クラフトビールの製造期間は?製造工程とともに解説
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- 2024.11.15
- 2024.11.27
クラフトビールの奥深さに魅了され、「自分でもブルワリーを立ち上げたい」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際に立ち上げるとなると、製造にかかる期間や製造工程など、わからないことばかりなのではないでしょうか?
そこで本記事では、クラフトビールの製造期間を製造工程とともに詳しく解説します。
「こだわりのクラフトビールを造るために、より知識を深めたい」と願う方は、ぜひ参考にしてください。
【目次】
クラフトビールの定義
本題に入る前に、そもそもクラフトビールとはどのようなビールを指すのかを確認しておきましょう。
クラフトビールには明確な定義はないものの、一般的に“小規模なブルワリー(醸造所)で造られる多様で個性的なビール”のことをそうよびます。
ブルワー(ビール職人)たちは、ブルワリーが小規模であるがゆえに、原材料選びから製造、充填までのすべての工程で独自の工夫やチャレンジを試みることができます。
そうしたこだわりが積み重なり、クラフトビールの豊かな個性として結実するのです。
フルーティーな風味のものや苦みが強いものまで、クラフトビールの味わいはブルワリーの数だけ存在するといわれています。
クラフトビールの製造期間
クラフトビールの製造期間は、3~4週間程度が一般的ですが、長いものは8週間程度かかります。
どのようなテイストのクラフトビールに仕上げていくかによって、製造期間の長さも大きく変わります。
では、製造期間中にどのような工程を経てクラフトビールは完成するのでしょうか?
次項でクラフトビールの代表的な製造工程を、詳しく解説します。
クラフトビールの製造工程
クラフトビールは、以下の7つの工程を経て造られます。
クラフトビールの製造工程
- 製麦
- ミリング
- 仕込み
- 発酵
- 貯酒
- 濾過・熱処理
- 充填
以下、順を追って解説します。
製麦
クラフトビール造りは、製麦から始まります。
製麦とは、大麦をビールの原材料の一つである、“麦芽(モルト)”に変える作業のことです。
ビールの色合いはこの麦芽によって決まるほか、香り、コク、味わいにも影響を及ぼすため、クラフトビール造りにおけるこの作業の重要性がおわかりいただけるはずです。
そんな製麦は、浸麦・発芽・焙燥の3つの工程からなります。
浸麦
浸麦は、大麦を水に浸して発芽を促す工程です。
この間、大麦の生育に必要な酸素を送り届けるために何度か水が入れ替えられます。
これにより、大麦に含まれる苦み成分が溶け出し、付着しているほこりも洗い流され、発芽の準備が整っていきます。
この工程は、約15℃の水温で2日間程度かけて行うのが一般的です。
発芽
浸麦を終えて水を含んだ大麦を、発芽させるのが次のステップです。
冷風を送り室温を15℃前後に保ちつつ、定期的に混ぜながら発芽を待ちます。
大麦の発芽が始まると、デンプンやタンパク質などの成分が分解され、指で潰せるほどの柔らかさになります。
この変化は“溶け”とよばれ、これを進めたり抑えたりすることで、自身のクラフトビールに合った品質の麦芽へと変えていくのです。
焙燥
製麦における最後の工程は、熱によって大麦の成長を止め、乾燥させる焙燥です。
大麦を焙燥装置のなかに入れ、50~80℃程度の熱風をあてていきます。
そのあとに、渋みや雑味の原因になる根っこを取り除けば、ビール造りに欠かせない麦芽の完成です。
焙燥によって雑菌が繁殖しなくなるため、長期保存もできるようになります。
また、この焙燥の温度や時間を調整することで、クラフトビールの色や香りをカスタマイズできます。
ミリング
製麦が終わったら、ミリングとよばれる工程に移ります。
ミリングは、麦芽を細かく粉砕し、デンプンの抽出を容易にするための作業です。
