ビール製造に欠かせない「pH値」の概要と調整方法を詳しく紹介
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- 2025.02.21
- 2025.02.21

【目次】
そもそもpHとは?
pH(ペーハー/ピーエッチ)は、水素イオンの濃度によって決定される水溶液のアルカリ性・酸性の指標です。 pHのスケールは0から14までの範囲で、7が中性を示します。 7より低い値は酸性、7より高い値はアルカリ性です。 ビールのpHは一般的に3から5を示し、酸性の性質をもっています。 ビールに含まれる酸の多くは原材料や麦汁の煮沸、酵母の代謝に由来する有機酸です。 アルカリ性の飲料はpHが7以上であり、牛乳や水道水、ミネラルウォーターの一部がこれに該当します。pHを調整する方法
pHを調整する方法は次の4つです。- 醸造プロセスを制御する
- 乳酸を加える
- カルシウムを使う
- 麦汁を煮沸する
醸造プロセスを制御する
ビールのpHは、糖化の段階で温度とpHを管理する必要があります。 まず、使用する水のpHと硬度を確認し、それがビールに影響を与えないことを確かめる必要があります。 次に、酵素が活動できるようにpHの範囲を制御し、風味を安定させます。 水質調整以外ではモルトの量を管理することで、適切なpHが維持できます。 糖がアルコールと二酸化炭素に分解される発酵プロセスも重要です。 ここで糖が分解されると酸が作られ、pHが低下します。 さらに、ビールが完成する直前の熟成工程でもpHの調整が行われます。 この段階でpHを調整すると、ビールの味わいやバランスに大きな影響を与えるため、慎重かつ調整に適した加減が必要です。 いずれのプロセスにおいても、環境の状態や酵母の活性を慎重に見極め、pHをビールに適したレベルに維持する必要があります。乳酸を加える
一部のビールでは乳酸のような食品用の酸を追加し、pHを直接調整することがあります。 これは、環境の調整だけではpHが制御できない場合にとられる方法です。 pHを人工的に調整することで、ビールの風味を整え、保存性を向上させることができます。カルシウムを使う
ビールのpHを調整するために、カルシウムが使われる場合があります。 カルシウムは麦芽や水に含まれるミネラルで、次のような効果が期待できます。- pHの安定化
- たんぱく質の沈殿
- イオンバランスの調節
麦汁を煮沸する
ビールの元になる麦汁を約100度で60分以上煮沸して、pHを調整する方法です。 煮沸により糖化に関与していた酵素を不活性化し、麦汁内で予期せぬpHの変動を防ぎます。 約100度という高温で煮沸すると、麦汁の中に含まれるたんぱく質が凝集します。このため、透明度が向上し、クラリティが改善することで風味の安定性が高まります。 煮沸は、酵素の働きを止めるための工程です。 そのため、この工程の最中にホップを追加し、ビールに香りづけを行うケースもみられます。pHの値がビールに与える影響
pHの値がビールに与える影響として、『健全な発酵の促進』や『風味と色合いの決定』が挙げられます。 具体的に、どのようにビールへ影響するのか確認していきましょう。健全な発酵を促進する
ビールのpHは、醸造のプロセス全体に重要な役割を果たすものです。 酵母が適切に増殖・活性化し、糖を分解するためには、pH4~5を維持する必要があります。 pHが正しい値の範囲内にあれば、酵母はもっとも活発に活動し、安定的にアルコールを生成します。 ビール液内に有害な細菌やカビが含まれている場合、健全な発酵は妨げられます。 そのため、適切にpHを調整することで微生物の増殖を抑制し、ビールの品質を維持します。風味や色合いを決定する
一般に、酸性度が高いビールほど酸味が強くなります。 pH4〜5の値を下回る酸性度のビールもあり、爽やかな風味でありながら酸味も同時に感じることができます。 ビールの原材料であるホップもpHによって苦みが左右され、pHが低いと苦みが鋭く、高いものはマイルドになるといわれています。 また、pHが適切に調整されていると、ホップや麦芽の香りが引き立ち、豊かで芳醇な香りが楽しめます。 色合いへの影響としては、pHが低いとたんぱく質が沈殿しやすくなり、ビールのクラリティが向上します。 麦芽のアミノ酸と糖が反応して色彩を生み出す「メイラード反応」もpHに依存しますが、こちらはpHが高いものほど濃い色に仕上がります。ビールの品質管理にはpH調整が欠かせない
今回は、ビールのpH値について概要と調整方法、pHが果たす役割を紹介しました。 pHはすべての水や溶液に存在する指標で、ビールの場合は仕込み水の段階からpHに注意しなければなりません。 厳しい品質管理のもとで作られるビールは、微生物や酵母の活性もコントロールし、風味を損なわないように調整されています。 pHの管理はビール全体の方向性を決定するため、適切な品質管理が重要です。 温度や原材料だけでなく、pHにも注意を払うことで、高品質なビールが完成します。この記事の監修者

株式会社スペントグレイン
マーケティング担当者
兼 醸造アドバイザー/経営コンサルタント
<略歴>
大手経営コンサルティング会社へ就職し、地域経済の活性化に貢献するプロジェクトに多く携わり、食品やアルコールを通じた地域振興・施設開発を専門にコンサルティングを行う。経営アドバイザー・醸造アドバイザーとして地域密着型のクラフトビール事業の立ち上げから設備導入、経営戦略までを一貫して支援し、地元の特産品を活かしたビールづくりにも取り組んでいる。
<監修者から>
ビールの品質は、技術は当然のことながら、経営の安定からも生まれます。持続可能で収益性の高い事業運営を支援しながら、ビールの味わいを最大限に引き出すことが私の使命です。 良い設備がなければ、良いビールは生まれません。しかし、経営が安定してこそ、長期的に持続可能なビール文化を築けるのです。