重要なポイントです。

そもそもビール酵母とは?

ビールを製造する際に使われるのが「ビール酵母」です。

酵母とは微生物の一種であり、直径は5~10μmしかありません。

1μmが0.001mmなので、いかに小さいかがわかるでしょう。

 

酵母は、糖分を餌にすることで麦汁をアルコールと炭酸ガスに分解することが可能です。

この働きを発酵と呼びます。

酵母にはさまざまな種類があるのですが、ビール酵母とはこれまでに繰り返しビールの醸造で使われてきてビール製造に向いた特性を持つようになった酵母のことをいいます。

ビール酵母だけを見ても、その数は何万種類ともいわれています。

 

ビール製造では酵母だけではなく、原料や副原料、発酵の方法などを工夫することでさまざまな味や香りを持つビールに仕上げることが可能です。

ただ、やはりビール酵母が与える影響は大きいので、製造する際はどの種類を採用するのか慎重に検討しなければなりません。

ビールの発酵工程

ビールの発酵工程は大きく分けて上面発酵、下面発酵、自然発酵の3種類です。

それぞれの特徴を紹介します。

上面発酵

上面発酵とは、発酵する際に酵母が上面に浮かんでくる特徴を持ちます。

20度前後まで麦汁を冷却し、そこに酵母を加えて発酵させていきます。

発酵に必要な期間は、3~6日ほどです。

 

発酵が進むと酵母は炭酸ガスとともに表面に浮いてきます。

この上面発酵で作られたビールが「エールビール」と呼ばれる種類です。

フルーティーな香りと深い味わいがあります。

下面発酵

下面発酵とは、5度前後まで麦汁を冷やして、ゆっくりと発酵させる方法です。

発酵が進むにつれて酵母は底の方に沈んでいくことになります。

上面発酵よりも発酵にかかる期間は長く、約7~10日必要です。

 

下面発酵で作られたビールは「ラガービール」に該当します。

ラガービールはすっきりしていてゴクゴク飲みやすく、喉越しの良いのが特徴です。

一般的に日本で製造されているビールはほぼラガービールです。

 

関連記事:下面発酵と上面発酵の違いと各発酵方法でつくれるビールの特徴

自然発酵

培養した酵母を使用するのではなく、自然界に存在している酵母や微生物の力を借りて自然発酵させる種類です。

空気中に漂っている野生酵母などによって発酵を促します。

主にベルギーで採用されている発酵工程です。

【発酵方法別】ビールのスタイル

ビールのスタイルはビアスタイルと呼ばれ、さまざまな種類があります。

ここでは、上面発酵ビールと下面発酵ビールの中でも代表的なスタイルと、自然発酵ビールについて特徴を紹介します。

上面発酵ビール

フルーティーな味わいが楽しめる上面発酵ビールは、エールとも呼ばれる種類です。

主なスタイルとして、IPA、ヴァイツェン、スタウトがあります。

IPA

IPAは、イギリス生まれのビールです。

「India Pale Ale(インディア・ペールエール)」の頭文字を取って「IPA」と名付けられました。

本国から植民地のインドにビールを輸送するにあたり、問題となっていたのが途中でビールが傷んでしまうことです。

 

そこで、アルコール度数を高め、防腐効果を持つホップも大量に投入することによって腐りにくくしたビールの製造方法を考えました。

IPAには大量のホップが使われていることから、一般的なビールと比較して香りと苦味が強めに出ます。

世界中で定番といえるビアスタイルということもあり、さまざまな派生スタイルがあるのも特徴です。

 

関連記事:クラフトビールの種類「IPA」とは?特徴やおいしい飲み方を確認

ヴァイツェン

ヴァイツェンは、ドイツ発祥のビールです。

材料には小麦が50%以上使われており、スタイルの名前である「ヴァイツェン」はドイツ語で「小麦」を意味する言葉でもあります。

 

バナナのようなフルーティーな香りがあり苦みがあまり強くないので、苦いビールが好みではない方でも飲みやすいでしょう。

味わいはスッキリしていて飲みやすさを感じさせます。

 

日本でも人気のビアスタイルで「白ビールといえばヴァイツェン」といえるような代名詞的存在です。

作り手によって特徴が大きく異なることも多い種類といえます。

スタウト

「ポーター」と呼ばれるイギリス発祥のビールがあるのですが、このポーターがアイルランドにわたり改良されたビアスタイルがスタウトです。

黒ビールとして知られており、色合いが黒くなるのは原料として麦芽化していない大麦をローストしたものが使われているからです。

 

当時、麦芽には税金がかけられていました。

そこで考えられたのが、麦芽化していない大麦を使う方法です。

税金対策の目的で開発されたビールといえます。

 

