ビール製造免許とは?取得要件となる製造量についても紹介

パンやお菓子と同じく、ビールの製造にも免許の取得が義務づけられています。

ビール製造免許の取得において、費用はいくらかかるのか、取得要件はどのような内容なのか、疑問が尽きない事業者様も多いのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、免許の取得要件や、拒否要件などをご紹介します。

ビールの醸造所の立ち上げを検討されている方や、ビールの製造免許について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

【目次】

ビールの醸造に関わる酒税法とは

ビールは、酒税法によって定義や分類が定められています。

 

そもそも酒税法とは、酒税の確保と保全を目的として、お酒の分類や製造免許、税率などを定めた国の法律のことです。

酒税法では、アルコール分1度以上の飲料を酒類としています。

 

また、「ビール」と定義づけられるものは、下記の表にまとめた2種類です。

 

【ビールの定義づけ】

ビール 
麦芽(使用割合100%)、ホップ、水を原料として発酵させたもの  麦芽(使用割合50%)、ホップ、水、麦、米、果実、コリアンダー など特定副原料を使用して発酵させたもの  

ビールは、酒税法により、使用する酵母の種類や色、出荷時の処理方法によって、さらに細かく分類されています。

 

参照元:国税庁 ビール・発泡酒に関するもの

ビールの製造量に決まりはある?

ビールの醸造所を立ち上げるうえでは、製造量に規定があります。

前提に、製造免許を持たない者が、ビールを作ることは酒税法で禁止されています。

 

その免許の取得要件として設けられているのが、年間の「最低製造数量」です。

最低製造数量は、ビール醸造所が酒税を継続して支払えることを目的に、全国で統一的な税務行政を行うために、客観的な水準として設けられました。

酒税は赤字企業であっても納税しなければなりませんし、納税を確保するためには、一般的に採算が取れる程度の製造規模が求められます。

 

長期的に利益を出せることを事前に証明するためにも、最低製造数量を生産できる醸造施設や、資金が調っていることを示す必要があるのです。

 

2024年4月現在、ビール製造免許の取得に必要な年間最低製造数量は、60kL以上です。

この年間最低製造数量は、1994年に酒税法が改正されるまで2,000kL以上でした。

 

年間最低製造数量が60kLまで大幅に引き下げられたことで、各地の中小メーカーもビールが作れるようになり、個性豊かな「地ビール」が誕生し、地ビールブームが起こります。

地ビールブームは一時下火を迎えましたが、醸造技術を改善し、クラフトビールと名称を改めたことで再び人気を取り戻しました。

 

このように、年間最低製造数量が改正されたことによって、ビールビジネスにおける参入障壁が低減されたことは、喜ばしい変化といえます。

 

参照元:国税庁 酒類の製造免許における最低製造数量基準の在り方について

ビールの製造に必要な酒類製造免許の概要

酒類製造者は、酒税法により、製造するお酒の品目・製造所ごとに指定されている酒類製造免許を取得しなければなりません。

 

この酒類製造免許は、製造するお酒によって2種類に分けられます。

酒類製造免許の取得基準を、酒類ごとに下記の表にまとめましたので、ご参考にしてください。

 

【酒類製造免許の取得基準】

 ビール製造免許 発泡酒製造免許 
麦芽使用比率 原料の50%以上 原料の50%未満 
副原料使用比率 原料の5%以下 ※認められた原料のみ 原料の5%以上 

各取得基準を満たしていれば、ビール製造免許と発泡酒製造免許を、あわせて取得することも可能です。

酒類製造免許を取得するための要件

酒類製造免許には、取得要件だけではなく、拒否要件が存在します。

ここでは、取得要件と拒否要件を詳しく解説します。

取得要件

酒類製造免許の取得基準には、年間で製造するビールの量が挙げられます。

ビールは60kL以上、発泡酒は6kL以上と、最低製造数量が異なります。

 

酒類製造免許を取得してから1年以内に、製造予定の製造見込み数量が上記の最低製造数量に満たない場合は、免許を取得できません。

なお、免許を取得できたとしても、3年以上最低製造量が下回ると、免許取消しとなるので、注意しましょう。

 

参照元:国税庁 酒類の製造免許の取消し及び第13条 酒母等の製造免許の取消し

拒否要件

拒否要件とは、取得要件を満たしていたとしても、該当していると、免許を取得できない要件のことを指します。

 

