クラフトビールのIBUとは?ビアスタイルごとの数値を紹介

クラフトビールの製造において、IBU(International Bitterness Units)は苦味の指標として重要な要素です。
しかし、IBUはあくまでビールの苦味を示す一つの基準であり、ビールの全体的な風味やバランスを判断するには、他の要素も考慮する必要があります。

 

本記事では、IBUの基本的な概念から、ビアスタイルごとのIBU数値まで詳しく解説。
新規事業や事業拡大を考えている経営者の皆様は、ビールの風味設計に役立ててください。

【目次】

IBUとは?

IBUとは、「International Bitterness Units(国際苦味単位)」の略で、ビールの苦味を数値で表す指標です。
この数値は、ビールに含まれる苦味成分を定量的に示し、世界中のビールの苦味を比較する際の基準となります。

 

一般的に、IBUの数値が高いほどビールの苦味が強くなります。
例えば、日本の標準的なビールのIBUは15〜30程度ですが、苦味が特徴的なIPAではIBUが50以上にのぼります

 

近年、日本でもクラフトビールが人気を集めるようになり、IBUが注目されるようになってきました。
これに伴い、ブルワリーの公式サイトやビアバーのメニューでもIBUが表示され、ビールの選択肢が広がっています。

IBUは何で決まる?

IBUの数値は主にホップによって決まります。
ホップの「球花」に含まれる「ルプリン」という器官に、ビールの苦味の元となる成分が存在します。
ルプリン中の「アルファ酸」は、煮沸によって「イソアルファ酸」に変化し、ビールに特有の苦味を与えます。
IBUは、このイソアルファ酸が麦汁にどれだけ溶け込んでいるかを計算した数値であり、数値が高いほどビールの苦味が強くなるのです。

 

使用するホップの品種によって、アルファ酸の含有量が異なるため、ビールの苦味にも違いが生じます。
さらに、ホップを煮沸する時間が長いほど、より多くのイソアルファ酸が生成され、IBUが高くなります。
また、ホップの使用量を増やすことでもIBUは高くなると覚えておくと良いでしょう。

 

関連記事:クラフトビールに欠かせないホップ!役割と代表的な種類をチェック

IBUはあくまでも基準

IBUはビールの苦味を示す指標として重要な役割を果たしますが、実際に感じられる味覚とは必ずしも一致しない場合があります。
IBUは計算上の苦味の単位であり、人間の味覚はそれだけでは決まらない複雑な要素を持っています。

 

ビールの味わいには、コクや旨味、甘みなどが絡み合い、全体のバランスが取れたものが美味しさを決定づけます。
そのため、IBUが高いからといって必ずしも苦味が強く感じられるわけではなく、逆にIBUが低くても苦味を感じる場合もあるのです。

【ビアスタイル別】IBUの数値

世界にはさまざまなビアスタイルが存在し、それぞれが独自の風味と苦味を持っています。

  • ヴァイツェン
  • IPA
  • ラガー
  • ピルスナー
  • フルーツビール

IBUは、そのビアスタイルごとの苦味の強さを示す指標であり、ビールの個性を理解する上で重要な要素でしょう。
ここでは、代表的なビアスタイルをIBUの観点から詳しく見ていきましょう。

ヴァイツェン

ヴァイツェンは、非常に飲みやすいビアスタイルであり、苦味がほとんど感じられないのが特徴。
IBUは一般的に10〜35程度と低く、ホップの存在感は控えめです。

 

その代わり、小麦麦芽を使用することで、まろやかな口当たりとフルーティーな風味が楽しめます。
バナナやクローブのような香りが特徴で、ビール初心者にも好まれるスタイルでしょう。

IPA

IPA(インディア・ペール・エール)は、世界で最も苦味が強いビアスタイルの一つで、IBUは50〜100程度に達します。
18世紀末のイギリスで、インドへの輸送中にビールを腐敗させないために多量のホップが使用されたことが起源です。

 

特にアメリカンスタイルのIPAは、シトラスや松の香りが強く、個性的な苦味がクセになるとされています。
近年のクラフトビールブームの牽引役でもあり、多くのファンに支持されています。

 

関連記事:クラフトビールの種類「IPA」とは?特徴やおいしい飲み方を確認

ラガー

ラガーは、世界中で広く飲まれているビアスタイルで、程よい苦味が特徴。
IBUは10〜30程度と比較的低く、スッキリとした飲み口が魅力です。

 

例えば、歴史あるバドワイザーはIBU10と非常に低い数値を持ちながら、クリアでシャープな味わいが楽しめます。
日本の代表的なラガーである「キリンラガー」では、IBUが25で、バランスの取れた大人の苦味が味わえます。

ピルスナー

ピルスナーは、世界で最も普及しているビアスタイルで、特に日本の大手ビールに多く見られます。
IBUは10〜40程度と幅広いバリエーション。

 

副原料として米などが使われるケースが多く、スッキリとした飲み口とキレのあるのど越しが特徴です。
日本の主要銘柄はIBU15〜20程度で、一般的に親しまれているビールの苦味を代表するスタイルと言えるでしょう。

フルーツビール

フルーツビールは、果実や果汁を使って醸造されたビールで、IBUは5〜45程度と非常に幅広いです。
フルーツの甘みや酸味が加わることで、苦味が抑えられ、ジュースのような飲みやすさが特徴。

 

柑橘系ホップを使用したフルーツIPAや、優しい味わいのフルーツヴァイツェンなど、さまざまなスタイルが楽しめます。
ホップの苦味とフルーツの風味のバランスが絶妙なビールとして、多くのクラフトビールファンに愛されている一種です。

人気のあるクラフトビールのIBU一覧

ここでは、日本国内で特に人気のあるクラフトビールをいくつか厳選し、IBUとともに紹介します。

  • スルガベイ インペリアル IPA(ベアード・ブルーイング):IBU 90
  • J-CRAFT HOPPING ガツんとIPA(DHCビール):IBU 70
  • インドの青鬼/IPA(ヤッホーブルーイング):IBU 60
  • スタウト(箕面ビール):IBU 32
  • ヴァイツェン(富士桜高原麦酒):IBU 12

「スルガベイ インペリアル IPA」は、ベアード・ブルーイングが手がけるIPAスタイルで、IBUが90と非常に高く、しっかりとした苦味が特徴。一方、DHCビールの「J-CRAFT HOPPING ガツんとIPA」もIBU70と、強烈な苦味が楽しめる一杯です。

 

ヤッホーブルーイングの「インドの青鬼」は、IBU60のIPAで、しっかりとした苦味とともに、ホップの香りが豊かに広がります。箕面ビールの「スタウト」は、IBU32とやや控えめな苦味ながら、ローストした麦芽のコクが楽しめるビールです。

 

最後に、富士桜高原麦酒の「ヴァイツェン」は、IBU12と非常に低く、苦味がほとんど感じられないため、フルーティーで柔らかな味わいが特徴です。

クラフトビールのIBUについて理解しておこう

いかがでしたでしょうか?IBUについての理解が深まり、ビールの苦味に対する基準を把握できたかと思います。
IBUはビールの風味設計において重要な要素ですが、他の要素と組み合わせてバランスの取れたビールを作るのが鍵となります。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインでは、醸造設備の提供からビール設計まで、トータルでサポートいたします。
新規事業や拡大をお考えの際は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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