ビール製造に欠かせない「pH値」の概要と調整方法を詳しく紹介

ビールなどの飲料や食品、土壌や河川の水質を表す『pH』は、液体の酸性度またはアルカリ度を示す指標です。 純水のように中性を示す飲料もありますが、ジュースや栄養補助食品の粉末を溶かした飲料などは、混入する成分の性質によってpHが決まります。 pHレベルは、飲料の味わいや口当たり、後味に影響を与えるだけでなく、保存性や微生物の繁殖にも関係します。 ここでは、pHの特徴と調整方法、pHの値がビールに与える影響について紹介します。

【目次】

そもそもpHとは?

pH(ペーハー/ピーエッチ)は、水素イオンの濃度によって決定される水溶液のアルカリ性・酸性の指標です。 pHのスケールは0から14までの範囲で、7が中性を示します。 7より低い値は酸性、7より高い値はアルカリ性です。 ビールのpHは一般的に3から5を示し、酸性の性質をもっています。 ビールに含まれる酸の多くは原材料や麦汁の煮沸、酵母の代謝に由来する有機酸です。 アルカリ性の飲料はpHが7以上であり、牛乳や水道水、ミネラルウォーターの一部がこれに該当します。

pHを調整する方法

pHを調整する方法は次の4つです。
  • 醸造プロセスを制御する
  • 乳酸を加える
  • カルシウムを使う
  • 麦汁を煮沸する
どのようなプロセスなのか、詳しくみていきましょう。

醸造プロセスを制御する

ビールのpHは、糖化の段階で温度とpHを管理する必要があります。 まず、使用する水のpHと硬度を確認し、それがビールに影響を与えないことを確かめる必要があります。 次に、酵素が活動できるようにpHの範囲を制御し、風味を安定させます。 水質調整以外ではモルトの量を管理することで、適切なpHが維持できます。 糖がアルコールと二酸化炭素に分解される発酵プロセスも重要です。 ここで糖が分解されると酸が作られ、pHが低下します。 さらに、ビールが完成する直前の熟成工程でもpHの調整が行われます。 この段階でpHを調整すると、ビールの味わいやバランスに大きな影響を与えるため、慎重かつ調整に適した加減が必要です。 いずれのプロセスにおいても、環境の状態や酵母の活性を慎重に見極め、pHをビールに適したレベルに維持する必要があります。

乳酸を加える

一部のビールでは乳酸のような食品用の酸を追加し、pHを直接調整することがあります。 これは、環境の調整だけではpHが制御できない場合にとられる方法です。 pHを人工的に調整することで、ビールの風味を整え、保存性を向上させることができます。

カルシウムを使う

ビールのpHを調整するために、カルシウムが使われる場合があります。 カルシウムは麦芽や水に含まれるミネラルで、次のような効果が期待できます。
  • pHの安定化
  • たんぱく質の沈殿
  • イオンバランスの調節
風味への影響はほとんどなく、麦汁のpHを酸性寄りに調整します。 酸性に向くことで酵素が活性化しやすくなり、糖化が効率的に進みます。 また、カルシウムはたんぱく質と結合して自然沈殿を起こすため、麦汁の透明度が向上し、クラリティの改善が期待できます。 マグネシウムやカリウムのような他のイオンともバランスを取るため、麦汁のイオンバランスの調節にも役立ちます。 カルシウムの添加には、醸造用のカルシウム塩や仕込み水にカルシウムを添加するといった方法が用いられます。

麦汁を煮沸する

ビールの元になる麦汁を約100度で60分以上煮沸して、pHを調整する方法です。 煮沸により糖化に関与していた酵素を不活性化し、麦汁内で予期せぬpHの変動を防ぎます。 約100度という高温で煮沸すると、麦汁の中に含まれるたんぱく質が凝集します。このため、透明度が向上し、クラリティが改善することで風味の安定性が高まります。 煮沸は、酵素の働きを止めるための工程です。 そのため、この工程の最中にホップを追加し、ビールに香りづけを行うケースもみられます。

pHの値がビールに与える影響

pHの値がビールに与える影響として、『健全な発酵の促進』や『風味と色合いの決定』が挙げられます。 具体的に、どのようにビールへ影響するのか確認していきましょう。

健全な発酵を促進する

ビールのpHは、醸造のプロセス全体に重要な役割を果たすものです。 酵母が適切に増殖・活性化し、糖を分解するためには、pH4~5を維持する必要があります。 pHが正しい値の範囲内にあれば、酵母はもっとも活発に活動し、安定的にアルコールを生成します。 ビール液内に有害な細菌やカビが含まれている場合、健全な発酵は妨げられます。 そのため、適切にpHを調整することで微生物の増殖を抑制し、ビールの品質を維持します。

風味や色合いを決定する

一般に、酸性度が高いビールほど酸味が強くなります。 pH4〜5の値を下回る酸性度のビールもあり、爽やかな風味でありながら酸味も同時に感じることができます。 ビールの原材料であるホップもpHによって苦みが左右され、pHが低いと苦みが鋭く、高いものはマイルドになるといわれています。 また、pHが適切に調整されていると、ホップや麦芽の香りが引き立ち、豊かで芳醇な香りが楽しめます。 色合いへの影響としては、pHが低いとたんぱく質が沈殿しやすくなり、ビールのクラリティが向上します。 麦芽のアミノ酸と糖が反応して色彩を生み出す「メイラード反応」もpHに依存しますが、こちらはpHが高いものほど濃い色に仕上がります。

ビールの品質管理にはpH調整が欠かせない

今回は、ビールのpH値について概要と調整方法、pHが果たす役割を紹介しました。 pHはすべての水や溶液に存在する指標で、ビールの場合は仕込み水の段階からpHに注意しなければなりません。 厳しい品質管理のもとで作られるビールは、微生物や酵母の活性もコントロールし、風味を損なわないように調整されています。 pHの管理はビール全体の方向性を決定するため、適切な品質管理が重要です。 温度や原材料だけでなく、pHにも注意を払うことで、高品質なビールが完成します。

この記事の監修者

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株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者

兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント

<略歴>

大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。

<監修者から>

ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。

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