ビールの醸造所を開業するために必要になる設備と選び方のポイント
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- 2024.09.06
- 2024.11.01
これから醸造所を開業したいと考えているのであれば、醸造に必要な設備を導入する必要があります。
ですが「何が必要かわからない」「どれを選ぶべきか悩んでいる」といった方もいるのではないでしょうか。
そこで、ビールの醸造所を開業するにあたり必要な設備を知りたい方のため、おさえておきたい設備の基本情報やなくてはならないもの、選び方のポイントなどを解説します。
本記事を読むことでこれから設備を検討するにあたり確認しておきたいことがわかるようになるので、ぜひご覧ください。
【目次】
醸造設備の基本情報
醸造設備は、代理店やコンサルティング会社に見積もりを取り、導入について検討していくことになります。
「せっかくなら日本のメーカーが作った設備を導入したい」と考える方もいるでしょう。
ですが、国産の醸造設備はそれほどありません。
ビール産業は海外の方が進んでいることもあり、有名な設備は主に海外のものです。
日本でビール醸造設備を取り扱っている会社であったとしても、海外製品を販売しているケースが大半といえます。
メインとなる醸造設備の機能
醸造設備にはさまざまな種類があり、その中でもメインといえるのが、ビールの製造プロセスの中心でもある発酵タンクです。
発酵タンクはその名の通り発酵を促すためのタンクのことで、麦汁に酵母を加えて発酵を行います。
ビールは発酵によって造られる飲み物なので、醸造設備の中でも特に重要といえるでしょう。
ただ、発酵タンクだけですべての作業ができるわけではありません。
例えば、ビールの醸造に必要な水を温めるための温水タンク、糖を生成する糖化システムなど、多くの設備が必要になります。
これからビールの醸造場を開業しようと考えているのであれば、まずは最低限必要な設備から導入し、徐々に充実させていくのも良いでしょう。
醸造所の開業に必要な主な設備
新規に醸造場を開業するにあたり、必要になる設備を解説していきます。
細かいものはいろいろありますが、主な設備は以下の通りです。
モルトグラインダー
モルトグラインダーとは、ビールの主原料となる麦芽(モルト)を粉砕するための設備です。
日本語だと「麦芽粉砕機」とも呼ばれます。
多くのケースでは自社で麦芽工場を持っていないため、製麦会社から麦芽を購入して加工していくことになるでしょう。
麦芽を粉砕する作業はミリングと呼ばれます。
糖化システム
マッシュシステムとも呼ばれるものであり、仕込みをするためのタンクです。
モルトグラインダーで細かくした麦芽とお湯を投入することで、酵素の働きによって麦芽に含まれているでんぷんが糖へと変化します。
麦芽とお湯を攪拌し、糖化させたものをろ過したものが「麦汁」です。
温水タンク
糖化システムで使用するための水を温めておくタンクです。
麦芽を発酵させるためには、適切な温度管理がされたお湯を加えなければなりません。
そのため、温水タンクの機能性は非常に重要と言えるでしょう。
仮に温度管理がうまく行われていないお湯を使用した場合、ビールの品質が悪くなってしまいます。
熱交換器
麦汁を急速冷却するために使用される装置が熱交換器です。
糖化システムで作り出した麦汁は煮沸してホップが加えられ、その後発酵させることになります。
ですが、高温の状態では発酵させるための酵母をうまく働かせることができません。
そのため、麦汁を冷やす必要があります。
自然に冷めるのを待つ形だと雑菌が繁殖してしまう恐れがあるため、熱交換器を使用して急冷します。
発酵タンク
適切な温度に調整した麦汁は発酵タンクへと送られ、発酵に必要な酵母が加えられます。
麦汁には糖分が含まれており、酵母はこの糖分を食べることによりアルコールとビールの泡になる二酸化炭素を生み出します。
制御システム
醸造に必要な各種システムを制御するためのものです。
特に糖化と発酵は細かな調整が必要になる部分でもあるため、質の良い制御システムが求められます。
一般的に糖化と発酵に分けて管理することになりますが、制御システムをまとめてコストを抑えたいのであれば、1台でまかなうことも不可能ではありません。
CIP装置
CIPとは「Clean In Place」の頭文字を取ったものです。
ビールを衛生的に製造するためには、品質や安全性に影響してしまうような不純物や汚染物質が各機器に混入しないように対策をとらなければなりません。
例えば、醸造設備の分解や手作業での洗浄を行うと、その際に不純物などが機器内に購入してしまうこともあるでしょう。
CIPは、そういった作業を行うことなく、専用の機器などを使用して洗浄することをいいます。
安全性を考慮したビールを製造するためにも欠かせないものといえるでしょう。
関連記事:醸造設備のメンテナンス方法とは?重要性についても解説
