デコクション製法とは?インフュージョン製法との6つの違いについて

ブルワリーの新規立ち上げや事業拡大を考えている方に向けて、デコクション製法とはどのようなものかを解説する記事です。 ビールの製造にはさまざまな工程がありますが、その中でも欠かせないのが『糖化』です。 しかし糖化方法にはいくつかの種類があり、どの方法を採用するかによりビールの味わいも変わってきます。 そこで今回の記事では、デコクション製法とはどのようなものか、特徴やインフュージョン製法との違いについて解説。 参考にしていただければ、理想のビールを効率的に作るための糖化方法をご理解いただけるはずです。

【目次】

糖化はビールの醸造に欠かせない工程

『糖化』はビール製造における、2番目に重要な欠かせない工程です。 麦汁の中に含まれるデンプンを糖に変換させる工程のことを指します。 ビールのアルコールは、酵母が発酵によって糖をアルコールに変えることによって作られるものです。 そのため糖化が行われなければ、アルコールは生じません。 また糖化を進めるかどうかによって、ビールの発酵度を調整できます。 糖化を進めると発酵度が高くなり、ドライ系のビールの味わいになります。 一方で、糖化を抑えると、コクがあり味わい深いビールに仕上がります。 糖化はアルコールを生じさせるだけでなく、ビールのタイプや味にも影響を与える重要な工程です。

糖化方法の種類

ビールの糖化方法には『デコクション製法』『ステップインフュージョン製法』『シングルインフュージョン製法』の3種類があります。 それぞれの糖化方法について詳しく見ていきましょう。

種類1:デコクション製法

まずデコクション製法とは、3つの種類の中で最も伝統的な糖化方法です。 ドイツで生まれた糖化方法であり、じっくりと熱を与え、時間をかけて糖化させるのが特徴。 日本産のビールでもよく用いられる手法です。 麦汁の一部を沸騰させた後に、元の麦汁へ戻します。 その結果、沸騰させていない麦汁も含め、全体の温度が上昇し、沸騰させた麦汁ではデンプンがゲル化し、酵素によって分解されたデンプンが糖へと変化します。 麦汁の一部を沸騰させる方法ではさらに、「シングルデコクション」と「ダブルデコクション」、「トリプルデコクション」の3種類に分けられます。 【種類】
  • シングルデコクション:麦芽と湯の一部を取り出して沸騰させ、戻す方法
  • ダブルデコクション:発酵状態にある麦汁を2つ部分に取り出して沸騰させ、戻す方法
  • トリプルデコクション:3つの部分を取り出して沸騰させ、戻す方法
いずれも沸騰させて戻すことに変わりはありませんが、いくつの部分に分けて沸騰させるかが異なります。 製法の種類によっても、ビールの味わいが変わってくるため、目的に応じて方法を選択してください。

種類2:ステップインフュージョン製法

ステップインフュージョン製法は、段階的に麦芽と湯の温度を上げていく方法です。 少しずつ温度を上げることで、段階ごとに異なる酵素を活性化できる点が特徴です。 イギリスで生まれた製法で、加温機能を持つ糖化槽を用いて加熱していくのが一般的な方法です。 ステップインフュージョン製法は、麦汁の一部を沸騰させる方法とは違い、麦汁を移動させる手間がかかりません。 すべてを均一に加熱するためです。 さらに、キレのあるすっきりとした味わいになるため、軽い飲み心地のビールに適しています。

種類3:シングルインフュージョン製法

温度を一定に保ちながら糖化させていく方法です。 ステップインフュージョン製法が段階的に温度を上げていくのに対し、シングルインフュージョン製法では温度を変えません。 糖化の工程で温度を一定に保つことで、デンプンが十分に分解される点がメリットです。 エールビールを製造する際によく用いられます。

デコクション製法とインフュージョン製法の違い

ビール製造における糖化方法は、大きく分けるとデコクション製法とインフュージョン製法に分けられることを解説しました。 ここでは、両者の製法の違いについて解説します。 より効率的においしいビールを製造するには、糖化方法の違いについて知っておくことが大切です。

