ビール製造に必要な免許と取得にかかる費用について

紀元前4,000年前から存在していたとされるビールは、今もなお世界中の愛好家たちの心を掴んで離しません。

そんなビールの製造には、酒類製造免許を取得する必要があることをご存じですか。

免許の申請方法などは、事前に把握しておきたいですよね。

 

そこで本記事では酒類製造免許とは何か、取得に要する費用も含めて詳細をご紹介します。

ビール醸造所の開業を検討している方や、免許の取得前に情報を集めている方は、ぜひご覧ください。

【目次】

酒税法上のビールの定義とは?

日頃から親しみのあるビールですが、「ビールの定義は?」と聞かれると、言葉に詰まる方も多いのではないでしょうか。

ビールの定義は、酒税の確保と保全を目的に、お酒の分類や製造免許、税率などを取り決めた酒税法によって定められています。

 

日本の酒税法は下記に示した通り、お酒に使用する原料と麦芽の割合によって、ビールとほかのお酒を区分しています。

 

【酒税法によるビールの定義】

  • 麦芽・ホップ・水を原料として発酵している
  • 麦芽を使用する割合が原料全体の50%以上を占める

上記の定義にくわえて、ビールは下記の表にまとめた4項目で細かく分類されますので、ご一読ください。

 

【ビールの分類】

使用する酵母の種類 ・下面発酵を使ったラガービール ・上面発酵を使ったエールビール 
色 ・淡色ビール ・中濃色ビール ・濃色ビール 
原料 ・原料のみで醸造したビール ・原料と副原料を組み合わせて醸造したビール 
出荷時の処理方法 ・加熱処理されていない生ビール ・加熱処理を行ったビール 

これらの分類を踏まえて、ビールの種類を意味するビアスタイルは、現在180以上あるといわれています。

 

参照元:国税庁 ビール・発泡酒に関するもの

クラフトビールとは

ビールのなかでも、特に支持を得ているのが「クラフトビール」です。

クラフトビールをひと言で表すなら「小規模メーカーで製造された個性あふれるビール」です。

昔は「地ビール」ともよばれていました。

 

日本各地のお土産屋さんなどで、特産物や季節限定の副原料を使った多種多様な製品が並んでいるのを、見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

ビール職人がこだわり抜いて作った製品のなかから、自分好みの味や香りを選べる楽しさがあることを理由に、若年層をはじめとした多様性を求める消費者から人気があります。

 

その人気から、国内の至る所にクラフトビール醸造所が立ち上げられています。

そんなクラフトビールを製造するには、製造免許を取得しなければなりません。

製造免許の内容や取得要件については、以下で詳しくご紹介します。

 

参照元:全国地ビール醸造所協議会事務局

参照元:きた産業株式会社 全国醸造所リスト

ビールの製造に必要な酒類製造免許とは

先述したように、ビールを含む酒類の製造、つまりアルコール分1度以上の飲料を製造するには、酒類製造免許を取得しなければなりません。

 

酒類製造免許が設けられた目的としては、酒税を漏れなく徴収すること、消費者へ円滑に酒類を提供することが挙げられます。

酒類製造免許は、製造する酒類の品目や製造所ごとに、所轄税務署長から授けられます。

 

お酒の品目ごとに、全17種類の製造免許が設けられていますが、今回は取得基準をビールと発泡酒に絞って、下記の表にまとめましたので、ご覧ください。

 

【酒類製造免許の取得基準】 

  ビール製造免許 発泡酒製造免許 
麦芽使用比率 原料の50%以上 原料の50%未満 
副原料使用比率 原料の5%以下 ※認められた原料のみ 原料の5%以上 

なお、販売目的だけでなく、自己消費のための製造であっても、酒類製造免許の取得を求められます。

 

例外として、酒類を製造する際に用いられる酒母やもろみを製造する場合は、酒類製造免許の取得は必要ありません。

 

参照元:国税庁 酒類製造免許関係

酒類製造免許以外に必要な許可

ビール製造免許を取得しただけでは、ビールを製造することはできません。

 

都道府県知事が決定した製造施設や、製造設備の基準を満たしているかどうかを保健所に審査してもらったのち、「酒類製造業の営業許可」を受ける必要があります。

酒類製造業の営業許可を受けるには、地域ごとに定められた申請手数料を支払います。

例として、東京都の申請手数料は、新規に営業許可を受ける場合は2万1,600円、更新する場合は1万4,000円です。

 

また、製造したビールを販売する場合は、販売所がある場所を管轄している税務署から酒類販売業免許を受けなければなりません。

酒類販売業免許も酒類製造免許と同様に、取得に際して登録免許税を支払います。

 

一部の酒類販売業免許の概要や登録免許税を以下の表にまとめましたので、ご参考になさってください。

 

