クラフトビールの種類「IPA」とは?特徴やおいしい飲み方を確認

世界中には多くのビールスタイルがあり、その中の一つとして挙げられるのが「IPA(アイピーエー)」です。

クラフトビールの中にもIPAスタイルで作られているビールが多くあります。

ただ「IPAとはどのような種類?」といった疑問を持っている方もいるでしょう。

 

そこで、本記事ではIPAについて詳しく知りたい方のため、特徴や押さえておきたい種類、おいしい飲み方などについて解説します。

相性の良い料理などもわかるようになるので、ぜひご覧ください。

 

【目次】

ビールの種類

まず、ビールの基本から押さえておきましょう。

ビールは、大きく分けると「ラガー」と「エール」の2つに大別されます。

これらの大きな違いは、発酵の仕方によるものです。

 

ビール製造では酵母菌などの微生物の働きによって糖質がアルコールと炭酸ガスに分解される発酵が起こります。

ラガーとエールで異なる発酵の特徴や、それぞれの基本は以下の通りです。

ラガー

ラガーは、発酵が進むことによって麦汁の下部に酵母が沈んでいく「下面発酵」によって作られるビールです。

発酵の期間は1カ月以上と長めではありますが、発酵温度が低いこともあり雑菌が繁殖にくく、製造管理しやすい特徴を持ちます。

 

喉越しが良いので、ゴクゴクと飲みやすいタイプでもあります。

「ラガー」とは、ドイツ語で貯蔵を意味する言葉です。

長い貯蔵期間を設け、時間をかけてゆっくりと発酵させる製法で作られることからラガーと呼ばれるようになりました。

 

現在、日本で販売されている主流なビールについても、こちらのラガービールに分類されます。

ラガーの中でもさまざまな種類があるのですが、日本の場合は「ピルスナー」に分類されるビアスタイルが定番です。

エール

エールは、発酵が進むことによって麦汁の上部に酵母が浮き上がる「上面発酵」で作られているビールのことです。

下面発酵と比較すると歴史が古いことや、発酵の温度が高い特徴を持ちます。

 

また、発酵の期間も3~4日程度、熟成期間が2週間程度と短いのが特徴です。

濃厚な味わいになりやすいので、じっくりビールを楽しみたい時に向いています。

歴史は非常に長く、古代ギリシャやローマではすでにエールに近いものが作られていたとされます。

 

一時期はラガーの流行によって人気が落ちますが、その後再度人気が高まり、近年はクラフトビールのブームによってさまざまな特徴のエールが開発されるようになりました。

今回取り上げているIPAは、こちらのエールに分類されるスタイルです。

 

関連記事:下面発酵と上面発酵の違いと各発酵方法でつくれるビールの特徴

クラフトビールのIPAとは?

IPA(アイピーエー)はイギリスで生まれたビールであり、ペールエールの一種です。ペールエールは、色合いが淡い特徴を持ちます。

当時のビールは濃い色のものが多かったこともあり「淡い」という意味を持つ「ペール」の名前が付けられ「ペールエール」と呼ばれるようになりました。

 

色合いの美しさも魅力といえるでしょう。

「India Pale Ale(インディア・ペールエール)」の頭文字を取り「IPA」と呼ばれています。

IPAの歴史

18世紀末頃のイギリスで誕生したビアスタイルです。

イギリスではペールエールが高い人気を誇っていたのですが、それを植民地であるインドへ輸送したところ、長い船旅もあり途中でビールが腐敗してしまうのが問題となっていました。

 

そこで考えられたのが、防腐効果を持つホップを大量に加えてビールを作る方法です。

このように製法を工夫することでビールは腐敗することなく、インドへ届けられるようになりました。

これが由来とされています。

IPAの特徴

大量のホップを入れて作るビールであるため、ホップの香りが強く出るのが特徴です。

どのようなホップを使用するのかによって香りの種類が異なります。

 

また、IBUが高いのも特徴です。

IBUとは「International Bitterness Units」の頭文字を取ったもののことであり、ビールの苦味指数を指します。

IBUが高いほど苦いことになるので、苦いのが好きな方に高IBUのIPAが向いているといえるでしょう。

 

1つの目安として、国産の大手ビールのIBUは一般的に20前後であるのに対し、IPAのIBUは40ほどです。

単純に考えても国産の大手ビールと比較して2倍ほど苦いことになります。

 

苦いと飲みにくいのではないかといった心配もありますが、この苦味が癖になってIPAにはまり、クラフトビールに興味を持つようになったという方も少なくありません。

また、腐りにくくするために防腐作用のあるといわれるホップを大量に使用していると紹介しましたが、この他に同様の理由でアルコール度数も高くなっています。

 

関連記事:クラフトビールのIBUとは?ビアスタイルごとの数値を紹介

IPAの種類

IPAの中でもどのような特徴を持つのかによって種類が異なります。

ここでは、主な種類を5つ紹介します。

イングリッシュIPA

元祖IPAともいえるものであり、イギリスが発祥です。

昔からある伝統的な種類であり、ホップには刈り草や紅茶のような香りを持つ種類が使われています。

 

ホップの苦味はそれほど強くありませんが、麦芽の風味はしっかりと感じられる種類です。

全体的にバランスがとれている種類なので、初めて挑戦する方にも向いているでしょう。

 

