ビールのSRMとは?EBCとの違いと味わい・香りへの影響について

ビールにはさまざまな色がありますが、色の違いについて不思議に思われたことはありませんか?
実はビールには『SRM』と呼ばれる基準値があります。
「黒ビール」「白ビール」と呼ばれるものもありますが、色によって味わいや香りも違うもの。
SRMを理解することは、製造者として重要です。

 

そこで今回の記事では、SRMとはビール製造にどのような影響を与えるか解説します。
参考にしていただければ、色によるビールの味の違いや、製法の違いについておわかりいただけるはずです。

【目次】

  • ビールにおけるSRMとは
  • SRMとEBCは何が違う?
  • ビールの色が変わる理由
  • SRMによるビールの色の種類
  • 黒ビールや白ビールとの違いはある?
  • ビールの色の違いで味も変わる?
  • ビールにおけるSRMとは

    SRMとは、ビールにおける色の濃淡の基準のことです。
    ビールの中にも明るい色のもの、濃い色のものとさまざまな種類があります。
    色に関する基準値であるのがSRMです。
    数値が低いほど薄い色のビールであり、高くなるほど黒に近い濃い色となります。

    SRMとEBCは何が違う?

    SRMとEBCの違いは、主にビールが提供される地域によるものです。
    SRMは標準参照法のことであり、米国醸造化学者学会が採用した、全世界で共通する基準です。
    そのため、世界中でSRMが採用されています。

     

    しかしEBCはヨーロッパ基準であり、おもにヨーロッパ各国で使用される基準。
    そのため数値にも違いがあり、SRMは2~40で表されますが、EBCでは4~79で表記されます。

     

    しかしSRMとEBCとは、どちらも「ビールの色の違い」を示していることに変わりはありません。
    色の濃淡を表現する数値である点は同じですが、SRMとEBCは採用される地域に違いがあります。

    SRMと似ているIBUとは?

    ビールの世界では、色を表すSRMと並んで、もう1つよく見かける指標がIBUです。

    IBUとは「International Bitterness Units(国際苦味単位)」の略称で、おもにホップ由来の苦味の強さを数値で示します。

    数値が高いほど苦味が強く、一般的にラガー系ビールで10〜20、IPAなどでは60〜100を超えることもあります。

    SRMが“見た目の色合い”を示すのに対して、IBUは“味覚としての苦さ”を表すものです。

     

    ただし、IBUの数値だけでは、実際に感じる苦味を正確に知ることはできません。

    たとえば、甘味の強いビールやアルコール度数が高いビールは、IBUが高くても苦味が控えめに感じられることがあります。

    反対に、ドライなビールではIBUが低くても苦味を強く感じる場合もあります。

     

    このように、IBUとSRMはそれぞれ独立した指標です。

    どちらもビール全体の印象を大きく左右します。

    両方の数値を参考にすることで、ビールの外観や香り、味わいをより深く理解できるでしょう。

     

    たとえば「黒ビール=苦い」と思われがちですが、実際にはSRM(色)が高くてもIBU(苦味)が控えめな黒ビールもあります。

    一方で、色が淡くてもIBUが高く、苦味を感じるビールも存在します。

    自分の好みに合ったビールを見つけるためには、これら2つの基準を知っておくのがおすすめです。

    ビールの色が変わる理由

    ビールの色は、麦芽焙煎の度合いにより変わります。
    麦芽は高温で焙煎するほど濃い色になり、焙煎後の色はビールの色にも影響を与えるためです。
    たとえば、85~90℃ほどの低温焙煎では『ペールモルト』と呼ばれる薄く明るい色合いになります。
    しかし、200~220℃の高温で焙煎した場合は、黒に近い色の『チョコレートモルト』になります。
    このように、ビールの色が変わる理由は焙煎後の麦芽の色にあります。

    SRMによるビールの色の種類

    ここでは、SRMによるビールの色の種類について解説します。

    【SRMと色の種類】

    • 2~10:薄い黄色
    • 11~20:オレンジ・アンバー
    • 21~40:黒

    SRMとは数値が大きくなるほどビールの色が濃くなるため、21以上になるとほとんど黒色に見えるでしょう。
    日本で多く飲まれているのは、SRM4~6程度の薄い黄色のビールです。
    11~20であれば、オレンジ色やアンバーに見え、ペールエールやアンバーエールなどが代表的となります。

     

    ビールの色は麦芽の焙煎具合の違いでもあり、味わいにも差が生じます。
    また、ビールを飲む方の好みによって、選ばれるビールが変わる可能性もあります。
    商品としてのビールの特徴を決める要素の一つが、SRMによるビールの色の種類です。

    黒ビールや白ビールとの違いはある?

