醸造所でのビール保管方法は?注意点と保管方法を決める基準について

ビールの醸造所立ち上げを検討されている方に向けて、醸造所でのビール保管方法について解説します。

醸造所を立ち上げるにあたって、必ず知っておきたいことがビールの保管方法です。

 

お酒は正しく保管しなければ、劣化して風味が変わってしまうこともあります。

保管できる期間や、賞味期限が切れてしまった場合のことも気になるでしょう。

 

そこで今回の記事では、醸造所でのビール保管方法について詳しく解説します。

参考にしていただければ、保管するうえでの注意点や正しい保管方法についてご理解いただけるはずです。

 

【目次】

クラフトビール醸造所でのビール保管の注意点

それではまず、クラフトビール醸造所におけるビールの保管方法について見ていきましょう。

良い状態で保管するには、次の3つの注意点があります。

注意点1:日光を当てない

ひとつめは日光に当てないことです。

ビールは日光に当てると香りが変わってしまうことがあります。

 

スカンクのような香りが発生するため、日光があたる場所での保管は厳禁です。

大手メーカーから販売されているビールが、茶色の遮光瓶に入れられていることが多いのも日光を避けるためでしょう。

 

冷蔵庫に入れるとしてもガラスの扉であれば、終日中、日光があたらない場所に設置してください。

注意点2:温度管理をする

ビールをおいしく飲むには、温度管理を徹底することも重要です。

冷えていれば良いわけではなく、適切な温度で保管をする必要があります。

 

基本は冷蔵保存です。

しかし種類によっては、冷蔵庫から出してしばらく経ってから提供したほうが、風味が増すものもあります。

 

クラフトビールの種類によって、適切な温度と保管方法を把握しておくとよりおいしく飲めるようになるはずです。

 

関連記事:発酵温度がビールに与える影響とビールの発酵に適した温度

注意点3:振動を与えない

最後に、振動を与えないことです。

ビールに振動を与えると、味わいが不安定になってしまいます。

 

もし振動が与えられてしまったら、1日程度、冷蔵庫で保管して落ち着かせてから飲むようにしてください。

炭酸や味わいに変化が出ると、ビールのおいしさが損なわれるものです。

 

なるべく静置した状態で保管することをおすすめします。

 

関連記事:クラフトビールがまずいといわれる理由は?選び方のポイントを確認

【常温or冷蔵】クラフトビールの保管方法を決める基準

醸造所にてクラフトビールの保管方法を決める基準は、「要冷蔵」であるかどうかです。

「要冷蔵」ではなければ、酵母が含まれていないため温度管理は不要となります。

 

しかし「要冷蔵」と記載されているビールは、冷蔵庫での保管が基本です。

要冷蔵であるかどうかの違いは、ビールに生きた酵母が含まれているかにより変わります。

酵母が含まれるビールでは温度管理が不十分であると、ビールに含まれる酵母が動き始めてしまいます。

 

そして味わいが変わってしまうことも珍しくないでしょう。

しかし生きた酵母が含まれないビールでは、酵母の動きによる味わいの変化はありません。

 

要冷蔵であるかどうかを判断基準として、クラフトビールの保管場所を決めてください。

ビール酵母の役割とは

クラフトビールに含まれる酵母は、糖とアルコールを分解させる働きを持ちます[1]。

製造過程では「麦汁」と呼ばれる液に、ビール酵母を含ませて、発酵させることによってビールが誕生します[1]。

 

そのため酵母の動きによってビールの味わいは変化。

分解の過程によってビールにとって重要な香味が生成されるためです[1]。

 

またビール酵母にはビタミンB・D、鉄分、タンパク質、食物繊維などの栄養素が含まれます[2]。

無濾過ビールに限られますが、ビール酵母には人の体に栄養素を送り込む役割もあると言えるでしょう。

[1]

参照:JSTAGE:(PDF)ビールつくりの主役:ビール酵母の特徴と発酵力の鍵

[2]

参照:厚生労働科学研究成果データベース:(PDF)ビール酵母

ビールの劣化と熟成

ビールは醸造所での保管方法によって、劣化することもあれば熟成されることもあります。

劣化と熟成は紙一重ですが、劣化すると風味が悪くなり、熟成されるとまろやかになることが違いです。

 

劣化と熟成の違いは、ビールの種類によって異なります。

種類によってどのように違うのか、ビールごとの特徴について見てみましょう。

 劣化しやすいビール熟成されやすいビール
アルコール度数アルコール度数が5%前後アルコール度数が10%前後
香りホップの香りが際立つ苦みや酸味が強い
味わい味わいがさっぱりとしている味わいに甘みがありふくよか

以上のように、ドライでさっぱりとしたタイプのビールは、時間経過を重視せず早く飲んだほうがおいしいでしょう。

 

しかしふくよかで味わい深いタイプであれば、熟成させたほうが味わいが増すかもしれません。

劣化も熟成も、いずれもビールの中で成分が変化していることは同じです。

 

しかし時間経過を経るべきビールなのか、早く飲むべきビールなのかを見極めることにより、お酒自体のおいしさをさらに引き立たせられます。

クラフトビールの賞味期限

クラフトビールは長期保管には向かず、賞味期限が短く設定されています。

一般的なビールが1年ほどであるのに対して、クラフトビールは30~100日が一般的です。

 

賞味期限が短い理由は、酵母が動き続けているため。

醸造所での保管方法いかんによっては、味わいが変わってしまうことがあります。

 

そのためクラフトビールはできる限り早めに出荷しなければなりません。

賞味期限が切れたクラフトビールの活用法

もしクラフトビールの賞味期限が切れてしまったら、次のような用途で使用してみてください。

【活用法】

  • 肉料理に使う
  • 植物を育てるための肥料にする
  • 掃除のために活用する
  • スキンケアアイテムとして使う

ビールは飲むだけのものではありません。

 

料理に使えばお肉を柔らかくしてくれますし、肥料にすれば植物が育つための栄養素となります。

油汚れを落とす作用があったり、スキンケアのためのフェイスマスクにしたりなどさまざまな用途があるものです。

 

賞味期限が切れてしまったクラフトビールがあれば、飲用以外に活用してみてはいかがでしょうか。

醸造所ではビールの保管方法に細心の注意を

いかがでしたでしょうか?

この記事を読んでいただくことで、醸造所でのビールの保管方法についてご理解いただけたと思います。

 

クラフトビールは酵母が含まれている繊細なものです。

そのため適切な温度・環境にて保管されなければ味わいが変わってしまうことがあります。

 

 マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備や施工工事だけでなく、酸化防止策の導入や溶存酸素管理のサポートも行っています。ビールの品質向上を目指す事業者様は、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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