ビール作りの工程を徹底解説

ビールは、お仕事を頑張ったあとやお風呂上がりなど、さまざまなシーンで疲れを癒やしてくれる飲み物です。
ひと口にビールといっても、作り方によって味や香り、発酵方法などが異なることはご存じでしょうか。

 

そこでこの記事では、気になるビールの醸造プロセスを詳しく紹介します。
発酵方法や貯蔵方法など、醸造所での作り方を知りたい方は、ぜひ参考になさってください。

【目次】

そもそも「ビール」ってなに?

ビールとは、麦芽やホップ、水を原材料として発酵させたアルコール飲料のことです。
日本の酒税法においては、麦芽の使用割合が50%以上のものを指します。
また、国によっては、米や果実、コリアンダーなど、特定の副原料を使用して発酵させたものもビールに含む場合があります。

 

ビールは、発酵に用いる酵母の種類によって、ラガービールとエールビールに分けることができます。

 

ラガー酵母で下面発酵させて作るのが、ラガービールです。
キレのある苦味と、ゴクゴクと飲める爽快なのどごしが楽しめます。
日本で発売されている約99%のビールは、こちらのラガービールです。

 

一方で、エールビールは、エール酵母を用いて上面発酵させて作ります。
フルーティーな香りと、ワインのような味を楽しめるのが特徴です。

 

また、ビールと間違えられやすい発泡酒は、麦芽の使用割合が50%未満で、発泡性のあるアルコール飲料のことを指し、製造途中で加える副原料に一切の制限がありません。
オレンジピールを原材料に使用しているホワイトビールや、果実と一緒に熟成させるランビック・ビールは、日本の酒税法においては発泡酒扱いとなります。

 

なお、この記事では、麦芽比率が異なる発泡酒も広義のビールとして扱います。

醸造酒とは

醸造酒とは、原材料を酵母によってアルコール発酵させて作るお酒のことです。
蒸留などのプロセスを踏まずに、アルコール発酵させたままの状態で飲まれるもので、ビールはもちろん、日本酒やワイン、紹興酒なども含まれます。

 

なお、醸造酒を熱し、アルコールを気化させたあとで、蒸気を再び液体に戻すと、焼酎やウィスキーなどの蒸留酒が完成します。
醸造酒と蒸留酒の相違点は、アルコール度数の高さです。
醸造酒のアルコール度数がおよそ5~16%なのに対し、蒸留酒は25~40%以上のものがほとんどです。

ビールの原材料

ビールの主な原材料は、麦芽とホップ、酵母、水の4種類です。
以下では、それぞれの原材料の特徴を詳しく解説します。

麦芽

麦芽は、発芽した大麦の芽と根っこを取り除いてから熱風にさらし、焙燥させたものを指します。
大麦の品種には二条大麦と六条大麦の2種類があり、ビール作りで使用されるのは二条大麦です。

 

また、麦芽は焙燥温度の違いによって2つに分類できます。
80℃の低温で時間をかけながらじっくりと作られるものがベースモルト、100℃以上の高温で作られるものがスペシャルモルトです。

 

低温で時間をかけて加熱した場合は淡色、高温で加熱した場合はカラメルのような色と、加熱方法によって、麦芽はさまざまなカラーに変化します。
使用する麦芽の色の濃さによって、ビールの色合いやコク、フレーバーを調整することが可能です。
ただし、焙煎したモルトの使用割合を増やすと、糖化がうまく進まず、ビールの製造工程に影響が出てしまうので、注意が必要です。

 

現在ビールには150種類以上のビアスタイルがあり、そのすべてに色の指標が存在します。
代表的な指標はSRMとEBCの2種類です。

SRMは、アメリカを中心に広く普及しており、EBCは、ヨーロッパを中心に広く普及しています。
SRMは1から56まで、EBCは2から110までの数値があり、この数値が大きいほどビールの色が濃いことを意味します。

ホップ

ホップは、つる性の植物で、ビールに苦味と香りをつける役割があります。
ホップは松ぼっくりに似た形をしていて、雌しべの毬花(まりはな)とよばれる部分が、ビール作りに使用されます。

 

また、泡持ちを向上させたり、ビールの腐敗を防ぐ殺菌効果があったりと、優れた力があるのも特徴の一つです。

 

ホップには、ホップ精油やホップ樹脂、ポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれており、それぞれがビールにおいて大切な役割を果たしてくれます。
ホップ精油は、ホップを煮沸することによって気化する、芳香のある成分で、ビールの香りや質に大きく影響します。

 

ホップ樹脂は、ビールの苦味や泡を長持ちさせる成分が含まれており、ホップの種類によって苦味が異なるのが特徴です。
ポリフェノールは、麦汁に溶け込み、ビールの濁りを取り除く作用があります。

酵母

酵母は、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物のことを指し、地球上のあらゆるところに生息しています。
ビールになる前の麦汁をビールに変化させるという、大事な役割を担っています。

 

そのほかにも、麦汁に含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに分類する機能と、エステルという香り成分を生み出す機能があり、ビールを作るにあたっては大切な存在です。