【ビールの販売に要する免許】

名称 概要 登録免許税 
ビール卸売業免許 ビールを卸売りできる 販売所ごとに9万円 
一般酒類 小売業免許 販売所においてすべての品目の酒類を小売りできる  販売所ごとに3万円  
通信販売酒類 小売業免許 2つの都道府県を対象に、インターネットやカタログなどから酒類を販売できる 
特殊酒類 小売業免許 自社の役員や従業員に継続的に酒類を販売できる 

ほかにも、自分で作成したお酒を海外で卸売りする場合は「輸出入酒類卸売業免許」を取得するなど、販売先や販売方法によって取得する免許が変わります。

 

参照元:国税庁 酒類製造免許関係

参照元:税務署 酒類卸売業免許申請の手引

参照元:国税庁 一般酒類小売業免許申請の手引

関連記事:ビール製造免許とは?取得要件となる製造量についても紹介

酒類製造免許を取得するための要件

前述した酒類製造免許には、取得に際して取得要件と拒否要件が設けられています。

それぞれ詳しく紹介していきます。

取得要件

酒類製造免許の取得要件には、年間の最低製造数量が挙げられます。

ビールの最低製造数量は年間60kL以上、発泡酒は年間6kL以上と、製造するお酒の種類によって数量が異なります。

 

ビールを製造する場合、ビール製造免許を取得してから1年以内に、製造見込み数量が60kL以上を超えなければ、免許を取得できません。

仮に免許を取得できても、3年以上最低製造数量が60kLを下回れば、免許は取り消されることを留意してください。

 

参照元:国税庁 酒類の製造免許の取消し及び第13条 酒母等の製造免許の取消し

拒否要件

拒否要件とは、設定された項目に該当する場合、免許を受けられない条件を指します。

酒類製造免許の拒否要件は下記の表にまとめた通り、大きく5つに分けられます。

 

【酒類製造免許における拒否要件】

人的要件(一部) ・酒類製造免許または酒類製造の営業許可を取り消された日から、 3年経過していない場合 ・申請時に未成年者の法定代理人や法人の役員、製造所の支配人が 欠格事由に該当する場合 ・禁固以上の刑の執行終了後、3年が経過していない場合 ・免許の申請前2年以内に、国税または地方税の滞納処分を受けて いる場合 など全10項目 
場所的要件 正当な理由なく、取り締まり上不適切と認められる場所に製造場を設置する場合(酒類の製造場または販売場、酒場、料理店などと同一の場所など) 
経営基礎要件 経営の基礎が薄弱であると認められる場合(国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損失の資本金超過、酒類の適正な販売管理体制の構築が明らかでないなど) 
需給調整要件 酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があるため、免許を与えることが適当でないと認められる場合 
技術・設備要件 酒類の製造について、必要な技術的能力を備えていないと認められる場合、または製造場の設置が不十分と認められる場合 

酒類製造免許の人的要件は、国税庁のホームページで全項目を閲覧できますので、免許の取得申請前に、ご確認ください。

 

参照元:国税庁 酒類製造免許関係

酒類製造免許を取得するための費用と申請方法

酒類製造免許の取得では、免許1件につき登録免許税15万円を納入します。

 

さらに、酒類製造免許の取得申請に代行サービスの利用を検討されている方は、平均10万~20万円の費用がかかることを考慮しましょう。

酒類製造免許を取得するためには、ご自身の製造所を管轄している税務署へ、製造したい種類の品目別・製造所ごとに申請書を提出します。

 

申請書の提出手段は、オンラインまたは税務署への直接の提出か、郵送するかを選ぶことができます。

オンラインで申請書を提出する際は、e-Taxホームページ内の「e-Taxソフトについて」より、詳細をご確認ください。

 

なお、申請から審査終了までの所要時間は、2~3週間程度です。

申請書を提出してから営業を開始するまでの流れは、以下を参考になさってください。

 

【酒類製造業の営業許可を取るまでの手続き】

  1. 保健所と事前相談
  2. 醸造所着工
  3. 申請書類の提出
  4. 醸造所検査
  5. 認可証の交付
  6. 営業開始

保健所の許可なく酒類を製造した場合、営業停止・行政処分や、処罰の対象となる可能性がありますので、絶対にやめましょう。

 

参照元:国税庁 酒類等の製造免許申請書類一覧表 

参照元:e-Tax(国税電子申告・納税システム) e-Taxソフトについて 

参照元:国税庁 酒類の製造免許の申請

ビール製造免許の登録免許税は免許1件につき15万円

今回は、ビール製造免許の概要や、免許の取得にかかる費用などをお伝えしました。

 

ビール製造免許の取得には、登録免許税として15万円の費用がかかります。

ビール製造免許のほかにも、酒類製造業の営業許可を受けるための申請手数料として、東京都では新規2万1,600円、更新1万4,000円を支払います。

製造したビールを販売する際は、販売方法や販売先によって免許1件につき3万~9万円の登録免許税がかかることも、ご承知おきください。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、ビール醸造所の立ち上げに関することなら何でもお手伝いします。

ビール職人が考え抜いた、使いやすい醸造設備のご提案から発注まで承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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