酒類製造免許の拒否要件は、下記の表にまとめた5つです。

【酒類製造免許における拒否要件】

人的要件(一部) ・酒類製造免許または酒類製造の営業許可を取り消された日から、3年が経過していない場合 ・申請時に未成年者の法定代理人や法人の役員、製造所の支配人が欠格事由に該当する場合 ・禁固以上の刑の執行終了後、3年が経過していない場合 ・免許の申請前2年以内に、国税または地方税の滞納処分を受けている場合 など全10項目 
場所的要件 正当な理由なく、取り締まり上不適切と認められる場所に製造場を設置する場合 (酒類の製造場または販売場、酒場、料理店などと同一の場所など) 
経営基礎要件 経営の基礎が薄弱であると認められる場合 (国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損失の資本金超過、酒類の適正な販売管理体制の構築が明らかでないなど) 
需給調整要件 酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があるため、免許を与えることが適当でないと認められる場合 
技術・設備要件 酒類の製造について、必要な技術的能力を備えていないと認められる場合、または製造場の設置が不十分と認められる場合 

酒類製造免許の人的要件については、国税庁のホームページで全項目を閲覧できますので、免許の取得申請前に、ご確認ください。

 

参照元:国税庁 酒類製造免許関係

関連記事:ビール醸造家になるには?手続きと費用の内訳を解説

酒類製造免許の申請方法と取得にかかる費用

酒類製造免許は、ご自身の製造所を管轄している税務署へ、製造したい種類の品目別・製造所ごとに申請します。

 

申請から審査終了までにかかる所要時間は、2~3週間程度です。

申請書の提出方法は、下記の3通りです。

 

【酒類製造免許の申請方法】

  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)のホームページ上で作成・提出
  • 書面で申請書を作成後、税務署に持参して提出
  • 書面で申請書を作成後、税務署へ郵送して提出

e-Taxからの提出方法については、e-Taxのホームページ内の「e-Taxソフトについて」で詳細をご確認ください。

 

申請書類は、国税庁のホームページ内にある「酒類等の製造免許申請書類一覧表」に記載されています。

なお、酒類製造免許には、1種類あたり15万円の登録免許税が発生します。

これにくわえて、ビール製造免許の申請に代行サービスを利用する費用は、10万~20万円程度です。

 

参照元:国税庁 酒類等の製造免許申請書類一覧表

参照元:e-Tax(国税電子申告・納税システム) e-Taxソフトについて

参照元:国税庁 酒類の製造免許の申請

酒類製造業の営業許可の申請方法と申請にかかる費用

酒類製造免許を取得してから、すぐにビールを製造できるわけではありません。

食品衛生法に基づき、「酒類製造業の営業許可」を得る必要があります。

 

酒類製造業の申請手数料は地域によって異なり、東京都を例に挙げると、新規2万1,600円、更新1万4,000円です。

営業許可の申請から営業開始までの手続きを、以下に示しました。

 

【酒類製造業の営業許可を取るまでの手続き】

  1. 保健所と事前相談
  2. 醸造所着工
  3. 申請書類の提出
  4. 醸造所検査
  5. 認可証の交付
  6. 営業開始

保健所への事前相談には、あらかじめ作成した、都道府県知事が決定した製造施設や、製造設備に関する基準を満たした設計図面を持参します。

 

この工程を省いた状況で、基準に適応していないことが判明した場合、醸造所を手直ししなければならないため、許可証の交付が遅れるケースがあります。

なお、保健所の許可なく酒類を製造した場合、営業停止・行政処分や、処罰の対象となる可能性がありますので、絶対にやめましょう。

 

参照元:東京都保健医療局 食品関係営業許可申請の手引

参照元:東京都保健医療局 東京都食品衛生関係許可手数料

ビールの製造免許取得に要する製造量は、年間60kL以上と定められている

今回は、ビールを製造する前に取得が義務づけられている製造免許についてご紹介しました。

 

ビール製造免許の要件として定められている年間の最低製造数量は、60kL以上です。

ほかにも、ビール製造免許は税務署で申請すること、1種類あたり15万円の登録免許税がかかることなどをお伝えしました。

ビールの製造を始めるには、営業開始までに要する申請を、漏れなくこなすことが求められます。

 

マイクロブルワリー、クラフトビール開業支援のスペントグレインは、酒税申告プログラムや、ビアサーバーの制作・設置など、ビール醸造所の立ち上げに関わることを全力で支援します。

私たちの経験と知識を総動員して対応いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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