ビールタップ工事とは？費用・機能・選び方をやさしく解説

• 醸造設備
• 2025.11.19
• 2025.11.20

ビールタップ工事により、樽生ビールの新鮮さと品質を最高のコンディションで提供できるようになります。タップ選択によって味わいや演出が大きく変わるため、設置環境に応じた適切な工事が重要です。

 

本記事では、タップの構造や種類から導入までの流れまで、ビールタップ工事に関するすべてを分かりやすく解説します。お悩みの方がいれば、ぜひ最後までご覧ください。

 

【目次】

• ビールタップの構造と種類の特徴
• ビールのタップ工事にかかる費用と内訳
• ビールタップ工事の導入までの流れ
• ビールタップ工事における安全性と保守管理
• ビールタップに関するよくある質問
• まとめ

ビールタップの構造と種類の特徴

ビールタップは、タップヘッド、冷却装置、カプラーという3つの主要部品で構成されており、それぞれの選択によってビールの味わいや提供スタイルが大きく変わります。

• タップヘッドの種類で味わいの演出が変わる
• 冷却方式の違いで設置環境に適応できる
• カプラーの規格で樽の選択肢が広がる

各部品の特性を理解することで、店舗のコンセプトに最適なビールタップシステムを構築できます。

タップヘッドの種類で味わいの演出が変わる

タップヘッドは、ビールの注ぎ口となる部分で、構造によってビールと泡の出方が異なります。

• スタンダードフォーセット：液体のみを抽出するシンプルな構造
• フローコントロールフォーセット：タップ根本のレバーで流量を調整できる機能を持ち、ガス圧を設定した上でさらに細かく注ぎ方を制御可能
• スタウトフォーセット（ナイトロタップ）：窒素ガスを使用するビール専用で、クリーミーな泡を生成

タップヘッドの選択は、提供するビールのスタイルや演出したい味わいに応じて決定することが重要です。ハンドル操作で泡とビールを切り替えられる構造のタップもあり、お客様の好みに合わせた注ぎ分けが可能になります。

冷却方式の違いで設置環境に適応できる

タイプ	方式・おすすめシーン	仕組み・必要なもの
電気式	・ビールが通る管を電気で冷却する方式 ・居酒屋など常設店舗で広く使用	・内部の銅管周りを凍らせることで、常温の樽からでも冷たいビールを提供できる ・氷を張るまで6時間以上かかるので、電源を切らずに運用
氷冷式	・あらかじめ用意した氷でビールを冷やすタイプ ・電源不要のため屋外イベントやバーベキューに最適	・氷の準備が必要 ・コールドプレートやコイルの設計によって冷却性能が変わる
空冷式	・ビール樽自体を冷蔵庫で冷やす方式 ・自宅や少量提供の店舗に向いている	・冷蔵庫スペースが必要 ・大きめの冷蔵庫か、専門の冷蔵庫がないと他の食品が入らなくなる

カプラーの規格で樽の選択肢が広がる

カプラー（ディスペンスヘッド）は、ビール樽とビールホース・ガスホースを連結する部品です。日本国内では主にSタイプとGタイプが使用されており、Sタイプはアサヒ、サッポロ、サントリー系および国内クラフトブルワリーの大半で採用されています。

 

Gタイプはキリンビール系、ヤッホーブルーイングなどで使用されます。海外ビールを扱う場合、欧州で多く使用されるAタイプ、アメリカで主流のDタイプなど、銘柄によって対応するカプラーが必要です。

 

キーケグ用の専用カプラーも存在し、使い捨て容器に対応します。カプラーには互換性がないため、提供したいビールの種類に応じて適切な規格を選定することが重要です。

ビールのタップ工事にかかる費用と内訳

ビールタップ工事の費用は、設置するタップ数や配管の長さ、設置環境によって大きく変動します。

• 設置機材ごとの費用
• 配管長や設置場所の工事費
• ランニングコスト

適切な予算計画を立てるために、初期投資とランニングコストの両面から費用を把握しましょう。

設置機材ごとの費用

ビールタップ工事の機材費用は、1タップあたり10〜12万円が目安となり、工事費と部材費が含まれます。5タップ設置の場合、最小限の機材を手配するプランで約45万円、相談しながら選定するプランで約90万円、充実したプランで約140万円程です。
主な機材には、以下が含まれます。

• ステンレス製ビールタップ
• シャンクセット
• 二次圧用レギュレーター
• ガスホース・ビールホース各2m
• 液化炭酸ガスボンベ

業務用冷蔵庫をビールサーバーとして活用する場合、冷蔵庫の裏側に板を張りタップを取り付ける手法もあります。こちらは取り付け費用のみで約5万円です。

 

タップの種類や素材によっても価格は変動し、フローコントロール機能付きやナイトロ用タップは追加費用がかかります。カプラーも規格によって価格が異なるため、提供するビールに合わせた選定が必要です。

配管長や設置場所の工事費

配管工事の費用は、ビールサーバー本体から注ぎ口までの距離や、設置場所の条件によって変動します。ビールサーバー本体とビール樽は近くに配置することが推奨されており、ホースが長くなると床を這うホースが見え、衛生面や見た目が問題です。

 

ドラフトタワー形式で、カウンター下から離れた場所にサーバーを設置する場合、通常のサーバーよりもロスが多くなる可能性があります。配管設置には、給排水設備の確保、電源の位置、空調や換気の配慮も必要です。

ランニングコスト

ビールタップのランニングコストには、炭酸ガスボンベの交換費用や定期清掃費用、消耗品の交換費用が含まれます。炭酸ガスボンベは5kg、7kg、10kgの種類があり、使用頻度に応じて定期的な交換が必要です。

