クラフトビールビジネスで失敗しないためには?

近年、魅力あるクラフトビール醸造所が数多く誕生し、若年層からの人気を博しています。
選ばれつづける醸造所を立ち上げるには、どう計画を立てればよいのか、事業者の方の悩みは尽きないのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、クラフトビールビジネスが失敗する要因や、軌道に乗せるポイントをご紹介します。
「事業計画を立てるうえで、失敗する要因を知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】

クラフトビールの概要とトレンド

クラフトビールの定義は、「小規模な醸造所で作られる、地域性や個性が際立つ豊富な種類を持つビール」です。

 

クラフトビールは、これまで「地ビール」として親しまれていました。
1994年の酒税法改正に伴い、参入コストが下がったことで、日本全国で地ビールブームが起こり、地ビールは各地に広まったのです。

 

しかし、醸造技術が不十分な状態で地元の特産物を無理に使用し、品質が低かったことが起因して「地ビールはおいしくない」と認識され、ブームは下火を迎えます。
新規に開業した醸造所は、醸造技術を鍛えて、名称を地ビールからクラフトビールに改めたことで、再び支持を得るようになりました。

 

最近では、抹茶や柚子など、日本の伝統的な食材やスパイスを取り入れたクラフトビールが、人気を集めています。
また、環境に優しい製法でクラフトビールを作ったり、地域の農家と連携して、オーガニックな原材料を使ったり、といったサステナビリティへの取り組みも進められています。

クラフトビールビジネスが失敗してしまう理由

せっかく製品の原料やコンセプトにこだわっても、利益を出せずに事業が継続できなければ意味がありません。
ここからは、クラフトビールビジネスで失敗する要因を3つに分けて、ご紹介します。

資金不足

クラフトビールビジネスが失敗する要因でもっとも多いのは、資金不足だといわれています。
クラフトビール醸造所の初期投資として、醸造設備費用や建設設備費用などがかかりますが、醸造所が軌道に乗るまでのランニングコストも、考慮しなければなりません。

 

資金の調達方法としては、銀行からの融資や国からの助成金、クラウドファンディングの活用などが挙げられます。
また、資金を増やすだけでなく、内装のDIYなど、コストを削減することも視野に入れましょう。

市場のレッドオーシャン化

クラフトビール市場のレッドオーシャン化も、クラフトビールビジネスが失敗する要因の一つです。
2023年12月時点で、クラフトビール醸造所の数は全国で805か所です。
クラフトビール市場は、参入コストが低減されたことにくわえて、観光マーケットとインバウンド消費により、お土産の需要が高まったことで、さらに拡大しています。

 

参加するクラフトビール醸造所が増えるほど、フレーバーやラベルデザイン、価格、生産技術を駆使した差別化を図ることや、革新的な製品を開発することが求められます。

認知度が低い

価値ある製品を販売しても、認知されなければ販売数を大幅には増やせませんので、宣伝広告にも力を入れましょう。

 

株式会社ヤッホーブルーイングが、2018年に実施した調査によると、クラフトビールの飲用動機は、4人に1人が「口コミ」であることを挙げています。
また、飲用動機のなかでも「家族・友人・知人に勧められた」という方が、もっとも多いことがわかりました。

 

クラフトビールのコンセプトに、地域の素材や魅力を取り入れるなど、ソーシャルメディアや地元メディアと連携した情報発信を通して、口コミによる評判形成を図りましょう。

 

参照元:株式会社ヤッホーブルーイング クラフトビールに関する調査結果

クラフトビールビジネスを軌道に乗せるポイント

前述したクラフトビールビジネスにおいて失敗する要因を踏まえて、事業計画を立てるうえで、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

クラフトビールビジネスを軌道に乗せるポイントを、大きく2つに分けてご紹介します。

ポイント①集客の見込みと回収年数を考える

事業計画を立てる際は、集客の見込みと、何年で初期投資費用を回収できるのか「ROI(投資回収率)」を使ってシミュレーションしましょう。

 

計算式は、「初期投資によって得られる利益÷投資額」です。
投資した初期投資費用に対して、いくら利益を得られるのかを把握できれば、醸造設備費用などの予算が立てやすくなります。

 

シミュレーションによって、醸造設備費用の予算に対して、十分な利益を回収できないことが判明した場合は、「シェアリングブルワリー」を活用するなど対策を立てましょう。
シェアリングブルワリーは、ビール醸造者が共同で利用できる醸造所を指します。
期間限定のクラフトビールを開発したい場合にもおすすめです。

ポイント②ブランディングを強化する

ブランディングは、全体のコンセプト設計だけでなく、ラベルデザインや販売方法にも反映させることが重要です。

 

特に販売方法については、どうブランディングすればよいのか思いつかない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
前提として、クラフトビールは、消費者に直接販売する直販が主流です。
この直接販売には、ブルワリー内のタップルームでの販売や、地域イベントへの出店、オンライン販売も含まれます。
地域イベントやフェスティバルへの参加を通して、地元のコミュティのなかで、顧客と直接交流を図ることで、ファンの獲得と維持に成功した事例もあります。

 

また、ブランディングにおいて、自社の製品がどのように作られたか背景や魅力を伝えるストーリーテリングは、消費者に興味を持ってもらう効果的な手段です。

このように、ターゲットのライフスタイルや、価値観の変化に対応したブランディングを検討しましょう。

関連記事:日本におけるクラフトビールの売上の傾向を解説

クラフトビールビジネスで失敗しないために、入念な事業計画とブランディング強化を

今回は、クラフトビールビジネスが失敗する要因や、軌道に乗せるポイントをご紹介しました。

 

クラフトビールビジネスが失敗するのは、資金不足や市場のレッドオーシャン化、認知度の低さなどが要因です。
ポイントとしては、事業計画において集客の見込みと回収年数を考える、ブランディングを強化することが挙げられます。
市場に合わせたブランディングを通して、他社との差を広げましょう。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、ビール醸造所のスタートアップに関する、皆さまからのご相談をお待ちしております。
ビールの醸造機器の設計や醸造士育成プログラムの実施まで、あなたの生み出す“おいしい”を、全力でサポートします。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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