違い1:用意する設備

最初に用意する設備の違いについて見ていきましょう。 【違い】
  • デコクション製法:マッシュタンとケトルタンが必要
  • インフュージョン製法:マッシュタンのみで実施可能
設備が少なくて済むのは、麦汁を分けない方法のほうです。 麦汁の一部を沸騰させる方法ではマッシュタンとケトルタンの2つの設備が必要となります。 しかし麦汁を分けない方法ではマッシュタンのみで実施可能で、設備を減らしたい場合は、インフュージョン製法が適しています。

違い2:作業時間

続いては作業時間についてです。 【違い】
  • デコクション製法:作業時間が長くコストがかかる
  • インフュージョン製法:作業時間が短くコストを抑えられる
操作の複雑性は両者とも変わりません。 しかし麦汁を分けない方法の方が作業時間が短く、手間がかかりにくいでしょう。 最初に解説したように、麦汁の一部を沸騰させる方法では、じっくりと熱を加える必要があり、さらに麦汁を移動させる手間もかかります。 作業時間を比較すると、デコクション製法は時間のかかる製法といえます。

違い3:原材料の要件

原材料の要件にも違いがあります。 【違い】
  • デコクション製法:品質の低いモルト使用可、副原料使用可
  • インフュージョン製法:品質の低いモルト使用不可、副原料使用可
どちらの方法であっても、副原料の使用は可能です。 しかし麦汁の一部を沸騰させる方法では品質の低いモルトも使用可能であるのに対し、麦汁を分けない方法ではモルトの品質が問われます。 モルトの品質は生産コストにも関わるでしょう。 原材料の要件が異なることも知っておいてください。

違い4:原材料の利用率

次の違いは原材料の利用率です。 【違い】
  • デコクション製法:98%以上
  • インフュージョン製法:95%以上
僅かな差ではありますが、麦汁の一部を沸騰させる方法の方が原材料の利用率が高くなければなりません。 そのため麦芽の風味が強いビールの製造に適しています。 反対に麦汁を分けない方法では原材料の量が少なくなり、軽い飲み味です。 原材料の量はビールの味わいに影響を与えるため、どちらの方法を採用するかを慎重に決めましょう。

違い5:麦汁の特徴

インフュージョン製法とデコクション製法には、麦汁の特徴にも違いがあります。 【違い】
  • デコクション製法:中分子生成物が多い、糖分の操作がしやすい
  • インフュージョン製法:中分子生成物が少ない、糖分が多い
デコクション製法とは、糖分やその他の物質を操作しやすい点も特徴のひとつです。 そして麦汁を分けない方法は、麦汁に糖分が多いことが特徴です。 中分子生成物は、麦汁の一部を沸騰させる方法で多く生成されます。 中分子生成物とは、500~5,000程度の分子量を持つ分子が作り出す物質のことです。 ビール製造においては、おもにタンパク質やデキストリンが該当します。

違い6:ビールの特徴

最後に、完成したビールの特徴について解説します。 【違い】
  • デコクション製法:まろやかな味わいで飲み心地は爽やか、下面発酵ビールに使用される
  • インフュージョン製法:ソフトな口当たりで爽快、上面発酵・下面発酵のどちらにも適する
麦汁の一部を沸騰させる方法では、まろやかでコクのある味わいに加え、爽やかなビールが完成します。 麦汁を分けない方法ではソフトで爽快なため、ビールが苦手な方にも飲みやすい可能性があります。 しかしデコクション製法は下面発酵ビールに使用されることが多く、上面発酵ビールを製造するならインフュージョン製法がおすすめです。

デコクション製法とは濃厚なビール製造に役立つ方法

いかがでしたでしょうか? この記事を読んでいただくことで、デコクション製法とはどのような特徴があるかご理解いただけたと思います。 麦汁の一部を沸騰させる方法は、手間と時間がかかり、設備も必要ですが、コクのあるまろやかなビールを作るのに適した方法です。 ビールは製法によって、味わいや製造時間が変わります。 効率的に理想的なビールを製造したい場合は、スペントグレインまでぜひご相談ください。 「おいしくて売れるビール」を追求するためのコンサルティングをご提供しております。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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