 

ビールサーバーの電気代は瞬冷式の場合、常時電源を入れておく必要があるため、月間の電気使用量に影響します。定期メンテナンスでは、ビールメーカーや専門業者のスタッフが訪問し、点検や洗浄、ホース交換などを実施します。

 

このように、ランニングコストがかかることを理解しておきましょう。

ビールタップ工事の導入までの流れ

ビールタップ工事は、現地調査から設置工事、初期設定までの段階を踏んで進められます。

• 現地調査をする
• 設置工事の手順を把握する
• 初期設定と試運転を行う

計画的に進めることで、オープン予定日に間に合わせ、スムーズな営業開始が可能になります。

現地調査をする

現地調査では、ビールタップの設置場所やスペース、電源や排水の位置を確認します。ビールメーカーや酒販店の担当者が訪問し、店舗のレイアウトに合ったビールサーバーの設置プランを提案します。サーバー本体の設置には、機器を安全に配置できるスペース、導線をスムーズにできる場所の確保が必要です。

 

ビールサーバーの側面や背面は、吸排気のため5cm以上の隙間を空ける必要があります。上部は冷却水の補充や点検時に蓋を開けるため、上部スペースの確保も重要です。現地調査の結果を踏まえ、設置に必要な寸法や工事内容を確定します。

設置工事の手順を把握する

ビールタップの設置工事は、タップ本体の取り付けや配管接続、電源工事の順で進められます。
工事期間は規模によって異なりますが、醸造設備を含む大規模工事では数ヶ月を要します。工事完了後は、設備の動作確認と漏れ検査を実施します。

初期設定と試運転を行う

工事完了後、初期設定として炭酸ガスの圧力調整、冷却装置の稼働確認を行います。圧力ダイヤルは最初0（ゼロ）にしておき、樽を接続した後に目盛り0.08〜0.12MPa（機器推奨に従う）程度に調整します。

 

室温や樽の温度によって適切な圧力は変動するため、泡の出方を見ながら微調整が必要です。

ビールタップ工事における安全性と保守管理

ビールタップの安全で長期的な運用には、定期的な清掃と配管管理が欠かせません。

• 定期清掃でビールの味と衛生を保てる
• 配管の劣化を点検することで事故を防げる

日々のメンテナンスを徹底することで、お客様に安心して提供できる環境を整備します。

定期清掃でビールの味と衛生を保てる

推奨される清掃方法は、週1回以上のスポンジ洗浄と毎日の徹底洗浄（水通し洗浄）です。

 

スポンジ洗浄では、専用スポンジ1個をビールホース内に通し、ビールの通り道をきれいにします。複数のスポンジを一度に通すとホース内に詰まるため、必ず1個ずつ通すことが重要です。

 

水通し洗浄では、洗浄タンクを利用してビール経路と泡経路の両方を水で清掃し、配管内に残ったビール分を完全に除去します。開封後の樽生ビールは、賞味期限に関わらず早めに提供しましょう。

配管の劣化を点検することで事故を防げる

ホース材質はポリエチレンやラバー製が主流で、使用環境や経年劣化により寿命が決まります。配管内の汚れが溜まると、ビールの流れが悪くなるだけでなく、菌の繁殖リスクが高まり衛生面で問題が生じます。

 

できる日にビールホース内の状態を目視で確認し、変色や異臭がないかチェックしましょう。予防保全の意識を持つことで設備寿命を延ばし、長期安定的にビールを提供できます。

ビールタップに関するよくある質問

ビール提供を開始する上で、多くの飲食店やブルワリーから質問が寄せられています。

• タップ工事にはどれくらいの期間がかかる？
• ビールサーバーは自分でメンテナンスできる？
• 既存店舗にもタップ工事は可能？

実践的な知識を深めることで、円滑なオペレーション開始につながります。

タップ工事にはどれくらいの期間がかかる？

ビールタップ工事の期間は、規模や複雑さによって異なります。現地調査から設計や発注、施工、試運転まで順序立てて進めるため、工事開始前に十分な計画立てが重要です。季節的な制約もあり、年末年始や盆時期は工事が難しい場合があります。

 

また、営業開始予定日から逆算して、スケジュールを組むことも大切です。既存店舗への工事の場合、営業を続けながら工事を行うため、作業時間が限定されスケジュール調整が必要になります。

ビールサーバーは自分でメンテナンスできる？

基本的な清掃は店舗スタッフで実施できますが、専門的な保守は業者に任せましょう。ただし配管の分解やホース交換、圧力調整などの作業は、専門知識が必要なため業者の対応が望ましいです。

既存店舗にもタップ工事は可能？

既存店舗への後付けビールタップ工事は十分可能ですが、施工難度が高くなる場合があります。カウンター下スペースや電源位置、排水設備の確保状況を事前に確認しておきましょう。

 

スペースが限定されている場合、配管ルートの工夫やドラフトタワー方式の導入で対応可能です。電源が遠い場合、新たに専用コンセントを設置する電気工事が発生し、追加費用がかかります。

まとめ

ビールタップ工事は単なる設備導入ではなく、最高品質のビールをお客様に提供するための重要な投資です。

 

スペントグレインでは、ビール造りのプロである現役醸造家が、品質とデザイン両面でビールタップ工事をサポートします。

建物や設置場所に合わせた実用的なレイアウトや、お客様の理想を現実にする設備選定まで、安心安全な施工を提供し、ビール提供の成功を一緒に実現します。