「ピルスナービール」の由来・特徴とラガービールとの違いをチェック

ピルスナービールは、透明感のある爽快な味わいから、世界中で親しまれているビールです。
1842年にチェコで誕生し、国ごとに独自の進化を遂げた結果、現在では多様な種類が展開されています。

ピルスナービールの特徴は、黄金色の外観とバランスの取れたホップの味わい、そして爽やかなアロマの香りです。

この記事では、ピルスナービールの歴史、主要な種類、それぞれの特徴について詳しく紹介します。
初心者からビール愛好家まで楽しめる内容ですので、ぜひご覧ください。

【目次】

  • ピルスナービールとは?
  • ほかのビールとの違い
  • ピルスナービールの種類
  • ピルスナービールの特徴
  • ピルスナービールの日本でのシェア
  • ピルスナービールの美味しい提供の仕方
  • ピルスナービールとは?

    ピルスナービール(Pilsner)は、透明感のある黄金色のラガービールで、爽快な苦味と澄んだ味わいが特徴です。

    このビールは、1842年にチェコのプルゼニュ(ドイツ語ではピルゼン)で誕生しました。
    「ザーツホップ」と呼ばれるホップが使われることが多く、独特の風味を生み出します。

    外観は明るく澄んだ黄金色で、その見た目にふさわしい軽やかで爽快な味わいが特徴です。
    ビールらしい適度な苦味の中に、フローラルなアロマが広がります。

    原産地であるチェコのピルスナービールは「チェコピルスナー」として知られ、マイルドな味わいが特徴です。
    世界各国に広まり、それぞれの国で独自の進化を遂げた一方で、飲みやすさと爽快感という特徴は共通しています。

    ほかのビールとの違い

    ピルスナービールは、チェコのプルゼニ(ドイツ語名:ピルゼン)地方で生まれたことから、地名に由来して名付けられました。

    ラガービールやエールビールと混同されることがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
    名称の由来とともに詳しく確認してみましょう。

    ラガービール

    ラガービールは、ドイツ語で「貯蔵」という意味のLAGERN(ラーゲルン)に由来するビールです。
    低温で発酵させるビールの一種で、その爽やかな味わいが特徴です。

    麦芽を主原料とし、下面発酵と呼ばれる低温(7〜13℃)かつ長期間(数週間〜数か月)発酵させることで、クリーンでなめらかな味わいが生まれます。
    発酵・熟成させることで、雑味の少ないクリアな風味が得られます。

    種類の豊富さも、ラガービールの魅力のひとつです。
    ラガービールには「ピルスナー」「デュンケル」「ボック」「ヘレス」などさまざまなスタイルが存在しています。
    アルコール度数は控えめで、食事に合わせやすい点も特徴の一つです。

    エールビール

    エールビールは、古英語の『EALU』に由来する言葉で、かつてはハーブを加えた醸造酒を指していました。

    大麦を主原料に上面発酵と呼ばれる高温(15-24°C)で短期間(数日から数週間)発酵させ、フルーティで豊かな風味と深い香りが特徴です。
    短期間で発酵が進むため、フレッシュな味わいとモルトの甘みが調和し、複雑ながらも豊かな風味が楽しめます。

    エールはイギリスを中心に発展し、ペールエール・インディアペールエール(IPA)・ブラウンエールといったさまざまな種類に分かれました。
    ラガービールが下面発酵によって製造されるのに対し、エールビールは上面発酵で芳醇な香りをもつようになるため、香りを楽しみたい方に愛飲されています。

    ピルスナービールの種類

    ピルスナービールは、大きく『ボヘミアンピルスナー』と『ジャーマンピルスナー』の2種類に分類されます。

    2つの種類の特徴や違いをみていきましょう。

    ボヘミアンピルスナー

    ボヘミアンピルスナーは、1842年にチェコのプルゼニュの醸造所で誕生したピルスナービールです。

    現在、チェコで伝統の製法によってつくられるピルスナービールは、ボヘミアンピルスナーと呼ばれています。
    150年以上の長い歴史によって培われた伝統的な醸造技術から、高品質のビールとしても愛飲されています。

