クラフトビール市場におけるマーケティングのコツを解説

味にこだわったクラフトビールを製造するだけでは、“支持されるビール”を販売することはなかなか難しいかもしれません。

そのため、数多くの消費者に手に取ってもらうには、マーケティングに力を入れることが鍵になります。

 

そこで本記事では、自社のクラフトビールを知ってもらうためのマーケティングのコツを徹底的に解説します。

近年の動向を掴みながら、自信作を人気商品にしたいとお考えの事業者様はぜひ参考にしてください。

【目次】

近年のビールトレンド

マーケティング方法を知る前に、クラフトビール業界の最近のトレンドを掴んで、どのような戦略を立てるとよいかを考えていきましょう。

市場や消費者の動向

キリンホールディングスの推計によれば、近年の発泡酒や第3のビールを含めたビール類全体の売り上げは、減少の一途を辿っており、ビールの市場全体が縮小傾向にあります。

 

しかし、そのなかでもクラフトビールは相反するように年々シェア率を伸ばしており、市場の拡大に成功しているのです。

この成功の要因には、クラフトビールの人気が若年層のあいだで広がっていることが挙げられます。

 

株式会社マクロミルが実施したビール消費に関する実態調査では、若年層が求めるのは、「苦みが少なく、飲みやすいビールである」という結果が出ています。

その点、クラフトビールはご存じの方も多いように、芳醇な香りとコクを楽しむ「エールビール」です。

 

つまり、若者のビールに求めるニーズとクラフトビールの飲みやすさが、ぴったりと当てはまっているというわけです。

また、クラフトビールの魅力といえば、種類の多さですが、この「多くのなかから選べる楽しさ」も若者を惹きつけています。

 

たとえば、「原料の生産地にこだわる」「地域の特産品を使用する」といった一般的なビールとは一線を画す多様性が、若者に“刺さっている”のです。

近年、クラフトビール市場の需要が伸びているのは、上記のような若者のトレンドが大いに関係していると考えられます。

 

参照元:ビール類市場規模とクラフトビール市場構成比 – 日経ビジネス

参照元:今、Z世代が求めるビールとは?【ビール消費に関する実態調査】- マクロミル公式note

酒税法改正の影響

クラフトビール市場が拡大している背景には、1994年に改正した酒税法も密接に関わっています。

 

この法改正では、ビールを製造するための「酒類製造免許」の取得条件として定められている、年間最低醸造量が2,000kLから60kLまで引き下げられました。

これにより、大手メーカーにしか許されていなかったビール製造への間口が、個人にも広がり、日本全国に小さな醸造所が誕生したのです。

 

一時は、クラフトビールブームは沈静化したものの、2024年現在では全国で800か所以上の醸造所が稼働しており、その勢いはとどまることを知りません。

現在では、各醸造所自慢の個性豊かなビールが世に生まれ、新しいビールのジャンルを確立させるに至りました。

マーケティング活動の基本プロセス

クラフトビール市場の動向を理解していただいたところで、ここからは、実際のマーケティングの方法を具体的に深掘りしていきます。

マーケティングは、以下の基本プロセスに沿って行うのがセオリーです。

市場調査

市場調査は、市場の需要や市場規模、消費者の求めているものは何かを徹底的に調べることです。

 

調査では、どのような属性の消費者がいるのかを明確にして、性別や年代だけでなく、職業や年収、家族構成などの情報も収集します。

マーケティングの基本は市場調査から始まりますが、このステップを疎かにすると消費者のニーズに合っていない商品を販売してしまう可能性が大いに高まります。

 

市場調査によってニーズにマッチした商品を販売できれば、効率的に売り上げを作り出すことができるので、商品の開発前に念入りに調査するのが大切です。

戦略設計

市場調査によってある程度、データを収集できたら、これらを基に今後展開していくべき戦略を設計します。

 

開発する商品はどのようなビールで価格はいくらか、消費者にはどのように提供するのか、などを細かく設定していきます。

広告宣伝

戦略がかたちになってきたら、次に着手するのは広告宣伝です。

ビジネスにおいて、商品が売れない理由の一つに、「消費者への認知不足」があります。

 

どれだけおいしいビールを開発・製造できたとしても、広告宣伝を行って消費者に認知されなければ、話題にも上がらず売り上げは伸びません。

ですので、消費者に向けた広告宣伝が、非常に大切になるのです。

 

広告宣伝の方法は、テレビCMや新聞広告といった大掛かりなものから、イベントに出店する、SNSを活用する、といったものまで多岐に渡ります。

どのような媒体を利用して宣伝するのかは、商品によって最適解が異なりますが、若年層に人気のあるクラフトビールであれば、SNSでのPRが有効でしょう。

効果検証

商品は売りっぱなしにするのではなく、定期的な効果検証も必要です。

 

