モザイクホップの特徴と使われているビールの製品事例をチェック

ビールの味や香りを左右する重要な要素がホップです。
ビール製造に興味を持っている方であれば、ホップにはさまざまな種類があることをご存知でしょう。

その中でも、モザイクホップとはどのようなものなのかを解説します。
なかなか名前からは想像が難しいため「特徴は?」「どのようなビールに使われているの?」などの疑問を抱えている方は、ぜひご覧ください。
この記事を読むことで、ホップの主な役割やモザイクホップの魅力について理解できます。

【目次】

  • ビール製造におけるホップの役割
  • ビール製造におけるモザイクホップとは?
  • ビール製造におけるモザイクホップの特徴
  • モザイクホップを使ったビールの製品事例
  • モザイクホップ以外のアメリカンホップの種類
  • 複雑な味わいや香りが楽しめるモザイクホップ
  • ビール製造におけるホップの役割

    ホップとは、アサ科カラハナソウ属、ツル性の多年生植物の一種です。
    ドイツやアメリカで多く栽培されており、日本でも栽培されています。

    未授精の雌株にある毬花(まりはな)と呼ばれる部分にルプリンという黄色い球体が含まれており、以下のような役割を果たします。

    苦味をつける

    ビールならではの独特の苦味は、ルプリンによって生み出されます。
    ルプリンにはアルファ酸と呼ばれる成分が多く含まれていますが、このアルファ酸は加熱することによってしっかりとした苦味を持つイソアルファ酸になるのが特徴です。

    そのため、アルファ酸が多いほど苦いビールに仕上がります。
    ビールの原料である麦汁にホップを投入し、煮沸して熱を加えることで麦汁に苦味成分であるイソアルファ酸が移る形です。

    さまざまな種類があり、中でも苦味をつけるのに適した種類は、ビターホップと呼ばれます。

    香りをつける

    他のお酒にはないビール特有の香りも、ホップによって生み出されます。
    ホップの毬花に含まれるルプリンには精油成分があり、この成分が香りをつけるのに欠かせません。
    含まれている精油の成分や量はホップの種類によって大きく異なります。

    ビールに苦味を付与するには煮沸して熱を加える必要がありますが、香りは熱に弱いため、煮込みすぎると香りが失われやすいという特徴があります。
    そのため、香りを付与するホップは、苦味を付与するホップよりも後の段階で加えられます。
    ビール製造では、一種類のホップだけを使用することは少なく、複数種類のホップを異なるタイミングで投入するのが一般的です。

    特に、ビールに香りを付与するのに適しているホップは、アロマホップと呼ばれます。

    泡もちをよくする

    泡もちを良くすることもホップの重要な役割です。
    まろやかな泡には、炭酸ガスを逃がさない効果や、苦味を和らげる効果があります。

    これは、ホップの苦味成分であるイソアルファ酸が麦芽由来のたんぱく質と結合することによって得られる効果です。
    そのため、ホップを多く投入するとビールの泡もちが向上すると考えられています。

    ビール製造におけるモザイクホップとは?

    ホップには、非常に多くの種類があります。
    ここでは、その中でもアメリカワシントン州にあるヤキマ渓谷で誕生したモザイクホップを紹介します。

    産地であるヤキマ渓谷は、爽やかな香りが特徴のミントの産地としても知られています。
    そのため、一般的なホップとは異なり、独特な味わいを楽しむことができます。

    「モザイク」という名前は、パッションフルーツや柑橘、フルーツ、ハーブなど、さまざまなアロマが絡み合っていることが由来です。

    モザイクホップは2012年に登場した比較的新しい品種です。
    また、ビターホップとアロマホップの両方の特性を兼ね備えているため、個性的な味わいを求める製品に幅広く採用されています。

    ビール製造におけるモザイクホップの特徴

    モザイクホップは、さまざまなアロマ特性を持つホップです。
    強い風味をつけるのに適していることもあり、ビールの苦味や風味、香りを調整しながら製造したい場合に適しています。