    発売当時は世界でも珍しい黄金色のビールであり、バランスの取れた味わいと華やかな香りをもつことから、飲みやすさでも高い評価を得ました。
    ザーツホップと呼ばれるフローラルでスパイシーな風味をもつホップを使用し、アルコール度数は4.5〜5.5%です。
    きめ細かい泡によってモルトの風味や甘みが感じられ、適度な炭酸によって苦みも抑えられています。

    ジャーマンピルスナー

    ジャーマンピルスナーは、ドイツで伝統的に製造されるピルスナービールです。

    原材料にドイツ産のホップ(ハラタウ・テットナンガーなど)を使用し、ホップの苦味をしっかりと感じることができます。

    外観は明るい黄金色で、スパイシーさやハーバルな香りのアロマが漂います。
    適度な炭酸が苦みに調和し、余分な甘さを抑えたドライで爽快な飲み心地です。
    さらに後味もさっぱりとしており、食事に合わせやすい点が特徴といえるでしょう。

    ドイツでは一般的にビールが伝統的な飲料とされており、ジャーマンピルスナーも厳格な品質管理に基づいて製造されています。

    ピルスナービールの特徴

    ピルスナービールの特徴は、『黄金色の外観』と『キレのあるのどごし』の2つです。
    それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

    黄金色の見た目

    ピルスナービールは、クリアで透き通った黄金色の液色が特徴です。
    細かい泡の組み合わせが繊細な黄金色の外観は、初めて醸造されたチェコ・ピルセンの水がミネラル量の少ない軟水だったことに由来しています。

    ビールらしい色味と清涼感、一口味わったときのバランスの取れた風味が、ビールの魅力を存分に引き立てます。
    世界初の金色のラガービールとしても知られ、見た目のとおり軽やかで爽快な味わいがあります。

    キレのあるのどごし

    コクとキレが絶妙に調和していることも、ピルスナービールの特徴といえます。

    ピルスナービールの元祖であるピルスナーウルケルは、はじめにホップ特有の苦みがあります。
    次に、麦の甘さが口の中に広がり、キレからコクへと移っていくビールの醍醐味を感じられます。

    ピルスナーウルケルの本場・チェコでは、「ハラディンカ」「シュニット」などさまざまな注ぎ方が確立され、それぞれ香りやのどこしが異なることから、飲み方を工夫して楽しむケースも少なくありません。

    自然な炭酸が生み出すキレには嫌味がなく、クリーミーな泡が口当たりを程よくし、苦みが残らない爽快なのどごしが楽しめます。

    ピルスナービールの日本でのシェア

    ピルスナービールは、日本国内で流通するビール製品の約99%を占めています。

    ラガービールが大半という意味にもなり、一般的に日本国内でイメージされるビールの「黄金色」「スッキリとしたのどこし」「適度な苦み」は、すべてピルスナービールの印象によるものです。

    なぜピルスナービールが日本で愛されているのか、詳しく見ていきましょう。

    ピルスナービールが日本で愛される理由

    ピルスナービールが日本国内で広く親しまれる理由として、次のような点が挙げられます。

    • のどこしが爽やかである
    • アルコール度数が弱い
    • 大量生産に向いているため
    • 日本の気候風土にマッチしている

    ピルスナービールにはキレがあり、一口飲むだけでも強い爽快感があります。
    さらにアルコール度数が高くないことから、お酒に弱い人やアルコール感が苦手な人にも受け入れられやすく、「炭酸飲料では物足りないが、強いお酒は避けたい」という場合に適しています。

    日本でビールが醸造されるようになったのは明治時代初期といわれており、当初からピルスナービールは爽快なのどごしで知られていました。
    さらに大手のビールメーカーがビールの飲み口を改良し、ビールといえばピルスナービールがイメージされるようになったのです。

    また、品質のばらつきを抑えて大量に生産できるメリットも、日本での需要増とマッチしました。
    高温多湿になりやすい日本では、冷蔵庫の普及にあわせて「冷やして飲むビールがおいしい」といった新しい価値観も根づき、すでに発売されていたピルスナービールが冷やして飲むタイプとしても受け入れられていきました。

