ビール醸造におけるワールプールの重要性とは?

近年、クラフトビール市場は拡大を続けており、醸造の過程や技術についての知識を身につけることが必要です。
特にワールプールは、ビールの品質を左右する重要な工程です。

本記事では、ワールプールの役割や具体的な工程、使用する設備について解説します。
これから醸造所の立ち上げや事業拡大を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

【目次】

ワールプールの役割

ワールプールは、ビール醸造において麦汁の清澄度を高め、最終製品の品質向上を目的とした重要な工程です。
麦汁内に含まれる不要な固形物や凝固タンパク質(トルーブ)を効果的に除去します。

ワールプールという名称は「渦巻き」を意味し、その名の通り、タンク内で麦汁を渦状に流し込むことで固形物を中央に集めます。
クリアで透明度の高い麦汁を発酵工程に送ることができます。

さらに近年では、ホップの揮発性成分を抽出する「ワールプールホッピング」という技術が注目されています。
この方法では、ワールプール中にホップを投入し、熱に弱い香り成分を効率的に引き出します。

フルーティーで華やかなアロマをビールに加えることができるため、活用を検討してみてください。

ワールプールの工程

ここでは、ワールプールの具体的な内容と特徴について解説します。
具体的なポイントや注意点も解説しますので、順番に確認してください。

麦汁の煮沸

ワールプールの工程は、麦汁の煮沸を経て始まります。
この工程では、糖化を終えた麦汁を高温で加熱し、バクテリアの除去や酵素の活動を停止させることが目的です。

また、煮沸中にはホップを投入してアルファ酸を異性化させ、ビール特有の苦味を付け加えます。
さらに、タンパク質や脂肪酸が凝固して沈殿しやすくなるため、後続のワールプールで効率よく除去できるのです。

煮沸中のホップ投入は、苦味成分を引き出す重要なプロセスですが、香り成分は熱で飛びやすいため、香りを重視する場合には次のワールプール工程で工夫が必要です。

ワールプールの実施

煮沸を終えた麦汁をワールプールタンクに移送すると、タンク内で液体を渦巻状に流し込みます。
この動きにより、不要なタンパク質やホップ粕などの固形物(トルーブ)がタンクの中心に集まる仕組みです。

凝集した固形物を取り除くことで麦汁がクリアになり、ビールの透明度を向上させることができます。

また、この工程で注目されるのが先述した「ワールプールホッピング」の技術です。
煮沸中ではなくワールプール中にホップを投入します。

これにより苦味成分を抑えつつ、揮発性の高い香り成分を麦汁に効率よく移せるようになります。
特にフルーティーで華やかなアロマを求めるIPAなどのクラフトビールで重宝されているため、把握しておくことが重要です。

ただし、ホップの投入量が多すぎるとトルーブが十分に固まらず、麦汁の清澄度が低下する可能性があるため、適切なタイミングと量を管理することが重要です。

発酵タンクへの移送

ワールプールで清澄化した麦汁は、熱交換器を通して急速に冷却され、発酵タンクへ移送されます。
急速冷却は非常に重要で、その理由は以下の2つです。

オフフレーバーの防止

麦汁が高温のままだと、DMS(硫化ジメチル)と呼ばれるオフフレーバーが生成されやすくなります。
DMSは煮沸中に揮発しますが、その前駆体であるSMMが残っているため、30〜40℃程度の温度で再びDMSが生成されてしまうのです。

急速冷却を行うことで、このリスクを防ぐことができます。

関連記事:ビール好きは知っておきたい!ビールのオフフレーバーとは

雑菌の繁殖を抑制

高糖度の麦汁は雑菌の繁殖に適した環境であるため、迅速に20℃前後の発酵温度まで冷却してから、酵母を接種する必要があります。
これにより、雑菌の繁殖を防ぎ、酵母が主導的に発酵できる環境を整えるのです。

急速冷却を効率的にするには、高性能の熱交換器が欠かせません。
醸造所の規模や必要な生産量に合わせて選定することが重要です。

ワールプールに必要な沈殿槽

ワールプール工程で使用される沈殿槽は、麦汁から不要な固形物を効率的に分離し、クリアな麦汁を得るための重要な設備です。
ビールの品質向上や安定した醸造プロセスを支える役割を果たします。

沈殿槽は底が平らな円筒形の設計が一般的で、麦汁が接線方向から注入され、渦を生み出す構造になっています。
この渦が固形物を中心に集めることで、分離効率が向上します。
また、高さと直径の比率(H/D)は1:3が推奨され、沈殿領域と麦汁量のバランスを取っています。

さらに、麦汁の排出口は底に近い位置に配置され、トルーブ(凝固物)を残したままクリアな麦汁だけを発酵タンクへ移送可能です。
断熱材やウォータースプレーシステムが備えられているタンクでは、揮発性成分の損失を防ぎ、内部の衛生状態を保つことができます。

ワールプールを活用した高品質な醸造への一歩

いかがでしたでしょうか?ビール醸造におけるワールプールの重要性についてお分かりいただけたかと思います。

麦汁の清澄化や香り成分の抽出を効率的にするワールプール工程は、品質の高いビールを醸造するうえで欠かせないポイントです。
さらに、必要な設備や工程の工夫によって、風味や品質を一層向上させることができます。

マイクロブルワリーやクラフトビールの開業支援を行うスペントグレインでは、醸造家のニーズを満たす設備を提供しています。
現役醸造家による専門的なアドバイスやカスタマイズも可能です。

高品質な設備で効率的な醸造を実現したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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