    単独で使用したもののほか、複数の種類を組み合わせたビール製造でも人気です。

    モザイクホップを使ったビールの製品事例

    モザイクホップが実際にどのようなビール製品に使われているのかを見てみましょう。
    ここでは、代表的なビールを3つ紹介します。

    Hoya Boya

    2020年に宮城県気仙沼市で醸造を開始したブラックタイドブリューイングでは「Hoya Boya(ホヤぼーや)」という製品でモザイクホップを使用しています。
    トロピカルなフレーバーを特徴とする製品です。

    モザイクホップを単独で使用して醸造しているため、モザイクホップならではの味わいを楽しめるビールです。
    アルコール度数は7.0%と高めで、気仙沼市の観光キャラクターである「海の子 ホヤぼーや」のかわいらしいイラストがラベル全体に描かれています。

    インドの青鬼

    1997年に長野県軽井沢町で創業したヤッホーブルーイングが製造するのが、モザイクホップを使用した「インドの青鬼」です。
    ヤッホーブルーイングは、他にも、よなよなエールや水曜日のネコなどの人気製品を製造していることでも知られています。

    インドの青鬼では、複数のホップを使用している点が特徴です。
    グレープフルーツのような華やかなホップの香りが特徴で、アルコールは7%と高めになっています。
    濃厚な味わいとしっかりとした苦味を持つパンチのあるビアスタイルです。

    全国のスーパーやコンビニで購入できるため、手軽に試すことができるビールです。

    ジューシーIPA

    三菱食品のIPA専門ブランドであるJ-CRAFT HOPPINが開発したのが、モザイクホップを使用した「ジューシーIPA」です。
    ホップを大量に使用して作るIPAは苦味が強い特徴を持ちます。
    一方で、ジューシーIPAは苦味だけでなく、新しいIPAの味わいを提案しています。

    マンゴーやパイナップル、パッションフルーツなど、フルーツ系の味わいを持つモザイクホップのほか、人気のフレーバーであるシトラなども使って製造されている製品です。
    アルコール度数は7%であり、酸味を抑え、しっかりとした苦味を持ちながらも口当たりの良いビールに仕上がっています。

    モザイクホップ以外のアメリカンホップの種類

    モザイクホップは、アメリカンホップの一種です。
    他にも以下のような種類があります。

    カスケード

    アメリカンホップの代表ともいえるのが、カスケードと呼ばれる種類です。
    カスケードは1972年に登場しました。
    それまで主流だったものとは異なる華やかな柑橘系の香りを持つ種類ということで注目されました。

    苦味を生み出すアルファ酸の含有量はそれほど高くないこともあり、アロマホップとして使われることの多い種類です。
    また、カスケードを改良した品種であるセンテニアルは、スーパーカスケードとも呼ばれています。

    シトラ

    柑橘系の香りが特徴のホップです。
    紹介したカスケードも柑橘系の香りを持ちますが、シトラはカスケードと比較して、約3倍の香り成分を含んでいます。
    そのため、強い柑橘系の香りを付与したいビールに使用されるホップです。

    アルファ酸の含有量が高いため、フルーティーな香りに加えて、しっかりとした苦味も備えています。

    シムコー

    パッションフルーツやパイナップルを思わせる特徴的なアロマを持つホップです。アルファ酸の含有量が高いことから苦味をつけるためのホップとして使用されますが、一方でユニークなアロマも注目されています。

    複雑な味わいや香りが楽しめるモザイクホップ

    いかがだったでしょうか。
    この記事では、モザイクホップを中心にアメリカンホップの特徴を紹介しました。
    ホップの種類や、使われているビールについてご理解いただけたのではないかと思います。

    選択するホップによってビールの味わいや香りは大きく変わるため、ビール製造では特に重要な要素といえます。

    ビール製造に関する疑問やお困りごとがある場合は、ぜひスペントグレインまでご相談ください。
    醸造家としての経験を活かし、理想的なブルワリーの実現をお手伝いします。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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