ビールを濾過する方法と目的は?できあがりまでの製造工程もチェック

ビールを製造する過程の中で行われるのが、濾過です。

ただ「何のために行うのかわからない」と感じている方もいるのではないでしょうか。

濾過は非常に重要な意味を持っており、質の高いビール製造には欠かせません。

 

本記事ではビールの原料や製造工程、濾過について詳しく解説します。

この記事を読むことで濾過の役割やどういった形で行われるのか、品質にはどのように関係するかなどがわかるようになるので、ぜひご覧ください。

 

【目次】

そもそもビールの原料は?

ビールを製造する際には、いくつかの原料が使われることになります。

主な原料は、水、麦芽、酵母、ホップの4種類です。

 

それぞれどのような原料なのかから解説していきます。

 

関連記事:クラフトビール作りに欠かせない!ビールの5つの原材料

イメージしてもわかるように、ビールの大部分は水です。

9割以上が水であることから、ビール製造に適した水であることが求められます。

 

水に含まれているミネラル分などによって仕上がりの味が変わってくるので、クラフトビール製造をする際は水にもこだわりましょう。

一般的にミネラル成分を多く含む硬水の場合は、味わいが深くなります。

一方、スッキリとした味わいの商品を作りたい場合は軟水が向いているでしょう。

 

クラフトビール製造では、その土地ならではの水の良さを活かしたビール製造も行われています。

なお、醸造所ではビールの原料として使われる水のほか、設備を洗浄するためのものやボイラー用、冷却用など、さまざまな場面で水が使われることになります。

 

関連記事:ビールの醸造における水の重要性を解説!

麦芽

麦芽(ばくが)は「モルト」とも呼ばれるものです。

主流は大麦ではありますが、小麦麦芽を使うこともあります。

発芽した麦を乾燥させて作るのが特徴です。

 

大麦の主成分はデンプンであり、そのままでは発酵に必要な糖を含みません。

ですが、発芽することでアミラーゼと呼ばれる消化酵素が活発化し、アミラーゼの働きによってデンプンが糖として分解されるようになります。

ビール製造において欠かせない原料の一つです。

酵母

酵母は微生物であり、発芽した麦芽を煮込むことで発生する糖を餌として活動するものです。

酵母は発酵することによってアルコールと炭酸ガスを生成します。

 

ビールはシュワシュワとした炭酸ガスが特徴的な飲料であり、このビールを産み出すためには酵母が重要な役割を果たします。

酵母の種類が変わるだけで味わいも大きく変わってくるので、クラフトビール製造を行う際にはよく検討して選びたい原料です。

ホップ

ホップとは、香りや苦みをつける目的で加えられるアサ科のつる性植物のことをいいます。

ビールは商品によって香りや味が異なりますが、これはホップの影響による部分が大きいです。

 

また、ホップはビールの泡持ちとも関係しているほか、殺菌効果もあります。

その数は非常に豊富で、200品種以上ともいわれるほどです。

ドイツやアメリカで多く栽培されていますが、日本各地でも栽培が行われています。

ビールの製造工程

ビールはどのような流れで製造されるのか工程を見ていきましょう。

製麦、ミリング、仕込み、発酵、熟成、充填といった流れで進んでいくことになります。

製麦

製麦(せいばく)とは、麦を発芽させる工程のことです。

軽く触れたように麦をそのまま使うのではなく、発芽させて麦芽やモルトと呼ばれる状態になったものを使用します。

 

製麦の工程は、以下の3つです。

【製麦の工程】

  • 浸麦(しんばく):大麦を水に浸し、休眠状態から目覚めさせる工程
  • 発芽(はつが):水分を含んだ大麦を発芽室に送り、混ぜながら発芽を促す
  • 焙燥(ばいそう):発芽を止めて乾燥させる

浸麦状態のときでも大麦に酸素を届けるため水の入れ替えが必要です。

 

大麦には苦味成分が含まれているのですが、浸漬によって溶け出して少しずつ発芽のための準備が整ってきます。

発芽することで硬い大麦がやわらかくなります。

発芽が完了した大麦に対して行われるのが焙燥です。

熱風を送り込むことで乾燥させます。

 

しっかりと乾燥した大麦は雑菌が繁殖できない程度まで乾いているため、長期保存が可能です。

ミリング

ミリングとは麦芽を粉砕する作業のことです。

焙燥によって乾燥させた大麦をそのまま使うのではなく、細かく砕いていきます。

これは、麦芽の中に含まれているデンプンをお湯に溶け出しやすい状態にするために必要な作業です。

 

お湯に溶け出したデンプンは糖に変化し、ビールは酵母が糖分を食べることによって作られます。

そのため、ビール製造においてミリングは非常に重要な作業です。

ミリングは、とにかく細かく粉砕すれば良いわけではありません。

 

あまり細かくし過ぎると大麦の表面にある苦みをもたらす成分が多く含まれた「穀皮」も溶け出してしまうため調整が必要です。

仕込み

続いて仕込みです。

仕込みでは、ビールのもととなる麦汁(ばくじゅう)を作っていきます。

はじめに行うのが、粉砕した大麦を温水と一緒に仕込樽に投入し「マッシュ」や「マイシェ」「もろみ」と呼ばれるものを作っていく工程です。

 