醸造所の設備の選び方
醸造所の設備を選ぶにあたりよく考えておかなければならないのが、タンクのサイズとタンクの必要数、熱源の種類です。
それぞれ解説します。
関連記事:ビール醸造所の設備の選び方とは?購入時のポイントも解説
タンクのサイズを検討する
まず、タンクサイズはどの程度のものを導入するか考えましょう。
サイズは、製造するビールの量にあわせて検討しなければなりません。
例えば、必要以上に大きいサイズを選択した場合は、タンクを購入するための初期費用が高いつくことになります。
また、大きなサイズのタンクいっぱいに醸造を行った場合、仮にビール造りがうまく行かなかった時に大きな痛手となるため注意が必要です。
ですが、小さすぎるものもよくありません。
醸造できる量が少なくなってしまうので、需要に対して供給が追いつかない可能性があります。
どの程度醸造するのか、どの程度売れるのかなども含めて検討をしましょう。
また、置き場所に収まるサイズであることも重要な条件です。
将来的に設備を増やすことを考えている場合は、そのことも見越した上でタンクのサイズを検討しなければなりません。
タンクの必要数を考慮する
次に考えなければならないのが、タンクの数です。
ビール醸造における最終段階では、仕上がったビールはブライトタンクと呼ばれる場所に移されることになります。
そのため、ブライトタンクが多ければそれだけたくさんのビールを保管しておけるでしょう。
例えば数種類のビールを仕込む場合、タンクの数が足りない場合は、品切れが起こってしまうことがあります。
だからといって売り切れないほどの量を仕込んでしまえばコストだけがかかることになるので、必要なタンクの量はビールの醸造量に合わせて検討しなければなりません。
熱源の種類を選ぶ
温水タンクなどで利用する熱源として何を選択するかも考えておきましょう。
例えば、直火はコストを抑えて導入できる一方で温まり方にムラができてしまうこともあります。
次に電気は直火よりも温度ムラができにくいものの、費用は直火の方が安く済むケースも珍しくありません。
蒸気に関してはコストがかかるものの効率的に温められるといった特徴があります。
それぞれメリット・デメリットがあるので、どちらも確認した上で熱源の種類を検討しましょう。
損益分岐点から見たビール醸造設備の選び方
どの程度の規模・費用のビール醸造設備報道にしようか悩んでいるのであれば、先に損益分岐点を確認してみると良いでしょう。
損益分岐点とは、売上と費用が一致する部分のことをいいます。
費用が売上を上回ってしまえば事業として継続していくことはできないため、損益分岐点を売上が上回る形にできるような設備を導入しなければなりません。
まず、費用を確認しましょう。
費用には、固定費と変動費があります。
固定費は、人件費や家賃、水道光熱費、その他ビールを販売するのにかかる費用などのことです。
次に、変動費とは売上に応じて増減する費用のことをいいます。
例えば、材料費や加工費、販売手数料などのことです。
損益分岐点の計算式は「損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}」です。
{1-(変動費÷売上高)}の部分は限界利益率と呼ばれるもので、売上に対する限界利益の割合を表す数値を指しています。
例えば、売上高が2,000万円、固定費が800万円、変動費が400万円とします。
この場合、限界利益率は「1-(400万円÷2,000万円)」で80%です。
限界利益率を用いて損益分岐点を計算すると「800万円(固定費)÷80%」となり、計算結果は1,000万円です。
この計算では1,000万円が損益分岐点ということになります。
つまり、黒字にするためにはそれ以上の売り上げを確保しなければなりません。
言い換えれば、1,000万円以上の売り上げを実現できるような設備を導入することが最低条件といえます。
醸造所に導入する設備選びは慎重に
いかがだったでしょうか。
これからビール醸造場を開業したいと考えている方のため、必要な設備を選ぶ上でおさえておきたいポイントなどを解説しました。
どういった設備が必要になるのか、何に注目して選べば良いかなどをご理解いただけたかと思います。
導入した後、他の設備の方がよかったと分かっても簡単に買い換えられるものではないので、慎重に検討しましょう。
どのような設備を導入すれば良いかわからず悩んでいるのであれば、マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインにご相談ください。
醸造家としての専門的な目線から総合的にビール造りをサポートしています。
設備に関しても必要なものをすべて取りそろえているので、ぜひお問い合わせください。
この記事の監修者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。