    SRMとはビールの色分けであり、黒ビールや白ビールと言えるものもあります。
    ただし、SRMで黒く見えるからといって黒ビール、明るい色だからといって白ビールと呼べるわけではありません。

     

    もともと黒ビールとは、色の濃い麦芽を使用した、黒っぽく見えるビールのことです。
    そして白ビールは、黒褐色のビールが一般的だった時代に、明るい色が珍しいことから白ビールと呼ばれるようになりました。
    そのため色による分類であることに間違いはありません。

     

    しかしSRMとはビールの色の基準を厳格にしたものです。
    ビールには色のグラデーションがあり、黒く見えるビールの中でも、SRMではいくつにも分類されています。
    つまりSRMの基準を用いれば、厳密に黒ビール・白ビールとは分けられないでしょう。
    ただし黒っぽく見えるビールを黒ビール、明るい色のビールを白ビールと呼ぶため、決定的な違いがあるわけでもありません。

    ビールの色の違いで味も変わる?

    SRMとは色だけでなく、ビールの味わいにも影響を及ぼす要素です。
    黒っぽいビールと白っぽいビールでは、味や香りに違いがあります。
    以下では、黒と白の両方の観点からその違いを解説します。

    黒っぽいビールの味や香り

    まずは黒っぽいビールの味と香りについてです。

    【味と香り】

    • 味:麦の甘みとコクが感じられる
    • 香り:カラメルやトーストの焦げ、カカオ、コーヒーのように感じられる香ばしさがある

    よく焙煎されていることもあり、カラメルやトーストの焦げのような香りがすると例えられます。
    カカオやコーヒーのような香ばしさが特徴です。
    味は麦本来の甘味やコクが感じられる、深みのある味わいとなっています。
    そのため料理にあわせる際には、デミグラスソースなど、濃いめのソースにも負けない濃厚さを感じられるでしょう。

    代表的な黒ビールの種類

    黒ビールには複数の伝統的スタイルがあり、それぞれに歴史や味わいの個性があります。

    どれもSRM値が高く濃い色合いですが、苦味や甘味、飲みやすさは異なります。

    特に知っておきたいのは、以下の4つです。

    • スタウト
    • ポーター
    • デュンケル
    • シュバルツ

    順番に、それぞれの特徴や楽しみ方を詳しく見ていきましょう。

    スタウト

    スタウトは、アイルランドやイギリスで発展した黒ビールの代表格です。

    特徴的なのは強いロースト感で、コーヒーやカカオを思わせる深い苦味が感じられます。

    ギネスに代表される「ドライスタウト」は、泡がきめ細かくクリーミーで、口あたりはなめらかです。

     

    甘味を加えた「スイートスタウト」や乳糖を加える「ミルクスタウト」など多彩な派生スタイルもあり、同じスタウトでも味わいは幅広く楽しめます。

    肉料理や濃厚なデザートと相性がよく、食中・食後どちらでも存在感を発揮するビールです。

    ポーター

    ポーターは18世紀のロンドンで人気を集めたビールで、スタウトの祖先ともいわれています。

    スタウトよりも軽やかで、香ばしい麦芽の風味とほどよい甘味が広がります。

    焦げたような苦味は控えめで、チョコレートやキャラメルのような風味を感じられるのが特徴です。

     