    ピルスナービールの美味しい提供の仕方

    ピルスナービールの美味しい提供方法は、「しっかりと冷やす」「専用のグラスで提供する」2点です。
    それぞれの提供方法をみていきましょう。

    しっかりと冷やす

    ピルスナービールは強めののどごしによって爽快感が味わえます。
    キレを楽しむためには、常温ではなく冷蔵庫で6〜9度まで冷やし、常温のグラスに注いで口にすると良いでしょう。

    ただし、6度以下に冷やしすぎると、液体に『寒冷混濁』と呼ばれる現象が発生し、濁りが生じるため注意が必要です。
    冷やしすぎてもかえってビールの品質を損なうため、適温に冷やした状態で飲むと良いでしょう。

    専用のグラスで提供する

    ピルスナービールを注ぎ入れる「ピルスナーグラス」は、三角錐を逆さまにしたような形で、細身ながら直線的なデザインです。
    このグラスに注ぐと、ピルスナービールの香りと味が引き立ち、口にしたときに最良の状態で楽しめます。

    グラスの飲み口は一般的なグラスよりも広くとられているため、立ちのぼる香りを楽しめます。
    ピルスナーグラスで香りをかぎながら飲むことで、ビールの長所を五感で感じ取ることができます。

    おすすめのピルスナービール

    ここからは、おすすめのピルスナービールについてみていきましょう。

    「ピルスナー・ウルケル」と呼ばれる銘柄に加えて、日本で製造されている「小樽ビール」「箕面ビール」を紹介します。

    ピルスナー・ウルケル

    ピルスナーウルケルビールは、ドイツ人醸造家がチェコで初めて生産に成功した、ピルスナービールの元祖とも呼べる種類です。
    チェコを代表するビールであり、純粋なビールとして世界中で多くの愛好家に親しまれています。

    170年以上にわたり同じ醸造所で製造されており、伝統的な製法が現代にも引き継がれてきました。
    甘み・苦み・香りのバランスが程よく調和し、黄金色の美しい外観で上品な印象を与えます。

    アルコール度数も4.5%程度と低めで、爽快なのどごしから食事にも合わせやすいビールとして知られています。
    ラガービールの一種であり、全体的にビールの中では低カロリーに分類されます。

    小樽ビール

    小樽ビールは、北海道小樽市で醸造される本格的なクラフトビール・地ビールブランドです。

    小樽ビール銭函醸造所で多くが製造され、約250年前にまで遡るドイツスタイルの伝統的な醸造法「デコレクション醸造法」により、安定剤や添加剤を使用しません。
    原材料には北海道産の良質な麦芽やホップと酵母・水のみで、独自の製法と高品質な原材料による味わいが特徴的です。

    長い熟成期間によって、深い味わいと滑らかな口当たりが生まれ、新鮮なホップの爽やかな苦味とバランスの取れた風味がフレッシュな印象です。
    泡立ちの良さや麦芽本来の味わいも特徴のひとつで、小樽の文化と歴史を感じさせるビールとして評価されています。

    箕面ビール

    箕面ビール(みのおびーる)は、大阪府箕面市で1997年から造られているクラフトビールです。

    箕面市を代表するローカルビールとして、箕面市内に誕生したブリュワリー(ビール醸造所)で製造されています。
    原材料に良質な麦芽を使用し、深い香りと味わい、豊かな風味が特徴です。
    独自の発酵プロセスを採用しているため、まろやかな口当たりとバランスの取れた味となっています。

    通年で飲める定番ビールに加え、季節限定のシーズナルビールもあり、飲み比べを楽しむことができます。
    アルコール度数はピルスナーで5.0%、ダブルIPAは9.0%と銘柄により異なりますが、全体的にアルコール度数が控えめで飲みやすく、リラックスした気分を味わうことができます。

