ビール作りに欠かせないモルトの特徴・役割と代表的な9種類を紹介
- 原材料
- 2025.02.21
- 2025.12.19
モルトは『麦芽』を意味し、ビールづくりに欠かせない原材料の一つです。
ビールは基本的にモルト・ホップ・水からつくられ、味を調整するために酵母や副原料が添加されます。
なかでも主要な原材料となるモルトはビールの風味を大きく左右するため、さまざまな製法で製造されてきました。
この記事では、モルトの代表的な種類や特徴、役割について解説します。
モルトの果たす役割と、種類によってどのように味わいに変化が出るのかを取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
【目次】
モルトの種類
モルトには、次のような種類があります。
- ペールモルト
- ピルスナーモルト
- ウィーンモルト
- ミュンヘンモルト
- チョコレートモルト
- カラメルモルト
- ローストバーレイ
- ライモルト
- ウィートモルト
モルトは、精麦を醸造用に乾燥させた穀物です。
モルトになったものを細かく粉砕し、麦汁を絞り出して酵母などを加え、発酵・熟成して仕上げます。
ここからは、9種類のモルトについて特徴をみていきましょう。
ペールモルト
ペールモルトは、エールビールやラガービールなど、多くのスタイルの基礎となるモルトです。
色合いは淡く、イギリス産ビールに代表される黄金色に輝きます。
85〜90度の低温で長時間乾燥させて作られるモルトで、ペールエールやライトラガーなどに使用されます。
軽やかな味わいがホップ特有の苦味とも程よく調和し、やさしい香りとクリーンな味わいにしっかりとしたボディが特徴的です。
主に北アメリカのラガーモルトビールに使われていますが、ビール製品の基礎となる汎用性の高さと品質から、ビールの醸造に欠かせないモルトです。
ピルスナーモルト
ピルスナーモルトは、チェコ産の『ピルスナービール』や他の淡色ビールに使用されるモルトです。
「ヴァイツェン」や「ゴールデンエール」とともに、淡色モルトと呼ばれる種類です。
色合いは非常に淡く、クリアな黄金色を生み出します。
約85度の低温で乾燥させて作られ、ほぼすべてのビールに使われます。
香りはフローラルでスパイシーであり、ホップの香りを引き立てる爽やかな味わいが特徴です。
ピルスナーモルトは酵素の活性が高いため、糖化を効率的に促します。
そのため、バランスの取れたクリーンな外観のビールが完成します。
ウィーンモルト
ウィーンモルトは、淡色モルトよりもやや色が濃く、ビールに香ばしさを与えるモルトです。
アンバービールやウィーンラガーといった種類に使用され、中程度のアンバーと呼ばれる色合いをしています。
風味が豊かで、トーストした香ばしい香りとカラメルのような甘さが特徴です。
一般的にビールは黄金色のクリアな色合いをイメージされますが、ウィーンモルトはビールの色をさらに強調し、ボディにコクを加えます。
風味とコクが増したモルトでありながら、口当たりは滑らかです。
全体的にバランスが取れているため、さまざまなビールスタイルに応用されています。
ミュンヘンモルト
ミュンヘンモルトは、たんぱく質量の多い大麦を原材料に使用したモルトです。
「ドルトムンダー」や「ミュンヘンラガー」といった種類に使われ、濃色ラガー麦芽などという呼び方でも知られています。
100~110℃の高温下で焙燥させるため、濃色かつ濃くトーストしたような香ばしさに仕上がります。
口にするとキャラメルのような甘めの風味が広がり、深い琥珀色の液体に深みを感じます。
通常のクリアでライトなビールよりも複雑な味わいで、熟成させることでリッチな味わいが引き立ちます。
麦芽の風味をしっかりと感じたい方に適しているモルトです。
チョコレートモルト
チョコレートモルトは、チョコレートのような濃い色合いになるまでローストしたモルトです。
160度の超高温で濃い茶色になるまでローストするため、香ばしさと深い色合いのビールに仕上がります。
「スタウト」や「ポーター」といった銘柄に使われ、香ばしさの中にほのかなチョコレートの風味が感じられます。
グラスに注いだ際のインパクトが大きく、液体の外観は一般的なビールよりも濃い黒色をしています。
他のモルトよりもしっかりとローストを行うため、ビールには軽い苦味が付加されます。
カカオの香りを楽しみながら、複雑な中にもリッチな風味が楽しめるモルトです。
