ビール醸造におけるドライホッピングとは?

ビール醸造において、風味や香りを高めるための重要な技法として「ドライホッピング」があります。
ホップを発酵後に追加することで、ビールに特有の香りを与える手法です。

 

本記事では、ドライホッピングの基本から使用するホップの種類、タイミング、効果まで詳しく解説します。
新規事業で醸造所を立ち上げる経営者や、事業拡大を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【目次】

ビール醸造の流れについて

ビール醸造において、ドライホッピングを理解するには、まず基本的な製造工程を押さえておきましょう。
ビールは麦芽の粉砕から始まり、糖化→ろ過→煮沸→冷却→発酵→貯酒→そして最終的な容器詰めという一連の工程を経て造られます。

 

各工程がビールの風味や香りに影響を与えるため、それぞれの段階で適切な管理が求められます。

 

ドライホッピングは、これらの基本的な工程の理解を深めた上で、ビールの品質をさらに高める技法。
理想とするビールの香りや風味を、確実に実現するためにもビール醸造の流れはこの機会に把握しておきましょう。

ドライホッピングとは?

ドライホッピングとは、発酵中のビールにホップを追加し、香りを際立たせるための技法です。
通常、ホップは麦汁の煮沸中に投入され、苦味と香りをビールに与えますが、煮沸によって香りの多くが失われてしまいます。

 

これに対し、ドライホッピングでは発酵タンク内のビールに直接ホップを加えることで、熱を加えずにホップの芳醇な香りをビールに移します。
特に香りを重視するクラフトビールの醸造において効果的であり、ビールの香りをより豊かにし、風味に深みを加えられるのです。

ドライホップの種類

ドライホッピングで使用されるホップで代表的なのが「ペレットホップ」と「ホールホップ(生ホップ)」です。
それぞれに特徴があり、使用するホップの種類によってビールに与える香りや風味が異なります。

 

以下で、ペレットホップとホールホップの違いについて詳しく解説しましょう。  

 

関連記事:クラフトビールに欠かせないホップ!役割と代表的な種類をチェック

ペレットホップ

ペレットホップは、収穫したホップを乾燥させた後に粉砕し、圧縮して小さな粒状に加工したものです。
ホップの保管や輸送が容易になるだけでなく、麦汁への溶解性が高まり、香りがビールにしっかりと移りやすくなります。

 

ペレットホップは、香気成分の一部が乾燥工程で失われる場合がありますが、それでも高い香り付け効果を発揮。
また、使いやすさや長期保存が可能な点から、商業用のビール醸造において広く使用されています。

ホールホップ

ホールホップ(生ホップ)は、収穫したばかりのホップをそのまま、もしくは凍結した状態で使用するものです。
ホールホップは乾燥工程がないため、ホップ本来の新鮮な香りをビールに付与できます。
そのため、ペレットホップでは得られない、フレッシュで豊かなアロマが特徴。

 

ただし、ホールホップを使用するときは、ホップに付着している微生物や細菌による汚染リスクが高くなるため、ビールの衛生管理には細心の注意が必要でしょう。

ホップを入れるタイミング

ホップをいつ、どのくらいの量で投入するかによって、ビールの仕上がりは大きく変わります。
通常、ホップは煮沸工程で数回に分けて投入されます。

 

煮沸の初期段階では、ホップを加えることでビールにしっかりとした苦味が与えられるでしょう。
これは、ホップに含まれるアルファ酸が熱によってイソフムロンに変化し、苦味成分として作用するからです。

 

一方、煮沸の後半にホップを投入することで、苦味ではなく香りをビールに付けられます。
煮沸時間が短いため、ホップの香り成分が飛びにくく、ビールに豊かなアロマを与えることが可能。

 

ホップの投入タイミングを工夫することで、ビールの苦味と香りのバランスを調整し、独自の風味を生み出せます。

ドライホッピングの効果

ドライホッピングは、ビールに豊かな香りを与えるための効果的な技法です。
ホップを煮沸後に追加することで、ホップに含まれる香り成分、特にテルペンアルコール類など揮発性の高い成分が効率的にビールに移り、フルーティーやシトラス、花のような香りを強調させられるのです。

 

従来の煮沸中のホップ添加では、これらの香りが蒸発してしまうため、ビールには十分に移りませんが、ドライホッピングによってその問題が解決されます。

 

さらに、ドライホッピングのタイミングが香りの最終的な仕上がりに大きな影響を与えます。
主発酵後にホップを追加することで、発酵中の酵母による香り成分の変化を最小限に抑え、ホップ本来のフレッシュな香りをビールにしっかりと残せるでしょう。
このため、ホップの個性を最大限に引き出せる上、ビールの風味に深みを加えられるのです。

 

関連記事:ビール醸造の品質を担保するための5つの方法と欠かせないポイント

ビール醸造とドライホッピングの流れを理解しよう

いかがでしたでしょうか?ドライホッピングについておわかりいただけたかと思います。
ビールの香りと風味を豊かにするドライホッピングは、クラフトビールの魅力を最大限に引き出すために重要な工程です。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備の提供だけでなく、ビールの品質向上や市場での成功を目指す戦略的サポートも実施しています。

 

新規事業や事業拡大をお考えの際は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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