スモーキーな味わいが特徴的で、飲み口はドライです。

派生スタイルとしては甘めのミルクスタウト、アルコール度数が高いインペリアルスタウトなどがあります。

下面発酵ビール

スッキリとした味わいが特徴的な下面発酵ビールは、ラガービールと呼ばれる種類です。

代表的なビアスタイルとして、ピルスナー、アメリカンラガー、デュンケルなどがあります。

ピルスナー

ラガービールの中でも特に代表的といえるのが、ピルスナーです。

日本でも広く飲まれているのはこちらのピルスナーに該当します。

 

一般的にビールと聞いてイメージする黄金色の輝きが特徴的で、クリーミーな泡と強調しすぎないホップの香りと苦味があることから多くのファンがいます。

喉越しの良さを感じられるので、ゴクゴク飲めるタイプのビールを探している場合に向いているでしょう。

 

また、ビールによって特徴を強く感じられる温度帯が変わるのですが、ピルスナーはキンキンに冷やして飲んでも良さを感じられるビアスタイルです。

鶏のから揚げのように脂っこい料理との相性もよく、居酒屋でも定番のビールとなっています。

アルコール度数はそれほど高くないので、ビール初心者にも向いている種類といえるでしょう。

アメリカンラガー

アメリカンラガーは、アメリカの地ビールに多いビアスタイルです。

アルコール度数はそれほど高くありません。

苦味も強くないことから飲みやすく、ピルスナーと同様にビール初心者の方も挑戦しやすいビアスタイルといえるでしょう。

 

原料にはお米やトウモロコシが使われることもあり、甘みを感じさせます。

また、炭酸も強く、特に夏の暑い日などはキンキンに冷やしたアメリカンラガーでスッキリしてみてはいかがでしょうか。

アメリカンラガーを飲む際のグラスは、細身のピルスナーグラスが向いています。

 

冷やすと特においしいビアスタイルなので、大容量のグラスではなく、注いですぐに飲みきれる程度の小さめのグラスを選ぶと良いでしょう。

デュンケル

デュンケルは、南ドイツ発祥のラガービールです。

ドイツ語で「暗い」という意味を持つ「デュンケル」が名付けられているのは、見た目によるものです。

 

ブラウンからダークブラウンの見た目が特徴的で、モルトの豊かな風味を楽しめます。

アルコール度数は5%前後です。

自然発酵ビール

一般的にビールを熟成させる際には空気中の酵母などが入らないように注意するのですが、あえて空気中や土などに生息している野生酵母の力を利用しているのが自然発酵ビールです。

もともと、酵母が発見される前のビール製造は、自然発酵が一般的でした。

 

自然発酵ビールは、通常の上面発酵・下面発酵で行われるような麦汁を冷やすことは行いません。

常温で時間をかけて発酵させていくのが大きな特徴です。

味でいうと、非常に酸味が強く出ます。

 

そのため、それほど苦味や酸味が強くない飲みやすさを感じさせるビールに慣れている方は驚いてしまうことでしょう。

ですが、その酸味の強さが癖になると感じる方も多いようです。

中には酸味を和らげる目的で果物をブレンドして甘酸っぱく仕上げたものもあります。

 

一般的なビアスタイルに飽きてしまった方も自然発酵ビールを楽しんでみてはいかがでしょうか。

ひと味違ったクラフトビール製造に挑戦したい方にもおすすめです。

ビール以外のお酒も発酵によってつくられる

発酵の働きが使われているのは、ビールだけではありません。

そもそも、お酒は基本的にすべてアルコール発酵によって作られる飲料です。

 

例えば、ビールは醸造酒に該当するのですが、他にも同じく醸造酒に分類されるワインや日本酒なども原料に酵母を加え、糖を分解することによってアルコールと炭酸ガスを生成します。

その醸造酒を蒸溜してアルコール度数を高めたのが、ウイスキーや焼酎などの蒸溜酒です。

 

また、醸造酒や蒸溜酒にその他の原料を加えて味わいや香りを変化させた混成酒もあります。

このようにてすべてのお酒の元とも言えるのが醸造酒です。

醸造酒を製造する際には発酵の工程が必要であるため、どのお酒も発酵の工程を経て作られていることになります。

ビールの発酵工程は奥が深い

いかがでしたか?

ビールの発酵工程の種類や、ビアスタイルについて紹介しました。

 

ビールを製造する上で発酵は重要な役割を持っており、ビールの味わいや香りとも深く関係しています。

非常に奥が深いので、クラフトビール製造で難しい部分であり、かつ面白い工程ともいえるでしょう。

 

これから新規に醸造所の立ち上げや規模拡大を検討している方は、弊社までご相談ください。

現役醸造家がビール製造をサポートしています。

醸造設備の導入全般に対応しているほか、導入後のサポートも可能です。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備や施工工事だけでなく、酸化防止策の導入や溶存酸素管理のサポートも行っています。ビールの品質向上を目指す事業者様は、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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