    ほかのラガービールの種類

    ピルスナービールはラガービールの一種で、他には「ボック」「シュバルツ」といった種類もあります。

    2つの銘柄の特徴を詳しくみていきましょう。

    ボック

    ボックは、南ドイツ・クルムバッハで生まれたハイアルコールビールです。
    元となるビールを凍らせて水分を分離し、アルコール度数を高める特徴があり味わいも濃厚に仕上げられています。

    凍らせてから水分を分離させるため、深い色合いと独特のスパイシーな風味があります。
    原材料であるホップはアロマ感が強く、苦みと甘みをそれぞれ感じることができますが、いずれもバランスがとれていて飲み応えがあります。

    アルコール度数は6.5~7.5%とやや高めですが、口当たりは良質なホップのためにまろやか。
    手間をかけて製造されるため、個性的なビールを好む愛好家からも高く評価されています。

    シュバルツ

    シュバルツは、ドイツの伝統的なラガービールで、濃厚な風味と深い色合いが大きな特徴です。

    このビールは、高品質なモルトとホップを使用し、バランスの取れた苦味とスパイシーな香りがあります。また、シュバルツは、長い熟成期間を経て独特のコクと滑らかさを持ち、口当たりが良いことも強みの一つです。

    このビールは、特に冬の寒い季節にぴったりで、体を温める満足感をもたらします。シュバルツは、その伝統的な製法と独自の風味で、多くのビール愛好家に愛されています。

    エールビールの種類

    エールビールは、高温で短時間のうちに発酵させる「上面発酵」によってつくられるビールです。

    ここからは、「ペールエール」「インディアペールエール」「ゴールデンエール」の特徴についてみていきましょう。

    ペールエール

    ペールエール(Pale Ale)は、上面発酵によって造られるエールビールの一種で、その名の通り淡い色合いが特徴です。

    高温で短期間発酵させる上面発酵のビールで、花や柑橘類を思わせるフルーティかつフローラルなアロマが楽しめます。
    淡い金色から銅色までのバリエーションがあり、全体的にクリアな外観が特徴です。

    ホップの苦味にモルトの甘みが調和し、フルーティな中にも複雑な風味が楽しめます。
    ペールエールと呼ばれるビールにはイングリッシュ・アメリカン・インディアといったいくつかのスタイルがあります。

    インディアペールエール

    インディアペールエール(IPA)は、エールビールを発展させてインド向けにつくられたビールです。

    一般的なエールビールに比べてホップの使用量が多く、苦味を強く感じる味わいです。
    香りはフローラルやシトラスといった定番の芳香に加えて、パイナップルのようなジューシーな甘さを感じることもあります。
    色のバリエーションは黄金色から琥珀色までで、外観はクリアのほかに濁りのあるものも存在します。

    アルコール度数は通常のエールビールよりも高く、5%から7.5%程度です。
    通常の4倍のホップを使用するため、防腐剤としての役割を果たし、劣化しにくい飲料として知られています。

    ゴールデンエール

    ゴールデンエールは、イギリス発祥のエールビールの一種です。

    外観は淡い金色をしており、現地ではブロンドエールという愛称もつけられています。
    エールビールの中でもアルコール度数が4〜5%程度と低く、ホップの香りも穏やかに香ることから飲みやすさに定評があります。

    イギリス産のホップを使用したものはイングリッシュスタイルと呼ばれ、紅茶のような風味が楽しめます。
    一方、アメリカ産のホップを使うと柑橘系の香りが楽しめるアメリカンスタイルになり、それぞれ揚げ物やサラダとのペアリングが提案されています。

    ピルスナービールとラガービールの特徴や違いを押さえよう

    今回は、チェコで生まれたピルスナービールを中心に、ラガービール・エールビールなどの特徴や種類について紹介しました。

    ビールは200年以上の歴史を持ち、伝統的な製法が確立されています。
    時代の変化とともに冷やして飲むスタイルが流行し、フルーティな香りが若者に支持されるなど、ビールの楽しみ方も変化してきました。

    日本で飲まれているビールのほとんどはピルスナービールですが、エールビールのように異なる発酵方法で作られる種類も販売されています。
    ビールの温度やグラスの種類、飲み方を工夫して、自宅でのビールタイムをより楽しんでみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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