    クラフトビールの分野では、ホップを強調した「アメリカンポーター」や、スモーキーな香りを加えたものなど、さまざまなバリエーションが生まれています。

    重すぎず軽すぎない飲み口なので、黒ビール初心者にもおすすめのスタイルです。

    デュンケル

    デュンケルはドイツ南部バイエルン地方を代表する伝統的な黒ラガーです。

    「デュンケル」はドイツ語で“暗い”を意味し、その名のとおり濃い茶褐色をしています。

    麦芽の甘味が際立ち、カラメルやパンのような香ばしさが特徴です。

    ロースト感は控えめで、苦味も穏やかで、まろやかな口あたりが楽しめます。

     

    アルコール度数も中程度で飲みやすく、日常的に親しまれているスタイルです。

    ソーセージやプレッツェルなど、ドイツ料理との相性もよく、現地の食文化と深く結びついています。

    シュバルツ

    シュバルツは「黒」を意味するドイツ語で、その名のとおり真っ黒な色合いをしていますが、味わいは意外と軽やかです。

    ラガー特有の爽やかな炭酸感があり、苦味や香ばしさも感じられますが、後味はすっきりとしていて飲みやすいのが特徴です。

     

    ロースト麦芽の風味は控えめで、黒ビール特有の重さが少ないため、幅広い層に人気があります。

    夏でも飲みやすく、グリル料理や軽めのおつまみともよく合います。

    黒ビール初心者にもおすすめのスタイルです。

    白っぽいビールの味や香り

    それでは続いて、白っぽいビールの味や香りについてご紹介します。

    【味と香り】

    • 味:苦みが抑えられており酸味を感じる
    • 香り:フルーティーで爽やかな香り

    白っぽいビールは黒っぽいビールに比べてコクは少ないものの、爽やかな印象が特徴です。
    バナナやスパイスのようなフルーティーで爽やかな香りと放つため、スパイスが多めの料理によく合います。
    また味はビール特有の苦味が少なく、酸味が感じられるもの。
    そのためビールが苦手な方でも抵抗なく飲めるタイプのビールです。

    代表的な白ビールの種類

    白ビールは淡い見た目とやわらかな口当たりが特徴で、黒ビールとはまったく異なる個性を持っています。

    小麦を多く使用することで白濁した色合いになり、爽やかな香りが広がるのが魅力です。

    ここでは、特に代表的な2種類を紹介します。

    • ヴァイツェン
    • ベルジャンホワイト

    どちらも小麦をベースにしていますが、香りや風味に独自の違いがあります。

    それぞれの個性を詳しく見ていきましょう。

    ヴァイツェン

    ヴァイツェンはドイツ・バイエルン地方で生まれた小麦ビールです。

    小麦麦芽を多く使うことで、バナナやクローブのような独特のフルーティな香りが生まれます。

    さらに、酵母由来のスパイシーさが加わり、香りに奥行きが出ます。

    泡持ちがよく、見た目も華やかで、口に含むとやさしい甘味とまろやかな舌触りが広がります。

    苦味はほとんどなく、ビールが苦手な人にも親しまれやすいスタイルです。

    肉料理だけでなく、サラダや魚介料理とも相性がよく、食中酒としても楽しめます。

    ベルジャンホワイト

    ベルジャンホワイトは、ベルギーで伝統的に造られてきた小麦ビールで、「ウィットビール」とも呼ばれます。

    特徴的なのは、副原料として加えられるスパイスで、オレンジピールやコリアンダーシードがよく使われます。

     

    口に含むと、柑橘系の爽やかな香りとスパイシーな余韻が広がり、清涼感のある味わいです。

    見た目は白く濁っていて柔らかな印象を与え、夏の暑い日にとくに人気があります。

    軽やかな飲み口で、サラダやフルーツを使った料理、デザートともよく合います。

    SRMとはビールの色の濃度の基準

    いかがでしたでしょうか?
    この記事を読んでいただくことで、SRMとはビールの色の濃淡を表す基準であることがご理解いただけたと思います。
    SRMはビールの色についての基準ですが、ビールは色によって味わいや香りが異なることも知っておきたいものです。

    もし色も含めてビールの製造についてお悩みのことがありましたら、わたくしどもスペントグレインにご相談ください。
    ブルワリーのコンサルティングも行っており、理想のビールづくりのサポートをさせていただきます。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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