デンプンはアルコールの生成において重要な役割を担っているので、この作業なくしてビール造りは成り立ちません。
仕込み
続いて行うのが、ビールのもととなる麦汁を作るための仕込み作業です。
まず、大きな仕込み樽のなかに先ほど砕いた麦芽とお湯を入れ、混ぜます。
そうすると、麦芽に含まれる酵素のはたらきによってデンプンが糖に変わる“糖化”という現象が起きます。
内容物が、マイシェとよばれるおかゆのような状態になっていれば、糖化は成功です。
糖化が成功したら次は、濾過装置を使って固形物を取り除きます。
そうして取り出された液体が、麦汁です。
この時点での麦汁からは、糖による甘みしか感じられません。
最後にビールの苦みや香りを特徴づけるホップを加え、煮沸すれば麦汁の出来上がりです。
発酵
麦汁が完成したら、酵母を加えて発酵させます。
酵母が先ほど糖化で生み出された糖を食べ、ビールに不可欠なアルコールと二酸化炭素を生成する工程です。
この工程を経たものは、“若ビール”とよばれます。
なお、この際に使う酵母によって、発酵方法が“上面発酵”と“下面発酵”に分かれます。
発酵期間や味にも差が出てくるので、以下でそれぞれの特徴を押さえておきましょう。
上面発酵
上面発酵は、エール酵母を使った発酵方法です。
20℃前後で工程が進められ、発酵していくにつれ酵母が液体の表面に浮いてきます。
発酵の期間は3~6日程度で、フルーティーな香りと深い味わいが楽しめるビールに仕上がります。
下面発酵
上面発酵と対照的に、発酵が進むにつれて酵母が底に沈んでいくのが、ラガー酵母を使う下面発酵です。
5℃前後の低温で、6~10日かけてゆっくりと発酵させます。
そんな下面発酵で造られるビールは、スッキリとしたキレのある味に仕上がるのが特徴です。
なお、日本で流通しているビールのほとんどが、下面発酵によって造られています。
多くの方が飲んだことがあるであろう、あのキリっとしたのど越しは下面発酵によって生み出されているわけです。
貯酒
発酵を終えた若ビールは、貯酒タンクへと移されます。
そこで上面発酵のものは2週間程度、下面発酵のものは1か月程度熟成させることで、まとまりのある味へとブラッシュアップしていきます。
濾過・熱処理
熟成されたビールから不純物や固形物を取り除くため、濾過や熱処理を行います。
この工程を経てビール造りをサポートしてくれた酵母が取り除かれるか死滅し、澄んだ色の美しいビールが生まれるのです。
なお、最近ではあえて濾過をしない無濾過ビールも存在します。
酵母が生きたままの無濾過ビールでは、ほかにない独特なコクや芳醇な香りが楽しめますよ。
充填
長かったクラフトビール造りの工程も、いよいよ大詰めです。
濾過・熱処理を終えたビールを、缶や瓶、樽などに充填する作業に入ります。
その際は、容器のなかの空気を炭酸ガスに置き換え、圧力を加えながらビールを充填します。
容器内の酸素を追い出すことによって、ビールの品質は一定に保たれるのです。
以上の工程を経て、クラフトビールは商品としての体裁を整え、出荷を待つばかりの状態になります。
クラフトビールの製造期間は、3~4週間程度が一般的
本記事では、クラフトビールの製造期間を製造工程とともに解説しました。
クラフトビールの製造期間は、3~4週間程度が一般的ですが、ラガービールのように期間を要するものだと8週間程度かかる場合もあります。
どのようなテイストのクラフトビールに仕上げていくかによって、製造期間の長さも大きく変わります。
ブルワリーを立ち上げた際には、一つひとつの工程に創意工夫を凝らし、この世にふたつとないクラフトビールを生み出しましょう。
マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、これまで50か所を超えるブルワリーの立ち上げに携わってきました。
製造期間や設備など、経験豊富なブルワーが相談を承りますので、ぜひお問い合わせください。
この記事の監修者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。