クラフトビール作りに欠かせないマッシュタンについて解説!

クラフトビール作りを考えている方にとって、醸造設備の理解は欠かせません。
特にマッシュタンは、ビールの味や品質に直結する重要な要素です。

そこで本記事では、マッシュタンの仕組みや種類、ビールへの影響、さらに醸造所運営に必要な台数について詳しく解説します。
クラフトビールの醸造所を新規に開設する、または増設する予定の方はぜひご一読ください。

【目次】

クラフトビール作りにおけるマッシュタンとは

クラフトビール作りにおいて、マッシュタンは醸造の要ともいえる存在です。
麦芽から糖を抽出し、発酵工程の基盤となる麦汁を生成する工程で、ビールの味や品質に直接影響します。

マッシュタンの仕組みや構成要素を理解することで、醸造の効率を高め、安定した生産を実現することが可能です。

マッシュタンの原理

マッシュタンの原理は、麦芽中のデンプンを発酵可能な糖に変換する「糖化プロセス」にあります。
この工程では、麦芽に含まれる酵素が活性化され、デンプンをマルトースやグルコースといった糖類に分解します。

この糖化プロセスが適切に行われることで、後の発酵段階で酵母が糖を消費し、アルコールや香り成分が生成されるのです。
糖化を成功させるには、温度管理が鍵となります。

具体的には、65~68℃の範囲が酵素の活性化に最も適しているとされ、この温度を均一に保つことが求められます。
温度が適切でない場合、酵素の活性が不十分となり糖化が進まず、ビールの風味やアルコール度数に悪影響を及ぼします。

このため、マッシュタンは内部の温度を正確に保つ設計が施されており、醸造プロセス全体の品質を左右するといえます。

マッシュタンの構成要素

マッシュタンの構成要素は、効率的な醸造を実現する上で重要な役割を果たします。
まず、容器本体は断熱性が高く設計されており、糖化工程で必要とされる一定の温度を保つことが可能です。

この断熱構造により、エネルギー消費を抑えながら、酵素の活性が持続しやすい環境が整います。
また、アジテーター(攪拌機)は、麦汁内の温度や成分を均一にするための重要な要素です。

アジテーターの形状や回転速度は、糖化プロセスでの熱伝達と混合効率を高めるよう設計されています。
そのため、過熱や成分の偏りが防がれ、安定した品質の麦汁を得られるのです。

マッシュタンがクラフトビールに与える影響

マッシュタンは、クラフトビールの味や香りに直結する重要な役割を果たします。
装置を通じ、使用する穀物や温度、工程の時間がどのように風味に影響を与えるかを知ることで、理想的なビールの味を作り上げることができるでしょう。

ここでは、マッシュタンがビールの風味にどのような影響を与えるか詳しく見ていきます。

使用する穀物が与える風味の違い

マッシュタンで使用される穀物の種類は、ビールの味わいや質感に大きな影響を与えます。

淡色麦芽を使用する場合、仕上がりは軽くてさわやかな味わいとなり、夏にぴったりの飲みやすいビールが生まれます。
一方で、濃色麦芽やキャラメルモルトを用いると、深みのあるコクや焙煎の香りが特徴的なビールに仕上がるでしょう。

温度管理がもたらす甘みやアルコール感

マッシュタン内の温度管理は、ビールの甘みやアルコール度数に直接影響します。
糖化プロセスのとき、比較的高い温度(65~68℃)を維持すると発酵でアルコールに変換されやすい糖が多く生成され、キレのある味に仕上がります。

一方で、低めの温度で糖化を行うと残留糖が多くなり、甘みを感じるビールになります。
温度管理を変えることで、飲み手の嗜好に合わせた幅広い味わいを実現できます。

マッシュ時間が風味に与える影響

マッシュタンで糖化工程にかける時間は、ビールの最終的な風味を左右する重要な要素です。
短時間で糖化を終えると、軽やかでクリアな味わいが得られますが、長時間糖化を行うことで、麦芽の風味が濃厚に引き出され、甘みやコクのあるビールができます。
製造者はターゲットとする市場や提供したい飲み心地に応じて工程を調整できるのが魅力です。