どろどろしたおかゆ状のものができ上がります。

撹拌しながら少しずつ温めることで麦芽内に含まれている酵素の働きにより、デンプンが糖へと変化する糖化が行われるのが特徴です。

マッシュの段階ではまだ濁りがあり、ビールと聞いてイメージするような透明性はありません。

 

できあがったマッシュに対して行うのが、今回取り上げている濾過です。

濾過装置を使用し、固形物を取り除く目的で濾過が行われます。

濾過して最初に流れ出る麦汁が「一番麦汁」です。

一番麦汁はとてもスッキリとしていて、苦味がないのが特徴です。

 

残ったマッシュにお湯をかけてエキス分を抽出したものは「二番麦汁」と呼ばれます。

こちらはコクが出やすいのが特徴です。

第一麦汁だけを使用してビールを作ることもできますが、一般的には第二麦汁も使用されます。

発酵

できあがった麦汁を煮沸して発酵させていきます。

タンクに移した麦汁に酵母を加えることでアルコールと、ビールの泡である二酸化炭素が生み出される工程です。

 

ホップの香りを強く出したい場合はこの時点でホップを添加することもあります。

熟成

熟成のため麦汁を発酵槽へ移します。

熟成することで作られたばかりのビールに含まれている好ましくないにおいが取り除かれ、おいしくなっていくため重要な工程です。

充填

熟成が完了し、できあがったビールはもう一度濾過されます。

これは、発酵が終わって不要になった酵母や固形物を取り除くための作業です。

 

それも完了したら瓶や缶に充填していきます。

しっかりと密封することでおいしさを維持できます。

ビール醸造における濾過の役割

ビール製造で濾過が行われるのは、中に含まれている酵母など不純物を取り除くためです。

一般的にビールといえば、透き通った黄金色の飲料をイメージしますが、透き通っているのは濾過が行われ、不純物が取り除かれているからです。

 

見た目を整えるためにも重要な工程といえるでしょう。

また、酵母を取り除くことによってそれ以上発酵するのを防ぐ役割もあります。

ビール醸造における濾過のプロセス

ビール醸造で欠かせないのが、濾過のステップです。

濾過されていないものには穀皮や麦芽の粒といった固形物が含まれています。

そのままでは濁りがあり、美しく見えません。

 

また、口当たりにも影響してしまいます。

そこで、行われるのが濾過です。

酵母や穀皮、麦芽の粒など不要な成分を取り除くことで澄んだ美しい色のビールに仕上がります。

濾過の工程では、金属板に穴が開いているロイター板と呼ばれるものを使う方法と、濾過用に作られた布を使う方法が一般的です。

 

濾過の作業は圧力をかけることなく、自然に濾過されるのを待たなければなりません。

時間短縮やエキス分を多く取る目的で圧力をかけてしまった場合、濁ったビールになってしまうことがあります。

ビールの濾過と品質の関係

濾過はビールの品質と深く関係しているものです。

適切に濾過を行うことで酵母が除去され、発酵が止まります。

 

これにより、ビールが完成した後に発酵を続けてしまうことがなくなり、品質が安定するのも特徴です。

不純物や微生物が残っているとビールの味や品質に影響を与えてしまうこともあります。

 

ただ、濾過のしすぎもよく検討しなければなりません。

濾過することで酵母を除去すれば、酵母由来の味わいが薄れてしまいます。

 

また、ビールの味が弱くなってしまう可能性もあるでしょう。

どの程度濾過するのかについては慎重に考えなければならないポイントといえます。

無濾過ビールとは?

ビールの中には、濾過の工程を省いた「無濾過ビール」と呼ばれるものもあります。

クラフトビール製造に取り組んでいくにあたり、濾過について悩んでいる方は無濾過ビールについても理解を深めておきましょう。

無濾過にする理由

濾過することなく仕上げる理由は、ビールに含まれているさまざまな成分を残し、ビールの特徴として楽しむためです。

酵母が生きたまま含まれていることになるため、濾過したビールと比べてコクやフルーティーさを楽しめるようになります。

 

酵母にはビールのうまみが凝縮されているので、濾過せずに残すことで酵母のうまみを活かしたビールに仕上げることが可能です。

無濾過ビールの特徴

ビールに含まれている酵母とタンパク質を濾過して完全に取り除いた場合は香りが弱まってしまいますが、濾過しないことでこれらの香りをより鮮明に楽しむことができます。

ただ、濾過されていないこともあり見た目は一般的にビールと聞いて想像する透明感があるものではなく、濁っているのが特徴です。

クリーミーな口当たりになるのも無濾過ビールの特徴といえるでしょう。

 

なお、ビールの中で酵母が生きているということは、そのまま発酵が進むことを意味しています。

そのため、濾過されているビールと比較して賞味期限は短めです。

冷蔵庫など適した環境で保存しないと賞味期限内でも酵母の働きによって発酵が進みすぎてしまう可能性があるため注意が必要です。

濾過はビール製造において重要な工程

いかがでしたか?

ビールの濾過方法や、濾過の役割などについて解説しました。

全体的な製造の工程についてもご理解いただけたかと思います。

 

濾過はおいしいビールを作るためにも重要な工程です。

無濾過にするといった選択肢もあるので、クラフトビール製造を行う際は慎重に検討しましょう。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備や施工工事だけでなく、酸化防止策の導入や溶存酸素管理のサポートも行っています。ビールの品質向上を目指す事業者様は、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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