売上が好調だった場合は、“なぜ良かったのか”、逆に売れ行きが悪かった場合は“なぜ悪かったのか”を分析します。

プラス要因とマイナス要因を把握することで、さらなる業績の向上を目指せるため、結果を追求して、商品をブラッシュアップしていく必要があります。

クラフトビールのマーケティング成功事例

ここからは、国内外問わず、独自のマーケティング戦略でクラフトビールの業績を伸ばしている企業をご紹介します。

ヤッホーブルーイング

「よなよなエール」を看板商品として掲げるヤッホーブルーイングは、クラフトビール業界のトップを走りつづけています。

その成功の要因は、“訴求したい消費者”を明確にした商品開発にあります。

 

よなよなエールを参考にして、ヤッホーブルーイングが行った商品開発における、マーケティングの例を見ていきましょう。

 

よなよなエールが訴求した消費者像

  • 30歳前後の女性
  • 責任のある仕事をこなすOL
  • 休日はヨガ
  • 独身で子供がいない
  • ファッションや持ち物にこだわりがある

このように細かすぎるくらいにターゲット層を絞り込むのが、ヤッホーブルーイングのマーケティング戦略です。

 

また、ビール名もアンケートをしっかりとって、ターゲット層に刺さる独特なネーミングを採用したのも、功を奏しました。

ビールの陳列棚で目立てば、手に取ってもらえる機会が増えるだろうという狙いがあったからです。

 

その結果、よなよなエールの存在がターゲット層に響いて、口コミが広がり、売上を徐々に伸ばしていきました。

そして同社は、よなよなエールだけでなく、「水曜日のネコ」「インドの青鬼」など、数々のヒット商品を世に生み出しています。

株式会社あきた芸術村

「田沢湖ビール」を製造する株式会社あきた芸術村は、「3リットル飲めるビール造り」を目標に、地域に密着した商品の開発とマーケティングを実践しています。

 

彼らの強みは、秋田県産の食材を活用し、地元との強固な結びつきを形成している点です。

2023年には、秋田県横手市産のホップを使ったクラフトビールや、秋田米である「サキホコレ」を使用したお米のエールビールを販売しました。

地域に寄り添ったこの姿勢は、秋田の地に愛されるブランドとしての確固たる基盤を築き上げ、これまで愛されつづけています。

 

このようなマーケティング戦略によって、「地元のコミュニティに貢献している」と消費者に感じさせ、ブランドと消費者のあいだに強いつながりを生み出しているのです。

Brew Dog

海外のメーカーですが、スコットランド発のクラフトビールブランドBrew Dog(ブリュードッグ)も巧妙なマーケティング戦略を行って、成功した会社の一つです。

 

彼らによる、常識をひっくり返したマーケティングといえば、2009年に開始し、現在も毎年実施されている、クラウドファンディングの「Equity For Punks」です。

このクラウドファンディングに出資すると、「ビールが一生10%オフ」「経営に参加できる」といったユニークな特典がついた自社株が発行されます。

 

この施策は、開始当初話題となり、資金難に陥っていたBrew Dogを救う一手となりました。

現在でもBrew Dogは、イギリスを代表するクラフトビールメーカとして名を馳せています。

クラフトビールのマーケティングの+α

クラフトビールのマーケティングでは、ターゲットの消費者を明確にして商品開発を行うことや、広告宣伝に独自性を持たせることが重要なのはおわかりいただけたでしょうか?

 

そのほかに、マーケティングで積極的に意識したいことは、‟季節限定のビール“や‟短期ビール”の販売に力を入れることです。

そもそも希少性を売りにしているクラフトビールに、さらに付加価値をつけて消費者の購買意欲を上げるマーケティングの手法は、非常に有効です。

 

多種多様なビールが販売されているクラフトビール業界では「マーケティングの成功無くして、業界で生き残るのは困難である」といっても過言ではありません。

マーケティングの戦略をしっかり定めて、売れるビールを開発していきましょう。

関連記事:クラフトビール業界の現在の動向と将来へのアプローチを解説

クラフトビールのターゲット層を明確に決めて、効果的にマーケティングを行いましょう

今回の記事では、クラフトビール市場におけるマーケティングの方法を解説しました。

 

ターゲットとなる消費者の層を明確にして、どのようなビールを開発するのかを考えるのが“売れるビール”を造るファーストステップになります。

さらに、クラフトビールを支持する層は若年層が多いことから、SNSを活用して商品を宣伝できると、話題性が高まり認知してもらえる可能性が広がるでしょう。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、「売れるビールを造りたい!」という事業者様のためのブルワリーコンサルティングを行っております。

醸造設備の販売や施工工事などといったブルワリーに関するサポートもトータルで実施しておりますので、ぜひ弊社へご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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