 

また、酵母にはエール酵母とラガー酵母の2種類があります。
エール酵母は上面発酵する際に、ラガー酵母は下面発酵する際に用いられます。

 

エール酵母は15~25℃付近で活発に発酵しますが、低温ではほとんど発酵できません。
反対に、ラガー酵母は幅広い温度帯で発酵が可能で、特に低温での発酵が活発です。

水は、ビールの原材料として、およそ90%を占めていることをご存じでしょうか。
そのため、水の種類によってできあがるビールの味が変わってきます。

 

ラガービールなどの淡色ビールには軟水が適しており、エールビールなどの濃色ビールには、硬水がもっとも適した水の硬さとなっています。
日本の水はミネラル量が少ない軟水のため、ラガービールが主流です。

 

また、水はビールの品質にも大きく関わってきます。
無色透明で無味無臭、生物的に汚染されていないなどの厳しい水質条件をクリアした水だけが、ビール作りに適しています。

ビールの製造工程

ビールの製造方法は、製麦、ミリング、仕込み、発酵、貯蔵の5つの工程に分けられます。
工程が一つでも抜けてしまうと、おいしいビールはできあがりません。
ここでは、おいしいビールを作るために必須の工程を、詳しく紹介します。

工程➀製麦

ビールを作る際、初めの工程となるのが、麦をビールの原材料である麦芽へと変化させる製麦という作業です。

 

また、製麦には3つの工程があります。

 

製麦の工程

  1. 浸麦
  2. 発芽
  3. 焙燥

大麦を水に浸して発芽を促す工程を、浸麦といいます。
発芽を促すのと同時に、ホコリや雑味を取り除いてくれる大事な工程です。

 

次に発芽が行われ、硬かった大麦の粒が成長することによって、やわらかくなります。
最後に行われるのが、焙燥です。
やわらかくなった大麦に約80℃の熱風を送り込むことで、発芽を止めて乾燥させます。
焙燥の温度によって、ピルスナーモルト(約85℃)、ペールモルト(約85~90℃)、ウィーンモルト(約90~100℃)、ミュンヘンモルト(約100~110℃)に分かれます。

工程②ミリング

ミリングとは、麦芽を砕いてでんぷんを抽出しやすくする作業のことです。
麦芽は、砕くことででんぷんが抽出されやすくなります。

 

ミリングを終えたあとに白っぽく見えるものが、でんぷんです。
でんぷんは、ビールの味や色に大きく影響します。

 

また、粉砕したあとの麦皮も、麦汁をろ過する際にろ過剤として活躍してくれます。

工程③仕込み

ミリングで細かく砕いた麦芽と、米やコーンなどの副原料を温水と混ぜ合わせて、麦汁を作る工程を仕込みといいます。

 

仕込みに最適な温度と時間を保つことで麦芽内の酵素がはたらき、そのはたらきによってでんぷんが糖へと姿を変えたものが、糖化液です。

 

その後、糖化液をろ過してホップを加え、煮沸していきます。

工程④発酵

ビールのもととなる麦汁が完成したら、麦汁を5℃程度で冷却し、発酵タンクへ移したあとに酵母を加えます。
酵母は、麦汁に含まれる糖を食べて、アルコールとビールの泡である二酸化炭素を生み出すという役割があります。
エール酵母の場合は16~24℃で3~4日間発酵、ラガー酵母の場合は10℃前後で7~10日間の発酵が必要です。

 

また、できあがるビールにさらに強い香りをつけたい場合は、発酵中の段階でホップを入れましょう。
この作業をドライホップといいます。

工程⑤貯蔵

発酵が完了したビールは貯酒タンクに移動され、0℃ほどの低温で2週間から1か月ほど貯蔵されます。

貯蔵されているあいだに、ビールは時間をかけてゆっくりと熟成されるため、毎日の温度管理は非常に大切です。

熟成が完了したビールはろ過され、お馴染みの琥珀色のビールが完成します。

ビールの醸造におけるポイント

醸造の際に大切なポイントは、水質条件をクリアした水質の高い原材料を吟味して使用することです。
優れた原材料や水質条件をクリアした水が手に入る立地は、ビール作りにおいて非常に優位にはたらいてくれます。

 

ビール作りは非常に奥が深く、原材料の組み合わせや配合量、温度などを少し変えるだけで、唯一無二のビールが仕上がります。

関連記事:ビールの醸造における水の重要性を解説!

醸造での繊細な作業が、おいしいビール作りのカギ

本記事では、ビールの醸造プロセスについて、原材料から製造工程、醸造する際のポイントを紹介しました。

 

ビール作りは非常に奥が深く、温度や原材料の配合を少し変化させるだけで、味が大きく変わります。
また、水質条件をクリアしている土地や高品質な原材料、設備が手に入ることは、ビールを作る際、非常に優位にはたらいてくれます。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、ビール醸造設備の販売や醸造士育成プログラムなど、新規事業の立ち上げをサポートしています。
ビールの醸造や設備に関してさらに詳しく知りたい方は、ぜひスペントグレインにご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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