「ケグ」と「カスク」の違いとは?8つの観点から見た違いについて

ブルワリーの新規立ち上げや事業拡大を目指している方に向けて、「ケグ」と「カスク」の違いについて解説します。 ビールの保管には、ケグまたはカスクが使用されます。 しかし「ケグとカスクにはどのような違いがあるのか?」「どちらで保管するべき?」と悩む方は少なくありません。 そこで今回の記事では、ケグとカスクの違いについて、8つの観点から解説します。 この記事を参考にすることで、どちらで保管すれば理想のビールに近づけるのかを理解できるでしょう。

【目次】

id=”title1″ class=”wp-block-heading”>ケグとカスクの違い

では、『ケグ』と『カスク』の違いを解説します。 素材や形、管理方法、味など、さまざまな視点から違いを見ていきましょう。

違い1:素材

まずは素材の違いから比較していきます。 【素材の違い】
  • ケグ:ステンレス製・プラスチック製
  • カスク:木製・ステンレス製・紙製
ケグとカスクでは使用される素材が異なり、ケグはほとんどがステンレス製です。 しかしカスクは木製であったり、ステンレスや紙で作られていたりすることもあります。 どちらも樽という点では共通していますが、ケグはステンレスやプラスチック製が多く、中のビールに負担をかけにくいとされています。 ケグはカスクよりも炭酸が柔らかく、鮮度が保たれやすいという特徴があります。 そのため、ケグとカスクの選択によってビールの味わいが変わる可能性があるでしょう。 炭酸がしっかりとしたビールを製造するのであれば、カスクのほうが良いかもしれません。

違い2:注ぎ方

続いては注ぎ方の違いについてです。 【注ぎ方の違い】
  • ケグ:樽の上部に注ぎ口がありカプラーを注ぎ口に装着し、炭酸ガスの圧力によって注ぐ
  • カスク:樽の横に注ぎ口があり、重力を使って注ぐ
ケグとカスクでは注ぎ方にも違いがあります。 ケグでは樽の上部に注ぎ口があり、注ぎ口の形状にあったカプラーと呼ばれるパーツを装着するのが基本です。 注ぎ口の形状にはD・S・A・G・U・Mなどがあり、それぞれの形状に適したカプラーを準備する必要があります。 また、注ぐ際には炭酸ガスの圧力を利用します。 一方、カスクは樽の横に注ぎ口がある点が特徴です。 炭酸ガスの圧力ではなく重力で注ぎます。 これは、カスク内のビールがほぼ無炭酸である場合が多いためです。 炭酸ガスの圧力を活用できない程度の炭酸しか含まれていません。 以上のように、ケグとカスクは素材だけでなく注ぎ方にも大きな違いがあります。

違い3:形

ケグとカスクには形の違いもあります。 【形の違い】
  • ケグ:縦型で寸胴の形状
  • カスク:横置きの木樽
縦置きで設置される樽がケグで、横置きで保管される木樽がカスクです。 形状は見た目で判断しやすいため、違いを知っておくと簡単に区別できます。

違い4:詰めたあとの品質

ここでは、ケグとカスクに詰めた後の品質の違いについて解説します。 【詰めたあとの品質の違い】
  • ケグ:炭酸ガスによって品質が安定する
  • カスク:発酵が続くため飲むタイミングによって品質が変わる
ケグに保存されているビールは、炭酸ガスが多く含まれています。 そのため炭酸ガスの効果で品質が安定し、いつ飲んでも同じ味わいを楽しめます。 しかしカスクは違います。 カスクの中のビールには炭酸ガスがほとんど含まれておらず、ろ過もしないため品質が安定しにくく発酵が続きます。 そのため、飲むタイミングによって味わいが変化する点が特徴です。 どちらが良いかは、提供するタイミングや目的によって変わります。 ただし、ケグでは品質が安定しやすく、カスクでは発酵が続くという違いを知ることは、ビール製造において重要です。