アルコール度数は、一般的に5~7.5%です。

また、本場ではこれよりも度数が低いものもあります。

アメリカンIPA

アメリカ品種のホップが大量に使われている種類で、イングリッシュIPAと比較すると柑橘系の香りを強く感じます。

アメリカ品種のホップが大量に使われていて、果物のようなさわやかさが特徴的です。

特にホップの香りが強く感じられるようなものを選びたい方に向いているでしょう。

 

ホップの苦味と香りが強く出ている種類です。

アルコール度数は6.5~7.5%と一般的なビールと比較して高めです。

ベルジャンIPA

ベルギービールの酵母を使って作られるIPAのことをいいます。

スパイシーな後味がありますが、飲み口はフルーティーでキリッとしているのが特徴です。

 

華やかさを感じられる種類といえます。

ホップではなく、ベルギー酵母由来の甘い香りが特徴的です。

セッションIPA

アルコール度数を下げることで飲みやすくした種類のことをいいます。

IPAといえば強いホップの香りと苦味が特徴的なビールです。

これらの特徴はそのままに、アルコール度数を4%前後まで落としました。

 

IPAが好きではあるもののアルコール度数が高くて飲みにくいと感じている方にも向いているでしょう。

なお、IPAだけではなく、その他のビアスタイルでも度数を抑えて飲みやすくしたものを「セッションビール」と呼びます。

 

フルーティーな銘柄も多くあるので、いろいろ飲み比べしてみても楽しめます。

ダブルIPA

ダブルIPAは通常のIPAよりもさらに多くの麦芽とホップを使用して作る種類です。

一般的なIPAも通常のビールと比較して多くのホップが使用されているので、それよりも強いホップの香り・苦味を感じられます。

ホップだけではなく麦芽の使用量も増えているのは、ホップの苦味とバランスを取るためです。

 

初めてIPAを飲む場合は、先に通常タイプのものを飲み、慣れてきてからダブルに挑戦してみると良いでしょう。

アルコール度数は高めで7.5~10.5%程度となっています。

 

また、ダブルよりもさらにアルコール度数を高め、苦味も多い「トリプルIPA」と呼ばれるものもあります。

こちらはアルコール度数9~12%程度です。

IPAのおいしい飲み方

IPAの香りを楽しむためにも、グラスに注いで飲みましょう。

専用グラスもあります。

専用グラスは香りを楽しめるように飲み口が広めに作られているのが特徴です。

 

専用のグラスがなくてもワイングラスのように飲み口が広いグラスを選ぶとIPAの香りを楽しめるでしょう。

専用のグラスは一般的なワイングラスのように上部が丸みを帯びていることに加え、下部はくびれができるように細くなっているのが特徴です。

ビールの量が少なくなってきたときにも薄い泡ができやすく、香りが守られやすいように工夫されています。

 

また、ビールは冷やして飲むのが一般的ではありますが、冷やし過ぎると香りが広がりません。

どちらかというと冷蔵庫から出したばかりのキンキンに冷えたものではなく、15分程度を置いて少しだけぬるくなったものが適しています。

 

それから、注ぐときは泡を立てないようにゆっくりと注ぐのがポイントです。

これは、泡立てることによって泡の苦味が先立ってしまうためです。

また、麦芽の風味も弱まってしまうため、注ぎ方には注意しましょう。

IPAと相性が良い料理は?

ビールの美味しさを引き立たせてくれるのが、相性の良い料理です。

飲む時にはどのような料理を選択すれば良いのでしょうか。

おすすめを解説します。

スパイシーな料理

IPAは強い苦味を持つビールです。

この苦味に負けないようなスパイシーな料理との相性が良いので、試してみてはいかがでしょうか。

タイ料理やエスニック料理、中華料理は特に相性が良いとされます。

 

また、普段食べているものにスパイスを加え、IPAとも相性を高めてみるのも良いでしょう。

例えば、肉料理や魚料理にブラックペッパーをふりかけるだけでもIPAと相性が良くなります。

濃い味付けの料理

濃い味付けの料理も相性が良いといえます。

豊かなホップの香りが楽しめる個性が強いビールでもあるため「合わせる料理はビールの味を邪魔しないような味付けの薄いものが良いのではないか」と考える方もいるでしょう。

 

ですが、特徴の強いIPAと濃い味付けの料理を合わせることで相乗効果が生まれ、さらにおいしく感じられるようになります。

肉料理でいえば、濃いめに味付けされた豚の角煮のように醤油ベースの味がはっきりしているものがおすすめです。

 

他にも、濃厚なソースを使った料理は相性が良いといえます。

苦みが強い料理

苦味が強い料理も相性が良いです。

ゴーヤやピーマン、ケール、春菊などは苦味が強い食材として知られているので、このあたりを取り入れてみてはいかがでしょうか。

IPAは苦味と香りが特徴的なビール

いかがでしたか?

クラフトビールの中でも強い苦味と香りが特徴的なIPAとはどのようなものなのかについて紹介しました。

 

豊かなホップの香りに加え、フルーティーさを感じさせるIPAはさまざまな楽しみ方があります。

IPAといっても多くの種類があるので、醸造所の立ち上げや事業拡大による増設を考えている経営者の方はIPAについてもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備や施工工事だけでなく、酸化防止策の導入や溶存酸素管理のサポートも行っています。ビールの品質向上を目指す事業者様は、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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