マッシュタンの種類

クラフトビール醸造で使用されるマッシュタンにはさまざまな種類があり、それぞれの設計には特徴や利点、用途が異なります。設備の選択は、生産規模や醸造所が目指すスタイルに合わせて最適なものを選ぶ必要があります。ここでは、主なマッシュタンの種類とその特徴について解説します。

2槽式マッシュ・タン

2槽式マッシュ・タンは、最も基本的な醸造設備の一つであり、シンプルな構造を特徴としています。
マッシュ、ボイリング、ろ過を1つの装置で行える効率性が魅力です。

特に中小規模の醸造所や新規参入の醸造家にとっては、初期コストが低く抑えられる点が大きなメリットです。
ただし、麦汁のろ過速度が遅くなる場合があるため、操作には一定の技術が求められます。

2ポットおよび3容器マッシュシステム

2ポットおよび3容器マッシュシステムは、従来型の設備から進化したシステムで、ろ過や沈殿プロセスがより効率的に行えるよう設計されています。
ろ過タンクが高い位置にあるため、重力を利用した自然ろ過が可能で、透明度の高い麦汁を得ることができます。

また、スパージ水の準備を並行して行うことで、作業時間を短縮できます。
設備の高さがやや高くなるため、設置スペースには注意が必要です。

二重容器三槽式マッシュ・タン

二重容器三槽式マッシュ・タンは、より効率的に作業できるよう改良された最新型の設備です。
マッシュポットとフィルタータンクが垂直に配置され、スペースの有効活用が図られています。

また、加熱効率やろ過速度が向上しており、大量生産にもおすすめ。
一方で、初期投資が高くなる点には注意が必要です。

大型マッシュ/ローター・タン

大型マッシュ/ローター・タンは、大規模な醸造所向けに設計された設備で、1日に最大6バッチまでの大量生産が可能です。
マッシュ、ろ過、ボイル、ワールプールといった各プロセスが独立しており、それぞれの工程が効率的に進むよう設計されています。

また、新型の加熱ジャケットやスクリューコンベアの採用により、作業時間が短縮されると同時にエネルギー効率が向上する仕組みとなっています。
ただし、設備の規模が大きく、設置スペースやアフターサービス対応が検討要素となるでしょう。

クラフトビールの醸造所運営に必要なマッシュタンの数

クラフトビールの醸造所を運営する際、必要なマッシュタンの数は生産規模や醸造スタイルによって異なります。
適切な設備を選ぶことで効率的な運営を実現し、コストやスペースを最大限に活用できます。

ここでは、必要なマッシュタンの数について見ていきましょう。

小規模醸造所の場合

小規模な醸造所では、1台のマッシュタンで十分に対応可能な場合が多いです。
特に、スペースや初期投資が限られている場合、1台で複数の工程を賄う設備はコスト削減に役立ちます。

中規模醸造所の場合

中規模の醸造所では、2台以上のマッシュタンを用意することで、生産能力を向上させることができます。
複数のタンクを使用することで、並行して異なるバッチのビールを醸造でき、ピーク時の需要にも柔軟に対応可能です。

また、工程ごとに専用のタンクを使用すれば、品質の安定性も確保しやすくなります。

大規模醸造所の場合

大規模な醸造所では、複数のマッシュタンを備え、さらに特化した機能をもつタンクを導入するのが一般的です。
例えば、糖化、ろ過、澱引きの工程をそれぞれ専用のタンクで行うことで、生産効率を高めることができます。

また、特定の工程に特化した設備を追加すれば、大量生産を実現しながら一貫した品質を維持することが可能です。

クラフトビール作りの基本を押さえよう

いかがでしたでしょうか?クラフトビール作りに欠かせないマッシュタンについて、仕組みや種類、ビールへの影響、醸造所運営に必要な台数などをさまざまな観点から解説しました。

マッシュタンは、ビールの味や品質を左右する重要な設備であり、適切な選択が成功への鍵を握ります。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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