カラメルモルト
カラメルモルトは「キャラメルモルト」「クリスタルモルト」とも呼ばれ、超高温下で焙煎したモルトです。
数あるモルトの中でも焙煎時の温度が高く、時間をかけてローストするためカラメル化された糖分を含みます。
ビールとして飲むとキャラメルのような甘さを感じられ、ボディにはしっかりとしたコクが加わります。
色合いは焙煎度によりいくつかの段階に分かれ、「アンバーエール」や「IPA」といった種類に使用されます。
糖分がカラメル化すると酵母が使用できなくなるため、カラメルをあえて残すことで独特な香りが生まれます。
ローストバーレイ
ローストバーレイは、発芽していない大麦を焙煎して作られるモルトです。
一般的なモルトは発芽した状態で乾燥させますが、ローストバーレイは未発芽の状態で220度以上の超高温にして焙煎します。
色合いはビールの中でも非常に濃く、強いローストの香りと力強い飲み口が特徴です。
銘柄では「スタウト」「ポーター」などのダークビールに使われ、複雑な風味の中にもコクをもたらします。
超高温下で焙煎するモルトにはチョコレートやカラメルといった種類がありますが、ローストバーレイは、ほのかにコーヒーやダークチョコレートの風味が感じられるとされています。
ライモルト
ライモルトは、ライ麦を原材料として使用したモルトです。
一般的な大麦などではなくライ麦を使うことで、独特なスパイシーさとドライな風味が加わります。
色合いは淡い黄金色から琥珀色で、口に含むと土のような自然の香りが漂います。
銘柄では「ライビール」や「ライIPA」に使われ、複雑な風味にホップの苦みやモルトの甘味を感じるスタイルです。
ライ麦を使用した特徴的なビールですが、フルーティなホップと組み合わせることで、一般的なビールにはない独自の風味が楽しめます。
いつものビールとは一味違った個性派を好む方に愛飲されるモルトです。
ウィートモルト
ウィートモルトは「小麦モルト」とも呼ばれ、小麦を原材料に使用したモルトです。
モルトは一般的に大麦が使用されますが、麦芽化していない小麦を加えることで独特の風合いが生まれます。
外観は小麦のたんぱく質によって白濁しますが、その分クリーミーで苦みが抑えられる点が特徴です。
風味は至って軽やかで、銘柄では「ホワイトビール」や「ウィートエール」に使用されます。
たんぱく質を多く含むため、ビールの泡持ちが良いこともウィートモルトの特徴です。
滑らかな口当たりと柔らかい風味はホップの苦みとバランス良く絡み、フレッシュな飲み心地を提供します。
モルトの役割
モルトは、ビールの発酵に必要な酵素を生み出し、ビールの色や風味を決定づけます。
それぞれの役割について詳しくみていきましょう。
ビールを発酵させるための酵素を生み出す
モルトは麦を麦芽の状態にしたもので、発芽させてから粉砕し、麦汁を作って発酵の工程へと進みます。
発芽させた大麦などを乾燥させると内部に酵素が生成され、この酵素がでんぷんやたんぱく質をアミノ酸に分解します。
ビールに風味をつける
ビールを楽しむために欠かせない要素のひとつが「風味」です。
口にしたときのキャラメルやチョコレートといった風味は、モルトの焙煎度や原材料の種類によって異なります。
銘柄によってさまざまな風味が楽しめるのは、モルトのもつ魅力のひとつといえるでしょう。
ビールの色を決める
ビールの色は、淡色から濃色まで幅広く、原材料の色と焙煎度によって決定されます。
日本で広く知られる淡い黄金色のビールは、大麦のペールモルトが使われています。
モルト自体に色がついているわけではなく、乾燥の過程でどのように熱を加えるかによって色が決まります。
チョコレートモルトやローストバーレイのように超高温で焙煎すると濃色になり、通常のビールよりも深い香りとコクが楽しめます。
ビールの風味や色を決めるモルトの種類をチェック
今回は、ビールの原材料である「モルト」の特徴や種類について紹介しました。
材料には大麦・小麦・ライ麦といくつかの種類が使われ、さらに焙煎の温度や期間によっても色や風味が変わることから、銘柄ごとに異なる個性が楽しめます。
ビールといっても赤色に近い琥珀色や黒色と、見た目のインパクトが大きな銘柄もあります。
モルトの特徴や製造過程を知ることで、ビールの個性やこだわりを理解し、さらに楽しく味わえます。
この記事の監修者

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。