違い5:管理方法

ビールの品質や味わいは管理方法によって変化しますが、ケグとカスクでは管理方法が異なります。 【管理方法の違い】
  • ケグ:低温保存が可能で管理が容易
  • カスク:発酵が進むため温度・色・香りの管理が必要
ケグは先に解説したように、炭酸ガスによって品質が安定します。 そのため低温で保存をすれば、管理に手間がかかりません。 頻繁に様子を見る必要がなく、そのままの品質で保管できます。 しかしカスクで保管されるビールは、炭酸ガスが少なく、保管中も発酵が進んでしまいます。 そのため温度や色、香りが変わっていないか、管理中に頻繁に確認する必要が生じます。 発酵具合を確かめなければならないため、カスクで保管するビールのほうが管理が難しいといえます。

違い6:味

ケグとカスクの違いについて、続いては味の観点から解説します。 【味の違い】
  • ケグ:一般的なビールよりは炭酸が柔らかくて新鮮な味わい
  • カスク:ビールが持つ味や香り、コクをダイレクトに感じられるが、発酵により味わいが変わることもある
ケグはステンレスもしくはプラスチックで作られています。 そのためビールの鮮度を保ちやすく、新鮮な味わいを感じられるでしょう。 一般的なビールよりも炭酸が柔らかい点が特徴です。 対してカスクは、炭酸による爽快感よりも味や香り、コクを味わいたい方に向いています。 「リアルエール」とも呼ばれており、無炭酸で素材の味を感じられるのがカスクで保管されたビールです。 ただしカスクの中のビールは、保存中に発酵が進みます。 そのため、発酵によって味わいが変化する場合があります。 新鮮なビールであればケグで保管したほうを、まろやかでコクのあるビールであればカスクで保管したほうがよいでしょう。

違い7:容量の種類の豊富さ

ケグとカスクにはさまざまな違いがありますが、容量の種類もそのひとつです。 【容量の種類】
  • ケグ:7L・10L・15L・19L・20L
  • カスク:約40L
メーカーにより違いますが、多くのビールメーカーの場合、ケグでは10Lもしくは20Lを使っていることが多いようです。 中には7Lや19Lなどのケグを使っているメーカーもあります。 カスクの場合は約40Lと統一されています。 正確にいうと、1ファーキンである39.75Lがカスクの容量です。 ケグとカスクは同じくビールを保管する樽でありながら、容量の種類にも差があります。

違い8:リターナブル性

最後にご紹介するのは、リターナブル性についてです。 【リターナブル性】
  • ケグ:洗浄をしたうえで再利用が可能
  • カスク:ガーデニング資材などとして再利用可能
ケグは基本的に、ビールを保管する役割を終えたら、洗浄され再度使用されます。 ただし再利用されず、使い捨てとされるケグも。 一般的にケグのほうがリターナブル性が高いとされていますが、再利用されず捨てられてしまうこともあるでしょう。 対してカスクは、ビール樽として再利用されることはほとんどありません。 利用されるとすれば、ガーデニング資材として鉢やプランターとしての生まれ変わりです。 手間がかかるとはいえ、カスクもビール樽としての役割を終えた後、何らかの形で再利用されています。 そのためどちらがリターナブル性に優れているかは、ケースバイケースです。 使い捨てのケグの場合、カスクのほうがリターナブル性に優れているかもしれません。 しかしそのままビール樽として再利用できるケグであれば、カスクよりもリターナブル性に優れていると言えます。 リターナブル性については、どちらが優れているかは一概には言えません。

ケグとカスクの違いはビールの品質にも影響を及ぼす

いかがでしたでしょうか? この記事を読んでいただくことで、ケグとカスクの違いについてご理解いただけたと思います。 ケグとカスクは形状や注ぎ方だけでなく、保管しているビールの品質にも影響を与える要素です。 これからブルワリー開設を検討している方は、本記事の内容を参考にしてください。 わたくしどもスペントグレインでは、ビール醸造の専門家が、ブルワリー開業をサポートいたしております。 ノウハウを提供し、ブルワリー成功を支援します。ぜひお気軽にスペントグレインまでご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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